ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 042産業奨励館 「産業奨励館は広島の原爆にあって、いまのように廃墟となってしまった。 これが、原爆が落ちた後の広島です。 見てください。最高の技術で建てられた産業奨励館は、これだけ残ったのです。 まわりの建築物は吹き飛んでしまったものが多く、 その形を止めているものは少ないでしよう」 勉はパソコンで、さまざまな広島の景色を映し出す。 「そして、これが、今の原爆ドームです。どうですか?」 「原爆の生き証人なのです。原爆ドームは……」 涙を流す輝代。 「ユダヤ人の虐殺はなかったという人たちがいます。 ユダヤ人たちは、それを怒ります。 当然のことです。六百万人以上という貴重な命がなくなったのです。 アウシュビッツには記念館があり、そこを訪れる人がいれば、 オランダにはアンネ・ハウスという記念館もあります。 だけれど、「ユダヤ人の虐殺はなかった。ユダヤ人は嘘つきだから、 そんなことを言っている」という人たちがいます」 「嘘なのかい?」 エリックは気楽に訊いた。 「嘘というのが嘘です。 嘘といわれないためにも、原爆ドームはそれを証明している 生き証人のようなものなのです。 もちろん保存をするため、広島の人たちは努力をされています。 原爆ドームを保存するか、どうかも広島の人たちは悩みました。 どうしてだと想う?」 子どもたちに質問をした。 子どもたちは沈黙していた。 「原爆ドームを見るたびに、被爆したことを思い出し、 亡くなった人たちのことを思い出す……。 苦しみが増すという人たちがいて、 原爆ドームを取り壊して欲しいと訴える人たちがいたのです。 それは、当然のことだろう。でも、残す必要があった……」 「では、そろそろ見学の時間です」 と夏八木。 「はい」 一同、腰を浮かせる。 船から降りて、バスに乗りこんだ。 輝代の横には、ナンシーが座った。 「あれも、あいつらよ」 「あいつら……」 「そうね、あいつと呼び捨てしてもいい奴ね」 この光景をはじめて見た人には違和感をもつであろう 一シーンだろう。 輝代はバスの外を眺めた。 広島には市電が走っている。 それは、まるでおとぎの国のようにも見える。 「明日は八月六日、その三日後に長崎だったのよ」 手を握りしめる輝代。
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