メンチとコロッケ

「今日は簡単なおかずで申し訳ないっすけど」と、フロントまで板さんが弁当を持ってきてくれたのは、日付が替わった直後の零時過ぎ。ブログの更新が終わった直後だし、そろそろ小腹がすいてきたし、ちょうどいい時間だ。どうですか、今日は、とお客の入り具合を聞くと、いやあ人数は多くはないんだけれど、だらだらと途切れなくて遅くなったんすよ。と店の状態を話してくれる。入荷したばかりという新しい焼酎の特徴なども聞いてメモする。焼酎リストに追加するのだ。

居酒屋勤めのときは、だいたい11時が夜食時間だった。注文が一段落したころを見計らって、その日の当番の板さんが従業員の人数分だけ夜食のまかないを用意する。手があいた順に、お客のいない奥のテーブルでいただくのだ。

居酒屋から歩いて5分ほどのビジネスホテルに異動してからは、12時前後に持ってきてくれることになった。受け取りに行ける距離だけれど、ベッドメイキングを手伝ってくれるフィリピンのおねえさんが来るまでは、フロントに一人でつめているから離れるわけにはいかない。

お疲れさま、と互いに挨拶してから別れ、どれどれと弁当箱をあける。ラップした皿が届くときはカレーだから見ずともわかる。めったにないけれど、丼の時はチラシだ。おまけの納豆がつくときは、まあそこそこのおかずと知れる。「簡単なおかず」の中身は、メンチとコロッケだった。見た目はほとんど変わらないけれど、見慣れた居酒屋メニューの品だから、区別がつく。右がメンチ、左がコロッケだ。

それにポテトサラダと香の物が乗っている。揚げたてのコロッケ、メンチはうまい。レンジで温めなおすとカリッとした食感がなくなるし、かといって冷めてしまうと口が寂しい。冷蔵庫からソースを取り出してとろっとかける。カップ入りのシジミの味噌汁を用意して、いただだきまぁす♪　頬がゆるむ。