風に吹かれて旅ごころ

はんなり旅を楽しむはずが、気づけばいつも珍道中。

初夏の九州・南に北に 2-1(呼子・唐津)

2019-09-13 | 九州

1日目からの続きです。

● 朝の福岡バスターミナル

2日目の朝、早めに宿をチェックアウトすると、福岡駅周辺は少し雨が降っていました。
宮崎は降っていない様子。九州は広いですからね。

福岡(天神)駅の直上にある、西鉄天神高速バスターミナルは新しくてモダン。
7時12分発の唐津行き始発に乗ります。
バスが動き出したときには、雨はもう上がっていました。

福岡の中心部にユザワヤがあったので、ビックリ。
蒲田の手芸店を、吉祥寺で見かけた時にも驚いたのに、海を越えて九州にまで店舗を増やしていたなんて!


バスに乗ってみてわかりましたが、福岡駅って海沿いにあるんですね。
これまで福岡では電車ばかり使っていたからか、海のイメージはありませんでした。
高速道路から海のパノラマが開けます。

● 唐津で乗り換え

1時間ちょっとバスに乗り、「大手口」でバスを降ります。
道の向かいにあるのは、唐津バスセンター。

こちらも新しくてこぎれい。ここで呼子行きに乗り換えます。
乗ってきたバスの終点はお城の前。
時間が許すならそこまで乗っていきたかったのですが、まずは呼子の朝市を優先します。

● 呼子の朝市

30分ほど乗って、呼子港に到着。
朝市は始まっていますが、ちょうど到着した9時頃が一番にぎやかなのだそう。


朝市といっても、大きなマーケットが開いているのではなく、通りの両脇にパラソルを広げて、その下でおばあちゃんたちがこぢんまりと品物を広げている、昔ながらの風情。
こういう市を実際にみたのは初めてのような気がします。
輪島朝市、勝浦朝市と合わせて日本三大朝市といわれる呼子朝市ですが、メインルートはかなり細いです。


● イカさまざま

呼子といったら、もちろんイカ。
いろんな姿をしたイカがいました。


生きているイカさま

 


干されたイカさま

 


回るイカさま

 


止まったイカさま

 


揚げられたイカさま
 

もちろん、私もイカをお目当てにここまでやってきた一人。
揚げたてほかほかのイカシューマイを食べながら、市場を行きつ戻りつします。


外はカリカリ、中はジューシーなイカ。美味しいのがわかるでしょう。



イカだけではありません。蟹もいます。



サザエの壺焼きも。


ウニも売っています。この場で食べられるという、新鮮な味を楽しめます。



キョロキョロよそ見しかけましたが、やっぱりここはイカに絞ることに。
イカカツなるものや、イカのゲソ天を頼んでみると、目の前であげてくれました。
イカカツは、用事で支えるのが大変なほどの大きさと重さです。
すぐには食べられないほどあっつあつでした。


イカカツ


プレス焼きしたイカ煎餅のお店に、朝市一番の長蛇の列ができていました。
江ノ島のたこ煎餅のイカバージョンです。タコでもイカでも、大人気ですね。

ここでの時間は45分取っていましたが、買い食いしたあとお土産を選んでいたら、帰りのバスにギリギリになり、港の写真は撮れずじまい。
イカの加工品は案外あまり食べる機会がありませんが、おいしかったです。

● 呼子のマンホール

呼子のマンホールには、朝市通りの文字が入っています。



● タコ派かイカ派か

最近になって、世の中には「タコ派とイカ派」がいると知りました。
どうやら「犬派とネコ派」、「きのこの山派とたけのこの里派」のように、世間を二分する(?)大きな派閥のようです。

獲れるエリアが大きく影響するようで、東北の人はイカ、九州や関西の人はタコをより好むようですが、ここは九州だけどイカ・・・。
あまり関係ないかなと思いながらも、周囲に聞くと、やはり出身地方で好みが分かれるような気がします。

私はどちらが好きかといわれると、考えてしまいます。
だって、どちらも好きだからー。犬もネコも好きだしー。
こういうタイプが「日和見主義」と一番嫌われるパターンですね。
でも、たけのこの里よりきのこの山の方が好きですよ!

