宇江佐真理/祥伝社文庫
2013年7月30日初版で読む。以下6編が集録されている。
・ほら吹き茂平 大工の棟梁茂平、お春、息子の小平次、その妻お久など、
共に暮らす家族の日々のはなし。
・千寿庵つれづれ 本所小梅村の千寿庵、そこの尼僧真銅浮風の話し。
庵主様はちょっとホラー。
・金棒引き 佐兵衛の妻おこうが主人公。
菓子屋「吉野屋」の佐兵衛と佃煮屋「川越屋」の新兵衛の寄り合い。
季節めぐる世間の噂話し。
・せっかち丹治 丹治、おせん夫婦とその娘おきよのこと。
六兵衛店の店子そろっての引っ越し、銀太郎、おきよの祝言。
・妻恋村から 「千寿庵つれづれ」から続く。
上州吾妻郡鎌原村の長次のこと。
浅間山の噴火と鎌原村の人々の苦悩。
・律儀な男 大伝馬町一丁目「富田屋」の四代目市兵衛の話し。
留蔵とその女房のおさだのこと。
この本はかなり新しい。この本の前に祥伝社文庫では「十日えびす」「おぅねぇすてぃ」などが既に出ているからまたもや新旧逆に遡って読むことになったかもしれない。「千寿庵つれづれ」「妻恋村から」のように連続すると、読み難くなってしまうのだが、多くは短編集なので、あまり気にせず読んでみたいと思う。
相変わらずのタッチで「江戸庶民の暮らし」を丁寧に描く。裏店、そして店子達、これこそ本当に「江戸市井の情景」なのだろうと思う。昔の人々の懸命な暮らしが誇らしく嬉しくもあり、そして辛くてもの悲しい。