つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
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中央構造帯(上下)

2019年07月29日 10時01分03秒 | Review

内田康夫/講談社文庫

 上下:2005年9月15日初版、シリーズNo.89。いきなり地学用語がお題になっており、これは浅見光彦とは関係がないのでは、、と思いつつ読んでみた。更には個人的に「糸魚川静岡構造線」の方が気になって「中央構造帯」のイメージがつかめない。それはほぼ関係なかったのだが、読み進んでいくと、どちらかと言うと「平将門伝説殺人事件」的なことだった。それが何故「中央構造帯」なのかは、あとがき(自作解説)に説明があった。早い話が、将門の名を借りて天誅を下すという殺人事件である。背景はバブル崩壊の時代であり、銀行の汚点をはっきりと残した歴史的な事件でもあった。

 平将門については、特に調べたことも無いが「怨念の代表選手」みたいなイメージがある。アニメ的に言えば、首が空中を飛び回る、ほぼお化けのようなものである。今回、将門がなぜそのようなイメージになっているのか、歴史的背景や史実?、伝説で成る程よく解った。
 そこにもってきて、終戦時の悲惨なリンチ事件(私的な処刑)がプロローグに置かれ、グッと一気に引き込まれてしまった。いや、まったく昨日見て来たかのように書くのだから恐れ入る。将門についても、うまいことこじつけたものだと感心する。ミステリーとして、十分楽しめる一冊であることは間違いない。

 平将門は関東の武士であるため、東京近郊にもその霊を慰める何某かの碑や塚が随分あるようだ。「国王神社」、「神田明神」にも祀られているらしい。しかし、中央との確執でその首は京都まで運ばれて歴史上最古の「晒し首」になったとのこと。故に胴体の元に返る、関東に帰るために首が飛ぶのである。それにつけても謀反人になったり英雄になったり将門は忙しい人だったようだ。


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