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「信義」を曲げる権力社会『告発者』

2024-09-12 07:51:00 | ビジネス小説
「信義ね。関口さんは、銀行員にしては珍しい考えの持ち主ですね」と経営者トップの発言。不景気になると融資側に対し銀行は姿勢態度を一変する。「貸し渋り・貸しはがし」と言われた強硬姿勢で自己保守に走り、融資側の立場など考慮しない。この小説はそんな銀行の慣行と頭取のスキャンダルでの広報の役割、銀行を守る為の行動、さらに人としての「信義」を問う、実際に起きた「プライムローン事件」「路チュー事件」を模索したビジネス小説だ。 現実、政治家、大手企業、官庁などに対する「信義」(政治家、上司、会社を守る「嘘」)が問われる事件事故が多い。それによって「嘘・疑惑」ストレスを持ったまま自殺した事件も多く、勇気を持って「告発」すべきだと誰もが思う。「悪いのは自分では無くその悪意を権力で責任を負わせた上司であり、政治家である」ことを自責はないと自覚すべきだ。
『告発者』江上剛
「概要」権謀術数が渦巻く出世争い。欲望、嫉妬、裏切りが引き起こす情報操作――メガバンクが生み出した「合併」の弊害に悩まされる広報部員・裕也のもとに、写真週刊誌が頭取のスキャンダルを入手したという情報が入る。事実確認に追われる彼が掴んだ驚愕の真相とは?密告者の狙いとは?銀行を知り尽くした著者だからこそ物し得た超リアル企業小説。
4社の銀行の統合による出世争いで起こる派閥間争い (内と外)
    実質3社に統合されたが、昔からの社風は変わらず1社が何事も大盤振る舞いで赤字を抱える。そのトップを辞任させ統合させようと画策するなかでスキャンダルがメディアによって公開される。
ー事件事故に対する広報の役割と動き
    広報担当での責任者の行動、1、当事者に直接連絡、2、統合する実質トップの社長に連絡、経営担当者を集合させ対策を練る。
ースキャンダルに対する取り組み
    不倫相手は広報担当・裕也の元恋人で報道記者であることから話が彷徨う。その背景には銀行により貸し渋り・貸し剥がしをされた不動産会社の社長がその不倫相手の兄であり、倒産に追い込まれた兄は自殺未遂、植物人間となってしまう。


上司の貪欲な権限に仕える『冬の蝉』

2024-09-12 07:42:16 | ビジネス小説
@これは、武家時代の「騙す、騙される」「仕う、仕われる」など6編の短編小説である。出世欲から家老・奉行の刺殺を計画、それも出世を望んだ本人ではなく家臣を使いその刺殺計画を果たす。その刺殺する理由の背景には、賄賂、横領と言う嘘の仕掛けを作って、あくまで悪事を暴くような計画をでっち上げ無罪の家老・奉行を刺殺したことだ。 現代社会、企業社会にもある出世欲、もしくは賄賂、横領を隠す為に上司の権限を使い部下を言いなりに動かす事件事故が多い。その背景はいつも「出世・金にまつわる貪欲さ」から善人を巻き込み私欲を稼ぐ世界を描いている。「仁義」(人の善の道徳)を意識し、欲を貪欲にさせない時代だ。
冬の蝉
坂岡真2024年9月
「概要」心の襞を巧みに織り交ぜる、独特の乾いた筆致の著者が、「死に様」をテーマに描いたオリジナル短篇時代小説集。6編ある中の2編を紹介する。
ー「逆月」出世に惑わされ下手人になる
    出世に欲を出した筆頭目付が家臣を騙し、賄賂をしているという次席家老を殺害、家臣はその後殺人罪として逃げまくる。ところがそれはまるで逆で事件後、次席家老になった上司が出世の為に疑惑を持ちかけたことが明る煮になり、再び次席家老を刺殺する。刺殺を計画したのは同胞の二人でその一人の面が割れて追われる事になったが残ったもう一人は出世し逃げた同胞の女性を娶り子も持った。だが、同胞を思う決着は悲しい結果となる。
ー案山子 仲間の裏切り
    横領の罪で腹を切った奉行が実は家老による罠だった。その奉行の仇討に声をかけられ参画する事にした剣の達人の武士。妻には当日まで何も言わないようにしていたが、誘い出した仲間が事前に妻に耳打ちしており、敵討の当日、妻は夫がいない世は生きる甲斐がないと自殺する。覚悟を決め家老を刺殺する場所に出かけるとそこには見せかけの籠と数人の武士しかいない。ましてやこの誘いを促した本人の姿もいない。それは家老を刺殺しようとした仲間を炙り出す家老の罠で、誘った仲間が家老の計画に参画し裏切っていた、事を知る。