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里やまのくらしを記録する会

埼玉県比企郡嵐山町のくらしアーカイブ

梅の香と人の世は 菅谷城跡を尋ねて 2 熊谷泰作 1957年

2010-02-03 10:33:00 | 熊谷泰作

 人間が長い歴史に文化を連絡し之を表現し伝達するに至った天恵の書である。「自然の児たらしめたまえ」と祈った独歩の願望、天地の有情を夢みながら無限の詩鏡を歌い「うたかたの世々のあと、いづれの世か乱れの騒ぎなかりけむ」と歎き史上の英傑に思慕を寄せて治乱興亡の果敢なさに万るいの涙をそゝいだ晩翠の感慨等深くこの自然と歴史と人生と永遠の相におもいをめぐらせると「行く春の春とこしえに春ならじ」とこゝに生き抜いてきた二十九才の生涯に懐旧の情を止めることが出来ない。「人の生涯は殆んどその出発点できまると云うことは以前から学んでいたが近頃それについて思い当ることが多い。青年時代が人間の生涯に重要な位置を占めているということはいう迄もないが然し大体において人間は極く幼い少年時代に既にその生涯の路がきまるのではあるまいか、そう思って私は時々心に驚くことがある。だから自分の郷里がどんな田舎でもどんな石ころの多い土地であってもそこには自分の幼年時代がありその記憶が周囲のものであって見れば自分の生涯に及ぼす郷里の影響を軽々しく思うわけにはいかない。」と藤村は語っているが、実際異国にあって祖国をあこがれ異郷にあって故郷を慕うこのような時こそ初めて祖国が、故郷が、父祖が、幼時が、そしてそれを囲む自然環境がその真の意義において自覚されてくるのではなかろうかと私もつくづくと感じるようになった。

   菅谷中学校生徒会報道部『青嵐』8号 1957年(昭和32)3月


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