年明け後、北海道新聞は憲法を考えるとして4回に分けた社説を掲げました。また、安倍政権が伊勢神宮集団参拝をした後に行った、記者会見についても評論を発表しました。地方紙ではありますが、まともな新聞社、マスコミとしての使命を自覚した組織があることを高く評したいと思います。
<北海道新聞社説>
安倍晋三首相が新年の仕事をスタートした。 きのうの記者会見では今年のえとにちなみ「馬のように広い視野で政権運営にあたりたい」と述べた。
信じていいのだろうか。なぜなら首相の政治姿勢には、視野の狭さばかりが目立つからだ。先月の靖国神社参拝は外交よりも自らの保守的政治基盤を優先した内向きな決断だった。安全保障政策や原発問題では反論に耳を貸さない。経済政策は大企業優先だ。そのツケが内政、外交に影を落としつつある。どう立て直すのか。
語るべきは責任あるビジョンだ。独り善がりの理念より国民が安心を実感できる政策を示してほしい。
会見で首相は「アジアの友人、世界の友人と世界全体の平和の実現を考える国でありたい」と語った。周辺国が反発するのを知りながら靖国神社に参拝することが「友人」への態度と言えるだろうか。元日には新藤義孝総務相も靖国参拝し、中国、韓国は猛反発している。「失望」を表明した米国は、ヘーゲル国防長官が小野寺五典防衛相に周辺国との関係改善を求めた。外交の混迷を深めた責任をどう考えているのか。首相は中韓に首脳会談を呼びかけるが、受け入れようとしない相手への責任転嫁にすぎない。より現実的な打開策が必要だ。
首相は集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更や改憲に向け「国民的議論を深める」と語った。
一見慎重に見えるが疑わしい。昨年の特定秘密保護法は審議を打ち切り強行採決の末成立した。反論に真剣に耳を傾ける姿勢はなかった。秘密保護法に対しては全国の地方議会が撤廃を求める意見書を相次いで可決し、国会に提出した。異常事態だ。24日開幕予定の通常国会には民主党が廃止法案を準備している。国民的議論を尊重するなら、こうした声を受けて法撤廃に動くべきだ。原発の再稼働方針も世論を見極めて見直す必要がある。解釈改憲などよりも先に取り組むべき課題だ。
言葉の軽さは経済政策も同じだ。会見で首相は通常国会を「好循環実現国会」と名付けた。昨秋の臨時国会は「成長戦略実行国会」としたが成果に乏しかった。今年半ばには早くも成長戦略改定を目指すという。4月の消費税増税による景気の腰折れを防ごうと弥縫(びほう)策を重ねているようにしか見えない。公共事業偏重から脱却し、より波及効果の大きい経済政策を展開することが肝心だ。道民に影響が大きい環太平洋連携協定(TPP)の行方も「大局的に判断する」と言葉を濁した。確固たる政策の道筋を示さなければ、期待できる1年にはならないだろう。