つむじ風

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還らざる道

2017年12月01日 10時32分03秒 | Review

―浅見光彦シリーズ―
 内田康夫/文春文庫

 2014年11月10日初版。浅見光彦の洞察力、推理力は相変わらず冴えているが今回の旅と歴史は50年前から始まる。一人の男(中山浩平)の悪意によって創設された流れが二代、三代と怨念のように受け継がれてゆく。これを断ち切るのが浅見光彦というわけだがストーリーはよく出来ており、面白い。「木曾ヒノキ」という高級材にからむ金にむらがる亡者の話でもあり官僚汚職の話でもある。大方、自分たちは手を汚さず、実行者は下賎で粗野な連中なのだが。

 今回、被害者として最初に出てくる瀬戸一弘会長の積年の思いというものは、最初から最後まで一貫している。それが、本人は最初に死亡しているので、本人が語るわけではない。
浅見と孫娘(正恵)が追跡することで、更には回りの登場人物達によって語られる。
瀬戸一弘という人間の業苦(原罪、悔恨の念)といったようなものが、染みわたるように実に上手く表現されている。エピローグで完結するまでその緊張した糸が緩むことは無かった。
最終的には浅見流の武士の情けになるわけだが、中山(今野)は需要側の人間だが供給側についても、もう少しその後の顛末を書いて欲しかった。
自作解説の中で「喪われた道」「還らざる道」を読み応えのある作品と自負しているが、確かに納得できるものがある。




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