ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 069日本人なら ![]() 「まったくもう、日本人ならば柔道していたり、丁髷していたりと思っているよね」 勇気は勉が丁髷しているところを想像して吹きだした。 勉が勇気を一瞥した。 「そうだよね。日本人は丁髷をしていて、刀を腰につけて……」 「勇気、そんなこと本気で言っているの?」 「うそ! 冗談だよ。あはは……」 「でも、折り鶴も折れない人もいるということが、これで理解できたわ!」 ミス・ホームズが明晰な頭脳にデータをインプトした。しゅんとするマイクと勉。 「よし!負けないぞ。マイク!作ろう」 それが禎子の精神だ! と勉は心の中で思った。 「オーケー!」 しかし、二人は説明図を見ても駄目だった。 それにしても千羽鶴は千羽もつくるので、その時間内には覚えてやると勉は思っていた。 しかし、他の者が次々に折っていく。 「そうだ。文明の利器を使おう!」 勉は、ビデオ・カメラを持ってきた。 「駄目よ!私を写さないで……」 輝代は大きな声を出した。 「そんなに……、ああ、びっくりした」 勉はたいへん驚いていた。 「それじゃ、勇気先生、ゆっくり作って下さいよ」 勇気の手の動きをカメラは追う。勇気はできるだけ、ゆっくり作る。 こんなことをしているよりも、本当は手を早くして作りたいが、二人のためだと勇気はあきらめた。 「はい、これで、できあがり」 「ありがとう!」 そのビデオ・カメラには、テレビ画面もついており、撮ったものを映す。 できるだけ早く、みんなと同じように二人は、折り鶴を折りたいということで、ビデオの最初には、折り紙だけが空中に浮いていたのに気付かなかった。 「そうだ。そこで、ストップ」 「ここが、難しいのです」 「難しいところなんか、あったけ?」 勇気は首をかたむけた。 「ないと思うけど……」 ナンシーも首をかたむけた。 みんな、黙々と折り紙をしていた。 「テレビで、広島がはじまったよ」 「夏八木さんが何か話しているよ」 「少し休憩して、テレビを見ようよ」 マイクが提案した。 「まだ、一つも折ってないくせに……」 ミス・ホームズは証拠のよれよれになった折り紙を見ていた。 マイクは熱心にテレビ画面を見ている。 「今日、八月六日は広島に原爆が落とされた日です。この日に、灯籠流しをする人たちがいます。それは、今は亡き人たちに、この平和である日を祈念して、贈るのです」
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