● 夕子ならぬ二タ子

「夕子」なら、京都の八つ橋ですが、「二タ子」と書いて「ふたご」と読むバス停を通りました。
漢数字とカタカナと漢字のミックス!

岩手県八幡平市にも、同じ地名があるそうです。


● 関東風ラーメン

道の途中に「関東風ラーメン 各種」と書かれた看板のお店がありました。
ビックリして、目が吸い寄せられました。
ざっくり一つにまとめられてる!


大きな意味で、しょうゆ味とかそういうことなんでしょうか?
九州の人からしたら、ひとくくりにできちゃうんでしょうね。
スティングの「Englishman in NY」を思い出します。
それからしばらく、あの歌が脳内を流れていました。

⇒日記blog『関東風ラーメン~九州の関東女』

● 運転手の声掛け

唐津に戻ってきました。唐津バスセンターでは、バスが到着すると、運ちゃんがわざわざ降りてきて「●●行きです」と声をかけてくれます。
なんてジェントルマンなんでしょう。
逆にバスが到着しても、運ちゃんの声がかかるまではバスには乗れないという、暗黙のルールができています。
関係者のだれもが、節度ある行動をとっています。

● 唐津散策

町の散策に繰り出します。
まずは唐津神社へ。唐津といえば「くんち」が有名ですが、あれはこの神社のお祭りです。


大きな白い鳥居が青空を背景に立っていて、見上げるとまぶしいほど。
由緒正しい立派な造りでした。


くんちで町中を練り歩く、各町の「曳山囃子(ひきやまばやし)」の絵が描かれた巨大な絵馬。
この赤い魚が可愛くてお気に入りです。
前に、土地の人に「あの金魚、いいね」といったら、「鯛だよ!!」とツッコミ入れられたことがありました。


「今日は過ごしやすくていい天気ね。昨日は大変だったけど」という声を、呼子でもここでも聞きます。
昨日の北九州地方は雨だったよう。
たしかにいい天気。日差しはまぶしいですが、そんなに暑くなく、動くのにちょうどいい気候です。



海の方に行ってみると、きれいな砂浜が広がっていました。
お城の方に歩いて行くと、松林がありました。


唐津のマンホールも、松がデザインされています。
さらにお城の向こう側には、日本三大松原の中でも一番広大な「虹の松原」が広がっています。
残りのふたつは、静岡県清水の「三保の松原」と、福井県敦賀市の「気比の松原」。

 

● 唐津城

ここから、お城に向かいます。
天守閣にはエレベーターもありますが、ここは石段を歩いて行きます。


● 唐津のユーリ!

私のかなり前方には、白いふわふわのワンピースと華奢なサンダル姿の女性が、石段を登っていきます。
かわいらしい格好ですが、お城に上がるにはちょっと大変そう。
途中の見晴らし台でその人に追いつきました。
カメラを構えた年配の男性が「じゃあここで写真を撮りましょう。ユーリファンはみんなこちらを向いたポーズを取りますよ」と言います。
彼女は、言われたとおりのポーズで、何枚も撮影してもらっていました。


見晴らし台からの光景


唐津神社に奉納された絵馬には、イラストが描かれたものが多かったので、近寄って見てみたら、「ユーリ!!! on ICE」のものばかり。
あの作品は唐津が舞台なのかな?と思っていたところです。(どうやらそのようですね)

私の友人にも、男性女性ともにユーリファンがいます。
男性は「これで女性の萌えを知った」と言っているし、女性は世界にどっぷり浸かっています。
私も観てみようかなあと思いながらも、なんだか勇気が出ず(?)この作品のことは知りません。
タイトルから外国人の話かと思っていましたが、日本が舞台なのかしらね?


近くには、「ユーリがこの石段で特訓をした」というパネルがかかっています。
お城をあげてのユーリ企画のよう。
それならファンは、よそ行きの服を着て記念撮影のためにがんばって登りますよね~。

 
白いワンピースの女性も聖地巡礼中のユーリファンで、おじさんは知り合いなのかガイドをかって出たのか、まあユーリ作品に詳しい人(?)なのでしょう。
双方の希望が一致したということなら、もちろん何も問題はありません。

