レコードやCDなどのミュージック・メディアはサブスクとは違って単に中身の音楽だけを楽しむだけでなくそれを包み込むジャケのアートも楽める。
レコード会社がプッシュしたいアーティストにはジャケのアートにも予算が十分に付けられ、有名写真家や著名デザイナーらを起用し豪華なジャケが制作される。
特にロック系で起用されるデザイナー集団としてはヒプノシスが有名で、ピンク・フロイド、レッド・ツェッペリン、イエス、ウイングスにアラン・パーソンズ・プロジェクトらを筆頭に数多くの著名バンドがヒプノシスのデザインを採用している。
10ccもその中の一つで、彼らのセカンド・アルバムからヒプノシスをジャケのデザインに起用していた事から、1977年に出た5枚目のアルバム、Deceptive Bends(愛ゆえに)も同様となった。
当時レコーディングの途中からケヴィン・ゴドレイとロル・クリームが脱退しエリック・スティワートとグラハム・グールドマンの2人組になってからアルバムだったので、5ccになってもクオリティーの高いアルバムが作れることを証明したくて結構気合が入っていた想像する。
彼らとヒプノシスのジャケのデザインの最初の打ち合わせで、レコーディングされた新曲4曲とアルバムタイトル、Deceptive Bends(ドーキングにあったヒプノシスの事務所に打合せに向かう途中に見た交通標識の文言で、トリッキーなカーブに注意!ってことだろうか?)をヒプノシスに提示し何かポジティブかつロマンチックなイメージをリクエスト。そしてバンドが分裂したばかりで2人組のポートレートをジャケの表紙には使うアイデアもバンドのイメージ的にまだ早いってことで却下。
(当初の道路標識のイメージからのアイデアと新しく提案した潜水士を使ったスケッチ)
(二つの写真を合成)
ただ道路標識から作成した案もイマイチで、Bendsの意味を道路のカーブではなく別の意味でもある潜水病からなんらかのアイデアを作成ことに。
出来上がった作品は美女を救出したヒーローの潜水士!
因みにこのアルバムの今野雄二氏が当時書いたライナー・ノートには、Deceptive Bendsは10ccの前身バンド、Mindbendersをもじったものであろうって書いてあった。
まあライナー・ノートを作成するための資料は限られていたから、バンドとの個人的な繋がりがない場合は書き手自身で想像するしかなかったのかな?