8月25日(火)
≪雨が上がり月が雲の切れ間に見えてもなお、
雨の匂いを残したままの街は夕暮れとはまた違った
妙に艶のある表情を浮かべていて、
そこに相応しい顔の人々が大勢往来を行き交っていた。
傘をさしているのは神谷さんと僕だけだ。
そんな僕たちを誰も不思議そうには見なかった。
神谷さんは傘を差し続けている理由を説明しょうとしなかった。
・・
・・
・・
喫茶店のマスターの厚意を無下にしたくないという気持ちは理解できる。
だが、
その想いを雨が降っていないのに傘を差すという行為に託すことが
最善であると信じて疑わない純真さを、
僕は憧憬と嫉妬と僅かな侮蔑が入り混じった感情で
恐れながら愛するのである。≫
『火花』より抜粋
ほんの一部分ですが、この部分だけでも人間のおかしさや哀しさが
充分読み取れます。
人間って!
悲しくてやさしい。
お笑い芸人を目指す人たちの紆余曲折の生活を垣間見たり
ひたむきさの思いを知ったりできます。
『火花』を読み終えたけどたくさん余韻が残ります。
また読み返したい文章です。