● 川にかかる橋々

突然降ってわいたユーリのインパクトで、今どこにいるのか一瞬忘れかけましたが、お城の天守閣は美しい形をしていました。
海沿いなので、眼下に広がる景色がきれいです。

唐津城のそばには、早稲田大学系列の早稲田佐賀中学校・高等学校学校がありました。
ここは大隈重信の出身地なので、早稲田大学のOBが創設したそうです。


お城を降りて、川沿いに歩きます。
架かっている橋は、どれも雰囲気のいいものばかり。
この町は、観光と保存についてわかっていますね。


広島の錦帯橋のような、カーブを描いた橋を見つけて、そこまで行ってみました。
もちろん、歩いてみます。
やはり橋は見るだけでなく、通らないとね。


● 明和電機と辰野金吾

バスセンターに戻る途中で、重厚な旧唐津銀行銀行の建物を見かけました。
写真を撮っていると、中から出てきた係の人に「お時間合ったら、見学しませんか?」と言っていただきました。


この方にお誘いしていただきました


ところがバスの時間が近づいていたため、「残念ながら時間がないんです。すみません」とお断りします。
建物の前には二人の人物像があり、なにやら持っているものが、元吉本興業の電機メーカーパフォーマー、明和電機みたいだなあと思います。


明和電機

近寄ってみたら、東京駅の設計者、辰野金吾氏でした。
アート・ユニットじゃなくて日本近代建築の父だったんですね!


建築家・曽禰達蔵(左)と辰野金吾(右)

彼は唐津出身で、この旧唐津銀行の設計も行ったとのことです。
没後100年を記念して、今年の春に落成式が行われたばかりの、まだ新しい銅像だそうです。

● 博多へリターン

さて、バスに乗り、ふたたび博多に戻ります。
ただ、これから行きたいのは長崎なので、博多は逆方向。
唐津まで来たので、そこから伊万里や佐世保、もしくは佐賀や嬉野経由で長崎に行ければいいと思いましたが、調べてみてもちょうどいいバスがありません。
結局いったん福岡に戻り、そこから長崎に向かうことになりました。

またバスに揺られて眠っていきます。
博多駅前の大通りの街路樹も、フェニックス(パームツリー?違いが判らない~)でした。
博多には、ヤシの木が並んでいるイメージはなかったので、なんだか意外。
宮崎だけじゃなく福岡も南国なんですね。

その2に続きます。

◆ 初夏の九州・南に北に index ◆

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初夏の九州・南に北に1-2(宮崎)

2019-09-11 | 九州

その1からの続きです。

● 鵜戸神宮へ

この日の東京は朝から大降りの雨。
羽田空港に着いた時には傘はずぶぬれになっていましたが、宮崎に来てから急速に乾いています。
そもそも、こちらのみなさんがさしているのは日傘。
ピーカンの下で雨滴がしたたる傘を持つ私は、突然どこかから時空を超えてきた異星人のようです。

バスは堀切峠を越え、サンメッセを抜けました。
鵜戸神宮で途中下車します。
前々から、ここに参拝したかったんですよね~。

最寄りのバス停についてから本宮までは、山をひとつ越えていく、かなり大変な道のり。
階段を上って鵜戸岬隧道を通り、八丁坂を下っていきます。


茅野輪があったので、ぐるぐる周ってお参りします。
海からの強い風にあおられ、眼下の岩には荒波が打ち付けます。



太平海の荒波が打ち付ける岩壁の上に建つ神宮。
こんなに海際に立っている神社も、ダイナミックで珍しいですね。
朱塗りの橋の欄干から、広々とした太平洋を見渡せます。

 

● 洞窟の中の本殿

本宮入口に着いてからも長い参道が続き、かなり歩いた末に、本殿にたどり着きました。
海辺の崖にできた狭い洞窟の中に、こっそり隠れるかのようにありました。


薄暗い中、周りをぐるりと一周します。
頑丈な岩に守られているので、保存状態もよく色彩鮮やか。
全面に立派な彫刻が施されています。 

● 運玉投げ

洞窟内の本殿だけでなく、海に面した亀石そばのお社も鮮やかな朱色。
潮風や波による色落ちが早い場所で、この美しい色を保つのは大変だろうと思います。


霊石の亀石に向かって、大勢の人たちがワイワイと運玉を投げています。
場内ピッチャーが多すぎだし、一人旅だし、なにより球技がすこぶる下手な私は、静かに見学に徹します。
亀石の背中の桝形の窪みはとても小さく、そこめがけて運玉を投げるなんてどだい無理そうでしたが、皆さんかなりの確率で、入れていました。
すごいわ!さすがはプロ野球チームのキャンプ地!(関係ないか)


