ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第二部・国境なき恐怖 179子孫に負債を背負わせる 多くのメンバーの行動が彼女を満足な気分にさせているのだろう。 そして語る。 「そして何十万年も、放射能を出し続けるそうだ。人の人生は長くともたったの百年も生きる人はほとんどいないわ……。それを一人の人が身勝手にも、決めて使用するなんて、子孫たちにとっても、負債を背負わしているようなものなのよ」 子孫か、まだ、ここに存在していない日本人、人類にも影響を与えることをしているということを自覚してもらいたいものだ。 京都の老舗というのは、未来のお客様のことさえ考えていると書いている人もいるくらだ。 ミス・ホームズが日本人向けに語る。 「プルトニウムを多く生産してしまう廃棄物の再処理も、アメリカもドイツもそれから撤退しました。それは、経済的に採算が合わないというだけでなく、とても危険だからです。イギリスもフランスも、もはや採算が合わないので撤退しなければならないと考えています。イギリスやフランスで行われている再処理の一番のスポンサーも、実はイギリスやフランスではなく、“日本”なんですよ」 「日本が……」 勇気は眉根を寄せた。 「プルトニウムは原爆をつくる材料にもなるものでしょう」 「被爆国の日本が……」 ソフィーは呆れていた。 いや、テレビを見ている人たち、みんなが呆れていた。 どこが『核アレルギーの国民性』なのだろう……。 昼休みが終って、ソーシアもまた参加してきた。 エリックはナンシーにある人とテレビで話してごらんと伝えてきた。 「誰かしら?」 「それじゃ、谷本さん!」 エリックの顔がモニターから消えた。 そしてテレビ画面には広島で会ったおばあさんがいた。 「あら!おばあさん」 「ナンシーちゃんね」 「今、テレビを見ているわよ」 「そうなの、ありがとう……」 ナンシーは照れくさかった。 「そちらにいるのが、ソーシアさんね」 「そうです」 「いろいろ聞いたわ。広島からの学者という人のことを、少し説明したかったのよ。でも、その前に広島の原爆を伝えることの歴史を聞いてほしいわ」 おばあさんは、目に涙がたまっていた。 「あの、おばあさん、原爆で赤ちゃんを亡くしたのよ」 ナンシーはソーシアに言った。 「赤ちゃんを……」 おばあさんの話はもう、VTRにとってあった。 それが放送された。 エリックの方針で、他人事でしかないキャスターに原稿を読ませるだけでなく、被害者や加害者……その出来事に関係する人物に発言させるのが、エリックの方針でもあるのだ。 「原爆がどう報道されてきたか?」という文字が画面に出る。
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