ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 068折り鶴をおろう ![]() 「そうよ、あいつは、その後も、広島や長崎の人を苦しめ続けるのよ」 輝代はまるで御経を唱えるように抑揚なしで話した。 「何?」 マイクは輝代を見て不思議そうな顔をした。 「うん」 勇気はわからず、首を左右にふっていた。 「いいえ、何も……」 輝代はナンシーの顔を見て笑った。 本当にやさしい笑顔だとナンシーは、輝代の顔を見て思った。 ナンシーは輝代が超能力者なのではないだろうかと思えてならなかった。 ナンシーの心の中で思ったことを続けたら、会話になるのだから……。 それとも、もしかしてお化けなのかしら……そんなことはあるはずがない。 でも輝代がお化けでも、そんなこと、私はかまわないわ!と思った。 なぜなら、輝代は輝代ですもの……。 「二次被曝というのは、急性症状と同義語ですか?」 マイクは勉に質問した。 「いいや、二次被曝した人にも、急性症状はあった。つまり、嘔吐や、毛髪が抜けたり、斑点がでたりした。二次被曝とは、最初の爆発で被害を受けた人たちではなく、爆撃を受けた後に広島に入り、その放射能で被曝した人や、黒い雨のように放射能をもった雨を浴びた人たちが二次被曝した」 「そうなのか……」 マイクはうなずいた。 「ああ、そうだ。折り紙を買ってくるよ」 勉はフェリーを降りて街へ。 夕方、星が輝きはじめた。 テレビでは「サダコ・ヒロシマの少女と20世紀」というドキュメンタリー番組をやっていた。 外国人作家によって「サダコ物語」として海外に紹介されたと話している。 従来伝わっていた以上に物語性を高められ、「抵抗の象徴」「希望の象徴」と描かれていたという。 宇宙船「地球」号のメンバーは番組を見ながら折り鶴をおっていた。 折り鶴をおりながら話している。 勉が部屋からスタジオの方に向かうと、マイクが声をかけてきた。 「千羽鶴を折っていますが、これがとても難しいのです」 みんなは、黙々と、折り鶴を折っている。 「みんな、うまく折っているね!」 「そうですね。うまいですね」 マイクは皺くちゃの折り紙を持って困っている。 「あれでも、教えてあげたのよ」 と輝代。 「僕も……」 「私なんか、すぐにできるようになったのにね……」 ミス・ホームズ。 「そうか……。人には得意なことと、不得意なことがあると思うよ……」 勉はマイクをはげました。 「そうですね……」 マイクは、親指をたてていた。 「それに、作り方の図は、マイクが一人占めにしているよ」 「そうですが、これは三次元のものを二次元であらわしていて、とても、わかりにくいよ」 マイクは困っている。 「マイクは不器用だけど……」 「不器用だけど……」 「私も実は不器用でね、大人になっても、まだ折り鶴が折れない」 「えっ!日本人なのに……、大人なのに……」 輝代はびっくりしている。
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