うねるように押し寄せてくる荒波が、お宮前の岸壁に当たり、しぶきが辺りに飛び散ります。
ごうごうとした海の音と強風にあおられ、(長居は危険)という警報が心の中に鳴り響きます。
脚を踏ん張って海を眺めるだけでも、激しい自然を前に、ドキドキが止まりません。


いつか言ってみたいセリフ:「ご武運を」

● ウとウトウ

鵜戸(うと)神宮の名前に、青森にある善知鳥(うとう)神社を思い出します。
ウもウトウも、どちらも海鳥ですし、響きが似ているので。


鵜戸神宮は、聞きしに勝るすばらしい場所でした。
青島神社も、鵜戸神宮も、かなり危険と隣り合わせの、ワイルドな自然の中にあります。
さすがは神話のふるさと、宮崎県の聖地は、シチュエーションがダイナミックですね~。

韓国・中国の人たちが大勢参拝に来ており、日本人よりも多いようでした。
にぎやかな団体行動なので、そう感じたのかもしれませんが。

● 日南市のマンホール

メジロと梅の花がデザインされた、きれいなマンホール。
これは2009年に合併された新・日南市の鳥がメジロだからだそう。

 

旧・日南市の市の鳥はカワセミで、市の合併に伴ってマンホールの鳥が変わったことになります。
新・日南市となった旧・北郷町町の鳥がメジロで、そのまま市の鳥に格上げになったようです。

メジロとカワセミ、どちらのマンホールもあったら、道を歩くのが楽しくなりそうですが、行政上はそういうわけにもいかないんでしょうね。
カワセミバージョンは、どんどん減っていき、もうなくなっているかもしれません。
市町村合併があると、マンホール好きは生き急がなくてはならないのです・・・!

● 九州の小京都、飫肥

ここから再びバスに乗り、日南海岸沿いにさらに南下します。
海岸沿いのカーブ道をバスは結構なスピードで走り続け、荒々しい波をずっと眺めていきます。

次は終点まで乗っていきました。
降りたのは、飫肥。・・・読めませんね。オビです。


ここは藤原氏南家の子孫、飫肥藩・伊東氏の5万1千石の城下町として栄えた町。
武家屋敷を象徴する門構え、風情ある石垣、漆喰塀が残る町並みは、昭和52年に重要伝統的建造物群保存地区に指定されています。


城跡を訪ね、武家屋敷を巡ります。
昔ながらの町並みが残されていて、時が止まったままのようないい雰囲気。
その美しさから、「九州の小京都」と呼ばれています。


朝ドラ「わかば」(2004年)の舞台にもなったそう。

● かつおめし

気がつけば3時になっていたので、飫肥天で知られる「蔵」でランチにしました。


飫肥の名物、おび天と宮崎の郷土料理、かつおめし。
カツオのお刺身茶漬けにゴマと海苔をまぶした、素朴な味です。

● 鯉と城下町

食後、はらごなしにまた町を散策。
遊泳地には、鯉が泳いでいました。
鯉が泳ぐ城下町を散策した場所は、島根の津和野、長崎の島原、そしてここ飫肥になります。
忘れている場所はなかったかな?とネット検索しましたが、ほかの場所はヒットしません。
ということは、もしかするとこの三カ所だけなのでしょうか。なんだか貴重な気がしてきました。

「鯉と城下町」という言葉から「恋とマシンガン」の歌を思い出して、LaLaLa~♪と口ずさみました。
フリッパーズ・ギター、なつかしい!


予定より1時間遅れのバスに乗ってきたため、ここの観光を1時間減らして、帳尻を合わせます。
ゆっくり過ごしたいすてきな場所なので、後ろ髪を引かれる思いですが、
4時発の宮崎駅行きの最終バスに、どうしても乗らなくてはいけないのです。



● 木のバス停

ところが、帰りのバス停が見つからずに、車通りをうろうろ。
どっちに行けばバス停があるのか、わかりません。
刻々とバスの時間は近づいてきています。
乗れなかったら、どうしよう・・・!

