「川柳歳事記」

縫い目
縫い目からサタンが覗く二五時
きっちり縫っておかないからフォッサマグナ
大空の縫い目から太郎爆発だ

「川柳歳事記」

通
針の穴通るくらいの嘘ですか
食通がじっと見ている秋の雲
通り雨思わずバラを買っていた

「川柳歳事記」

素顔
明日は散る花の素顔は覗くまい
あなたの懐で仮面が剥がれます
悪役の素顔の中に見た涙

「川柳歳事記」

クイズ
クイズです君たす僕で何になる
とびきりのクイズあなたを当てました
正体を当てろと大首の写楽

「川柳歳事記」

植える
植えられて大事にされた花言葉
植えた人の心が咲いた花ロード
戦争が心に植えた平和二字

「川柳歳事記」

身
生かされて感謝に生きて今ある身
身の丈の夢へやさしくめぐる四季
身よりなき孤老隣人和で守り

「川柳歳事記」

ピーク
絶頂と己惚れていた過去の人
真夜中にピーク合わせる深夜便
玄関にピークを過ぎた靴二足

「川柳歳事記」

荷
世界的重荷のテロが跋扈する
ふる里便都会の孤独慰める
しきたりの初荷へ老舗祈り込め

「川柳歳事記」

近い
近そうで手の届かない夢ひとつ
足音が聞こえてきたよ君の春
ありましたこんな近くに宝物

「川柳歳事記」

師
空洞へ師匠の言葉沈ませる
千年過ぎの天辺に置く師の背中
師の教え心に沁みぬままが　今