ここで書くよりも向こうで書くべきか……そう言えば、「~通信」はすっかり滞っています。
気分の問題というか、まあこちらで書いてみます。
コンピューター将棋とプロ棋士による団体戦、第3回電王戦が始まりました。
今回は前回と打って変わってというか、第1局で印象がガラリと変わってしまいました。
今回のルールはかなり人間にとって有利な条件となっています。
戦前の予想では、これはいくらなんでもプロが圧勝するのではないかと言う意見を何度か目にしました。それが蓋を開けると……
第1局はコンピューターの圧勝でした。
驚くべきは結果よりもその内容でした。
有望若手の菅井竜也さんが負けたという事実だけでも衝撃が走っただろうと思いますが、内容でも完敗でした。
前回は、スコアの上ではコンピューターの3勝1敗1分でしたが、内容ではプロ側の3勝2敗だと私は評価していました。これには異論もあるかと思いますが、それ程にコンピューターの勝った将棋には突っ込み所が沢山ありました。
敗因として人間側の精神力の弱さ、コンピューターに対する不慣れさ、等があげられ「これならばキチンと研究すれば勝てる」と思わせる要素が多分にあった訳です。
ところが今回の第3回の第1局を見ると、そういった希望を完全に打ち砕くと言ってもいいくらいの、素晴らしい内容でした。あの、人間側有利の条件をものともしない勝ち方でした。たったの一年で信じられない進化をとげた、と思わせるものでした。
「これは、今回は人間の全敗じゃないのか?」
とすら思えるものだったのです。
果たして続く第2局もコンピューターの連勝。ある人は「コンピューターが全勝して、いよいよ将棋連盟側が最強の人選をするしかなくなる、という状況に追い詰めて欲しい」と書いていました。
それが望ましい状況かどうかはともかく、本当にそうなるのではないかと思えてきました。
しかし第3局、今回のダブルエースの一人と言われた豊島将之さんが勝ちました。これで人間側の全敗はなくなりました。
この将棋の内容は、よく言われる「人間が勝つパターン、一方的な面白くない内容」でした。しかし、前回の唯一の勝利者の阿部光瑠さんと同様かあるいはそれ以上の事前の凄まじい努力と準備がありました。こういう姿勢を貫いて結果を出す事こそが「まさにプロ」と言えるのではないかと思えるのです。
豊島さんの選択した作戦は「横歩取り」と言われる戦型で、これは実に激しい戦法です。どこから矢玉が飛んで来るか分からないような、気が付いたらあっという間に勝敗が着いてしまっているような、一瞬も気が抜けない非常にスリリングな戦いです。
前回の第4局を戦った塚田泰明さんは、この横歩取りを得意としていながら「コンピューターは横歩、強いんですよ」と言って敢えて避けた戦法でした。
後からこの豊島さんが勝った将棋の棋譜だけを見れば、「なんだ楽勝じゃないか。こうなるんだったら俺もこの作戦で行きたい。俺も電王戦に出たかった」と思う人もひょっとしたらいるかも知れません。
しかしこの作戦を選択した背景には、豊島さんの「斬り合いを恐れない」気持ちがあったからなのではないでしょうか?