地元の人に聞きたくても、通りには誰も歩いていません。
困って、間口の狭い洋菓子屋さんに飛び込み、「すみませ~ん」と奥に声をかけて、たずねました。
「普通のバス停よりも背が低くて、木でできているから、見落とさないでね」
と三角巾姿のおばさんに教えてもらいます。


今度こそ見つけなくちゃと、目を皿のようにして探していくと、それらしいものがありました。
探し求めていたバス停です。ああよかった。
たしかにうっかり通り過ぎてしまいそうなほど、目立たちません。

通りの向こうからバスがやってきます。それになんとか間に合いました。

● 二つの駅


渋いJR日南線の日南駅の駅舎。駅前に銅像が立っていました。
服装から、伴天連さんかと思ったら、遣欧天正少年使節の伊東マンショでした。
彼の名前は伊東さん・・・そう、飫肥藩の日向伊東氏一族だったんですね。

次に、真っ赤な駅舎の前を通ります。
ここはJR日南線の油津(あぶらつ)駅。


駅名よりも大きく書かれたCarpの文字。壁にはカープ君も描かれています。
カープの赤が駅舎の色になっているんですね。
日南市は広島カープのキャンプ地。
「キャンプ地最寄りの油津駅を日本一のカープ駅にしたい!」という地元カープファンの夢を、JR九州が実現したそうです。

● 波乗りサーファー

終バスなのにしばらく私一人の貸し切り状態でしたが、鵜戸神宮前からは満員バスになりました。
あいかわらず波は高く、行きにはいなかったサーファーの姿もちらほら見るようになりました。


黒い点がサーファーです。今日の波の荒さは特別かも。

 
まるでイメージ画像。日南海岸は、絵になりますね~。

普段見慣れた横浜や湘南の海とはまた違う、宮崎の海。
もっとワイルドで荒々しい感じがします。
この辺に住んでいたら、サーフィンをやりたかったなあと思います。
湘南はサーファー人口が高いし、ファッション化されているし、人の目も現地ルールもありそうですが、こちらではそういうことは気にせず、のびのびやれそうなので。


● 平和台公園

宮崎空港でバスを降り、ここから路線バスに乗り換えます。
橘通り二丁目で乗り換えて、終点の平和台で降りました。
ここにある巨大な石の塔を、見たいと思ったのです。

1940年の建造当時は日本一の高さだったという、37メートルの塔。
見ようによっては蟻塚に見えなくもありませんが(!)、塔の四方に4人の巨人の像が立ち、各方角を守っています。
「勇」「親」「愛」「智」の四魂を表している、4.5mの像だそう。


塔には『八紘一宇』と書かれています。
日本書紀に見られる世界平和を意味する造語ですが、当時は大東亜共栄圏のための戦争スローガンとして使われた言葉でした。
第二次世界大戦終了後、GHQは八紘一宇の碑文と塔の像を撤去したそうです。
今はどちらも変換されて「平和の塔」として静かに存在しています。

平和の塔というにはかなり厳めしい武骨な形ですが、歴史(戦争)遺産として重要な建築物です。
謎めいた巨大な遺跡は、メキシコのピラミッドのようでもあります。


塔から宮崎市街を眺めると、地球が丸く見えました。

● はにわの森

公園の奥には、はにわの森がありました。
辺りに点在する無数のはにわたちは、400体くらいいるそうです。


ユーモラスなはにわがたくさんいるエリア。
ファンシーですが、夕暮れ時に彼らと向き合うのは、ちょっとこわいです。

 
少しずつ光が陰っていく、うっそうとした森の中。
「こっちだよ」と彼らに引っ張られたら、このまま人間の世界に戻れなくなりそう。


同じ形のものが集まって、ゲシュタルト崩壊しているところもありました。
(だるまさんが転んだをしているみたい)と思って彼らを見ると、みんな同じ格好をしたまま、ピクリとも動きません。
なんだかゾ~ッとしました。
かといって、彼らがガサガサと動いたら、もっと怖かったはずですが!

