ラヂオアクティヴィティ[Ra.] 第一部ブロック・バスター 041原爆ドーム ![]() 勉は検索して、 原爆ドームをコンピューターの画面に出した。 「これが、原爆ドームです」 「そうだよ……」 首を上下にふっている勇気。 「原爆ドームは初めの頃そう呼ばれていませんでした。 初めの名前は産業奨励館。 広島で一番の近代的建築であり、関東大震災級の地震が来ても、 大丈夫といわれるほど……、 その時代最高の建築技術を結集してつくられた近代的な建築物だった」 産業奨励館だったころの写真が画面に出ている。 エリック「本当に関東大震災にも耐えるのかね……」 「それはわかりません。現在の建築物でも、 本当はわかりません。阪神・淡路大震災がありましたからね……」 地震のことは予定してないので、冷や汗をかいて勉は応えた。 だが、直下型の地震があった場合、 その真上に建てられた建築物はすべて破壊されるという 専門家の指摘は納得ができると勉は思う。 他国の地震のときには、日本のハイウェイは耐震設計が されているので大丈夫と話していたが、見事に落ちていた。 日本は大丈夫だなんて、説明していた学者のいうことなんて信じられない。 彼らは何の責任だってとらないし、また同じことをテレビで繰り返している者もいた。 「そうだね。いい加減なことを言ってはいけないからね。 日本のマスコミは“流れ”だけだ。 熱しやすく覚めやすい。 それはなぜか、視聴率こそ全てだからだ。 いまだに、こつこつと地震について研究している学者や、 取材を繰り返しているジャーナリストだっているのに、 その人たちに焦点をあてない」 放送されていることに勉は気がついた。 どこから、どこまで放送されているのか、さっぱりわからない。 いつも、カメラマンがあまりにも真剣に子どもたちを追っている。 エリックは力説する。 「日本は地震の多い国です。 阪神・淡路大震災は、まれにみる大きな地震でしたが……。 考えられる範囲の地震だったのですよ。 ところが権威ある学者たちは、次の嘘を考えついた。 史上初の地震だったと……。 そんなことはない。新幹線が走り、高速道路が通る、 そんな都会に大地震が起きたのが初めてだっただけのことだった。 このことも後に詳しく、このテレビ局で放送します」 エリックは子どもたちだけでもなく、勉にだけでもなくテレビの視聴者に向かって話しかけているのだ。 「あれ?あれは、あんな大きな地震は初めてで、 地震の基準も変えたくらいじゃなかったの?」 勇気は質問した。 「そう思っている人が多いね。 政治的にではなく科学的にとらえて放送しますから、 勇気くんも、ぜひ見てください」 自信をもってエリックは応えた。 「見るよ……」 「ヒロシマのことを、続けたまえ!」 勉は、また話しはじめる。
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