コンピューターとの斬り合い=負け、とすら思っているプロもいるようです。
でも豊島さんは違った。どこまでのレベルで恐れていないのか、そこまでは私には分からないのですが、とにかく並のプロならば恐れるような段階の斬り合いでも彼は自信を持てた、その自信が作戦に幅を与えた、という事は言えると思います。でなければ横歩取りという戦法は選べないと思うのです。
近頃はコンピューター将棋に形勢判断を委ねたり次の指し手を予測させたりしながらプロの将棋を見る、というのが一つの観戦スタイルであるようですが(私はそこまで熱心でもないしソフトも持っていません)、渡辺明さんのようにずっとコンピューターの予想通り指し続けたり時にはそれを超える手を指すような棋士がいます。
そういう棋士はまだいるし、そういう力を持った人でなければコンピューターとは戦えないのではないか、とも思えます。
まあ勝負とは力だけではありません。戦い方というのはあるもので、前回の塚田さんが見せたようにベテランの味というものもあり、次の第4局の森下卓さんも何かを見せてくれるよな気もします。
少なくとも豊島さんと同じ戦い方はしない筈です。
気分の問題というか、まあこちらで書いてみます。
コンピューター将棋とプロ棋士による団体戦、第3回電王戦が始まりました。
今回は前回と打って変わってというか、第1局で印象がガラリと変わってしまいました。
今回のルールはかなり人間にとって有利な条件となっています。
戦前の予想では、これはいくらなんでもプロが圧勝するのではないかと言う意見を何度か目にしました。それが蓋を開けると……
第1局はコンピューターの圧勝でした。
驚くべきは結果よりもその内容でした。
有望若手の菅井竜也さんが負けたという事実だけでも衝撃が走っただろうと思いますが、内容でも完敗でした。
前回は、スコアの上ではコンピューターの3勝1敗1分でしたが、内容ではプロ側の3勝2敗だと私は評価していました。これには異論もあるかと思いますが、それ程にコンピューターの勝った将棋には突っ込み所が沢山ありました。
敗因として人間側の精神力の弱さ、コンピューターに対する不慣れさ、等があげられ「これならばキチンと研究すれば勝てる」と思わせる要素が多分にあった訳です。
ところが今回の第3回の第1局を見ると、そういった希望を完全に打ち砕くと言ってもいいくらいの、素晴らしい内容でした。あの、人間側有利の条件をものともしない勝ち方でした。たったの一年で信じられない進化をとげた、と思わせるものでした。
「これは、今回は人間の全敗じゃないのか?」
とすら思えるものだったのです。
果たして続く第2局もコンピューターの連勝。ある人は「コンピューターが全勝して、いよいよ将棋連盟側が最強の人選をするしかなくなる、という状況に追い詰めて欲しい」と書いていました。
それが望ましい状況かどうかはともかく、本当にそうなるのではないかと思えてきました。
しかし第3局、今回のダブルエースの一人と言われた豊島将之さんが勝ちました。これで人間側の全敗はなくなりました。
この将棋の内容は、よく言われる「人間が勝つパターン、一方的な面白くない内容」でした。しかし、前回の唯一の勝利者の阿部光瑠さんと同様かあるいはそれ以上の事前の凄まじい努力と準備がありました。こういう姿勢を貫いて結果を出す事こそが「まさにプロ」と言えるのではないかと思えるのです。
豊島さんの選択した作戦は「横歩取り」と言われる戦型で、これは実に激しい戦法です。どこから矢玉が飛んで来るか分からないような、気が付いたらあっという間に勝敗が着いてしまっているような、一瞬も気が抜けない非常にスリリングな戦いです。
前回の第4局を戦った塚田泰明さんは、この横歩取りを得意としていながら「コンピューターは横歩、強いんですよ」と言って敢えて避けた戦法でした。
後からこの豊島さんが勝った将棋の棋譜だけを見れば、「なんだ楽勝じゃないか。こうなるんだったら俺もこの作戦で行きたい。俺も電王戦に出たかった」と思う人もひょっとしたらいるかも知れません。
しかしこの作戦を選択した背景には、豊島さんの「斬り合いを恐れない」気持ちがあったからなのではないでしょうか?
コンピューターとの斬り合い=負け、とすら思っているプロもいるようです。
でも豊島さんは違った。どこまでのレベルで恐れていないのか、そこまでは私には分からないのですが、とにかく並のプロならば恐れるような段階の斬り合いでも彼は自信を持てた、その自信が作戦に幅を与えた、という事は言えると思います。でなければ横歩取りという戦法は選べないと思うのです。
近頃はコンピューター将棋に形勢判断を委ねたり次の指し手を予測させたりしながらプロの将棋を見る、というのが一つの観戦スタイルであるようですが(私はそこまで熱心でもないしソフトも持っていません)、渡辺明さんのようにずっとコンピューターの予想通り指し続けたり時にはそれを超える手を指すような棋士がいます。
そういう棋士はまだいるし、そういう力を持った人でなければコンピューターとは戦えないのではないか、とも思えます。
まあ勝負とは力だけではありません。戦い方というのはあるもので、前回の塚田さんが見せたようにベテランの味というものもあり、次の第4局の森下卓さんも何かを見せてくれるよな気もします。
少なくとも豊島さんと同じ戦い方はしない筈です。