先ほどの塔の広場まで、ほんの数十メートルしか離れていないのに、ここは私と埴輪たちしかいない異世界。
(暗くなる前にこの森から出よう)と、早足で人のいる方に戻りました。

● すみません、回送中です

公園発のバスに乗ったのは、中国人の観光客と私の3人だけ。
町の中心部で乗り換えます。


走ってきた回送中のバスには「すみません、回送中です」との表示が出ていました。
これまで「回送中」の3文字しか見たことがありませんでしたが、謝ってくれてる!
優しいですね。宮崎の人のイメージが高まります。

● ボンベルタ

町の中心部の道路はとても混雑していました。
「ボンベルタ」というバス停の響きがとても引っ掛かります。
(猪木ボンバイエみたい)と愉快な気分になりました。
ここでほとんどの乗客が降りたので、町の中心地なのでしょうか。
周りの建物を見ても、ボンベルタなる店名は見つけられませんでした。


後で調べたら、「ボンベルタ橘」という百貨店がある場所だそうです。

● フェニックス号

日暮れ近くなってきました。観光できない夜の間に長距離移動をしようと、宮交シティから19時発の福岡行きフェニックス号に乗りました。
ここでいうフェニックスとは、不死鳥のことではなく、ヤシの木のことですね。もうわかりますよ。


宮崎駅、夜空に浮かび上がる満月とフェニックス。

バスに揺られて4時間半。眠っているうちに23時半に博多に到着し、寝ぼけまなこで駅前のホテルにチェックイン。
一日バスに揺られて、GWの神奈中バスの日々を思い出した一日になりました。

2日目に続きます。

◆ 初夏の九州・南に北に index ◆

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初夏の九州・南に北に1-1(宮崎)

2019-09-10 | 九州

● prologue

瀬戸内旅行から2週間後、再び旅に出ることにしました。
ふたたびJALから「マイルの期限が近づいています」というメッセージが届いたのです。

現在の手持ちは6007マイル。
「どこかにマイル」は6000マイル必要なので、ぎりぎりもう一度トライできます。
もうこれはやるしかないでしょう!と、再挑戦することにしました。

今回の候補地は、三沢(青森)、長崎、宮崎、那覇。
私にとっては、どこでもいいなあと思います。
前回は、4つの都市のうち一番距離が近い岡山に決まったので、今回もきっと、最短の三沢になるんだろうと思っていました。

フライト時期は、7月末まで選べますが、申し込める最短の週末を選びました。
すると、フライト先の決定に通常3日かかるところが、翌日結果通知が届きました。

● 行き先決定

行き先は、宮崎でした。
(あれ、三沢じゃないの?)と思いましたが、それは私が勝手に予想していただけで、最短都市になると決まっているわけではありません。

宮崎は、前に一度、バスツアーで訪れたきり。
新幹線も通らない、ちょっと行きにくい場所にあります。
一度しか行ったことがない南九州への旅。これはいい機会をもらいました。

出発までそれほど日がないため、さっそく旅のプランを練ります。
宮崎といったら高千穂峡かなと、アクセスを調べましたが、宮崎市内からはかなり遠いとわかりました。
北部の延岡が最寄都市。むしろ熊本市から行く方が近そうです。
そして、宮崎駅から延岡経由で行くのは、けっこう時間がかかることがわかりました。
雨が強いと、高千穂峡のボートも出ず、あの透明な水も見られなくなります。
高千穂循環バスはハイシーズンのみの運行で、今は出ておらず、公共手段で行くのは相当大変なことがわかりました。
前はツアーバスでスイスイ連れて行ってもらったので、まったく大変さがわかりませんでしたが、どうやら車でないと難しそうです。

高千穂は以前訪れたことがあるので、今回は無理に行かないことにしました。
それよりも、日南の方に行ってみましょう。まだ行ったことがない鵜戸神社や飫肥(おび)が、気になります。

● SUNQパス

調べていくうちに、九州内のバスが乗り放題になる「SUNQ(サンキュー)パス」があるとわかりました。
学生時代、ユーレイルユースパスでヨーロッパを巡ったことを思い出します。
また、今回のGWに神奈中フリーパスを使い倒したことも。
じゃあ、これを使ってみましょう。
長距離バスだと、別の県も行くことも可能になります。

さて、気になるのは天気です。
6月の梅雨のハイシーズンなので、滞在中ずっと大雨が降る可能性もあります。
しかも九州は、国内でも台風の規模が巨大な場所。
天気予報は毎日めまぐるしく変わっていきますが、予報をみる限りは雨は大丈夫そうです。ラッキー!

