つむじ風

世の中のこと、あれこれ。
見たこと、聞いたこと、思ったこと。

天河伝説殺人事件(上下)

2019年07月15日 23時09分16秒 | Review

内田康夫/角川文庫

 上/1990年6月10日初版、1994年3月10日第30刷。
 下/1990年6月10日初版、2000年6月20日第47刷。シリーズNo.23。
 和歌山線・吉野口駅から熊野市へ抜けるR309で南下、天河村は紀伊半島のド真中にある。能楽については全く知識がないが、こんな山奥の村が日本三大弁財天の一つ、芸能の神である天河弁財天の所在地であることが不思議である。天河神社のHome Pageによれば、やはり本当にここで薪能が奉納され、社務所には例の五十鈴が売られているようだ。こんな山奥で。能の奉納シーンの描写が極めてリアルでありながら幻想的なのは成る程納得する。

 紀伊半島のもう少し南は「熊野古道殺人事件」で舞台になったところなので、多少の親しみはあるが、こちらも引けを取らない相当の山奥である。「吉野」というと何となく奈良の静かな山間、穏健な土地を思い浮かべるが、そこはやはり古代文化圏の近隣だけあって何某かの営々と続いてきた悠久の歴史があるようだ。

 今回の話しは能楽の家元、水上流宗家の継承問題である。登場人物のそれぞれの想いが交錯する中で起きる「殺人事件」である。怨念のようでもあるし、単なる勘違いのようでもあるし、例によって思うようにならない人生の禍福でもある。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする