ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 096原爆信仰 「核実験は、砂漠、環礁、ツンドラ地帯などが実験場だったでしょう。核実験による火災の発生はほとんど無視することができたけど、核爆発にともなう火災の発生を考慮していなかったんでしょう」 ミス・ホームズは博士にむかって話した。 「そのとおりだね。核戦争でオゾン層も破壊されるから、それだけでも農作物の被害や癌患者は増加することだろう」 「いったい、どのくらいの核を使ったら『核の冬』は来るのかしら?」 「それが、核が使用される場所が都会か、田舎でも大きく変化するし……。気候や地理によっても変化する。でも、わずか一○○メガトンの爆弾で、『核の冬』は来るという説もある。インドとパキスタンの核じゃ起きないだろうけど、フランスやイギリスでは当然、この『核の冬』を起こすことが一国だけでできるというわけさ。彼等は人類を破滅させることができるってわけさ!」 「そのくせ、インドやパキスタンを非難する。非難する権利なんてあるわけがないのに……。核の抑止なんて、寝言だってことが、わかるだろう……。インドやパキスタンでさえも、核開発ができたのだからね……」 行者はインドまで、核攻撃されていた地球を見てしまっていた。 「そうね……。多くの国が核を保有したら、脅しだって効かなくなるわね」 わが国イギリスはと続けたかったが、地球人にもどるミス・ホームズ。 「持っているだけで、自殺行為だよ。それも、核戦争をする当事者だけが問題というわけでなく、地球規模の汚染だよ。都市に落とされれば、火災から有毒物質が多く生まれることだろうし……。生きていける可能性はないだろう……。これほどの規模なのだから……」 夏八木はマイクに訊いた。 「ねえ、これでも、核兵器はあったほうがいいの?」 マイクは今さら、何を話しかけてくるのだろう……。 むかついた。意見を翻したところで、バーバラは返ってはこないのだ。 「なかったら、こんなことには、なりはしなかったわ!」 ソフィーはマイクを非難した。 「そうだよ。核さえなかったら……」 「あいつらさえ、いなかったら、こんなことには、ならなかったのよ」 輝代は語気を強めた。 「いくら怒っても、核兵器がなくならない!諦めてしまう人たちもいる。でも諦めたら、認めたことになるなんて、ぜったい、私はいやよ。核兵器は人を殺したり、環境を破壊したりする以外には何の役にも立たないものよ」 マイクはテーブルに顔をつけていた。なんで、こいつら、今さら、こんなことをくどくどと述べるのだ。 バーバラは死亡したのだ。 そして、僕の父母や、弟だって……。 愛犬のラッキーだって、その名前と反して死んでいることだろう。 もしかしたら、放射性廃棄物なんて、印をつけられているかもしれない。 それとも、丸焦げになっているか、あの茸雲の一部に化してしまっているだろう。 そこまでする悪党もなかなか、いまい……。 いくら、アメリカの治安が悪いといっても、家族全員を殺していくやつはそうはいないさ……。 それも分子のレベルまでばらばらにしていく奴などいないだろう。ばらばら殺人どころの問題ではない。 「ピストルも無ければ、撃てない。ピストルは身を守る武器になるだろう……。核兵器は何の役に立つという……」 「それは、役に立っていたさ……。湾岸戦争のことを思い出してみろよ! やつらは核兵器を持っていないから、あれですんだ」 「あなたは、恋人が殺されても、まだ原爆信仰しているのね」 ミス・ホームズは推理した。 「原爆信仰?」 マイクは顔を上げた。
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