● 当日の空港にて

当日は、6時に出発。
朝から本格的に雨が降っています。関東は一日降り続くそう。
リムジンバスで羽田空港に向かうと、保安検査所には長い列ができていました。

フライト30分前とまだ時間があるので、焦らず列に並びますが、電光板の8時発のところには、帯広行きと青森行きの表示しかないのが気になるところ。
(宮崎行きも飛ぶのよね?)と何度も自分の券を見直します。うん、確かに今日だわ。

列はなかなか進まず、そのうちに「7時50分発のフライトの方はこちらの優先コースに」という声がかかります。
それでもまだ中に入れません。こんなに動かないなんて。
とうとう「8時発のフライトの方は優先コースに」と声がかかりました。

(30分前から並んでもこうなっちゃうの?)と驚きながら、優先ラインに移動します。
グランドスタッフさんにチケットを渡すと「宮崎便は連絡バスになったので、ご案内します」と早口に言われて、ついて行きました。
電光板に表示されていないわけを聞くと、連絡バスになったので、搭乗時間が早まったんだとか。
質問と答えが合っていない気がしますが、お互い小走りしながらの会話なので、まあ仕方がありません。

● 空港内を走る

歩いていると「宮崎行きの方、あと11名お待ちしております」と放送がかかります。
とほほ、私はこの中に入ってしまったのかしら。
ゲートの前までつれてきてもらい、そこを抜けると連絡バスが待っていした。
中には、20人近くの人が乗っていました。
あれ、数が合わないわ。11人って何の数だったの?
さらに2、3人がやってくるのを待ち、バスは出発。
この旅客ターミナルと航空機の間を行き来するバスは、ランプバスというそうですね。初めて知りました。

● 積み荷問題

雨に濡れながらタラップを上がり、飛行機の中に入ります。
まだ8時前なので、予定通りのフライト時間になりそうでしたが、全員が着席してからも、飛行機が離陸する様子はありません。
「荷物を積むのに手間取っている」と放送がかかり、結局予定時間よりも35分遅れての出発となりまました。

前に航空貨物会社の人の本を読んだことがあります。
航空機のバランスを調整するため、積み荷の計算をする仕事で、力士のような重量のある人たちが団体で乗り込んだりすると、計算し直しになるんだとか。
力士っぽい人たちは見なかったけどなあ。

今回は、直前のフライト予約になったので、三列シートの真ん中の席しか空いていませんでしたが、両側は細身の人たちだったので問題なし。
息苦しさは感じませんでした。

● 宮崎ブーゲンビリア空港

遠いイメージの九州ですが、1時間半乗っていると着くんですね。
東京は朝からジメジメとした雨が降っていましたが、宮崎に着いたら、明るい空になっていました。
わあ、きれいに晴れ上がってる。



こちらも雨が降っていたようですが、もう道路はすっかり乾いています。
宮崎ブーゲンビリア空港。スゴイ名前ですが、ちゃんとブーゲンビリアが咲いています。



インディアン、嘘つかなーい。ブーゲンビリアも、嘘つかなーい。
一気に南国にきたなあという感じ。

空港スタッフもみんな南国仕様のアロハな制服。
トイレの男女の絵は、ハワイアンでいい感じです。


成田や羽田のトイレ表示も、舞妓さんと侍みたいな絵にすれば、外国人にウケるんじゃないかしら。

● サンキューパス

ここでサンキューパスをゲット。
これがあれば、これからの3日間、九州全土の公共交通機関がほぼ乗りこなせることになります。
強力な旅の助っ人がつきました。


さっそく青島に向かいたいところですが、フライト到着が遅れたため、乗りたい便はもう行ってしまっていました。
時刻表を見ると、次の便は1時間半後。けっこうありますね。
その間じっと空港で待つのも退屈だし、町を走る青島行きバスに乗ると、予定より1時間遅れで行けます。
少しは時間を挽回できるので、いったん繁華街に出て青島行きのバスに乗りました。
パスがあると、こういった変更が気軽にできるのがいいところ。

