万城目 学/文庫
2013年1月25日初版、2013年5月20日第3刷。神社の秋祭りで、参道の夜店の二人、この楽し気な描写はなかなかのものだ。と、思っていたら最後に種明かし、何とマドレーヌ婦人が二回目の「猫股」ですずちゃんのお父さんに化けていたのだという。この幸せなゴム風船、タンポポの綿帽子のようなおとぎ話風物語は、あの無骨な「ホルモー」とは一線を画す。繊細な、それでいて別離を涙しながらも乗り越える健気さ、生命力が感じられる。
「ホルモー」、「鹿男」からコロッと変わって、同じ作家とは思えないこの器用さに驚く。著者の作家としての幅の広さがわかろうというものだ。最初は、猫がしゃべる訳だから、また「鹿男」ならぬ、バカバカしい話かと思いながら読み進んでいくと、一期一会を何気ない日常に取り入れ、生きとし生けるものの万象を純粋な目線でとらえることでこんな風に物語ることが出来るとは。「かのこちゃんとマドレーヌ婦人」、なるほどね。
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