● 2つのスタジアム

バスの前からも後ろからも、外国語が聞こえてきます。
外国人乗客がずいぶん多いようです。

アナウンスも、日本語に続き英・韓・中と4カ国語流れて、インターナショナル。
韓国や中国に近い九州は、アジアからの観光客が多いんですよね。

川向こうに球場が見えてきました。
サンマリンスタジアムです。



その近くにある、白い木の花ドーム。
カブトムシの幼虫チョコレートを思い出します。(なぜかチョコの方)



どちらも名前の始めに「KIRISHIMA」とつくのが正式名称。
霧島酒造がネーミングライツを持っているからだそうです。

● 日本のチンタオ

バスに乗ると、外国人が多いことに気づきます。
前も後ろも外国人。
アナウンスも、日本語に続いて英韓中と4カ国語流れてインターナショナル。
九州は韓国や中国に近いので、アジアからの観光客が多いんですよね。

青島に近づいたとき、中国語で「チンタオ~!」とアナウンスされました。
チンタオビール、中華街でよく見かけます。

● ボタニックガーデン

バス通りから青島まで続く商店街参道に気づかず、隣のボタニックガーデンの中に入っていきました。
南国の花々が咲いてきれい。

 
美しいアガパンサスの群生


マンホールは、宮崎市の花「ハナショウブ」のデザイン。
ここはブーゲンビリアじゃないんですね。

 

● 幸せの黄色いポスト

島に渡るところには、幸せの黄色いポストがありました。
ここ青島は、山幸彦と豊玉姫が恋文を交わした、ラブレターの始まりの地とされているんだそう。
黄色くても、郵便屋さんがちゃんと集配に来るそうです。



若山牧水の歌碑もありました。


「檳瑯樹(びろうじゅ)の古樹(ふるき)を想へ
その葉陰 海見て石に似る男をも」

熱帯樹林と鬼の洗濯岩を歌っているのかなあと思いましたが、なかなかどうして、熱烈な愛の歌でした。

 

かつての青島は神域とされ、神官など限られた人しか渡ることは許されていませんでした。
人々は、陸側から島に向かって祈りをささげたそうです。


● 鬼の洗濯岩

雨が上がったばかりだからか、風が強くて、足元からあおられます。
帽子は飛ばされる前に、バッグにしまい込みます。
ごうごうと高い波が、しぶきを上げて岸に打ち付けられます。


鬼の洗濯岩は、相変わらず広々として、端まで行くのも大変。
洗いがいがありそうです。


こういった岩がずっと並んでいるのが、鬼の洗濯岩。
長い年月をかけて海底が隆起し、砂岩と泥岩が積み重なってできた砂岩泥岩互層です。


正式名称は「青島の隆起海床と奇形波蝕痕」。
天然記念物として登録されている、よそでは見ない独特の波状岩地質になっています。

 ● 青島神社

以前にも訪れたことがある青島。
島全体が聖域となっている緑深い南国の神社の印象は強く、いつか再訪したいと思っていました。


青島に渡り、ジャングルのような鬱蒼とした神社の境内に入りました。
現実感が薄れる、独特の雰囲気に包まれた場所です。


深い緑に囲まれた中に、ひっそりと神社が鎮座しています。
ここには「海幸彦山幸彦」伝説の彦火火出見命(山幸彦の方)とその妃神の豊玉姫命が祀られています。


黄色いパチンコ台のようなものを見つけました。
ピンボールかなと思ったら、これはれっきとしたおみくじ。
御魂神事です。どうやるのかしら?
自分と共鳴した運魂を投げて、運魂を占うそうですが・・・はてさて??


前に訪れた時に拝受されたしあわせお守りが、今もちゃんとありました。


青島にいる間に正午の12時になり、町の放送が流れました。
ただ、そのメロディが「エーデルワイス」だったことに、なんだか違和感を感じます。
だってここ、まったく、かけらもスイスっぽくないんですもの。

南国っぽく「レロンレロンシンタ」とかを流してほしいわ~。
♪ パパイヤの木が 風に揺れて おいでおいで~ ♪
そうそう、そんな感じ。


● 荷台付きバス

ふたたびバスに乗ると、今度のバスは空いていました。
青島で、入れ替わりに大勢の観光客が降りていったためでしょうか。
バスの中では、大きな荷物置き場が幅を利かせています。
渋滞ラッシュが起こる都心のバスでは考えられない、大胆なスペースの使い方。
おそらく、大きなトランクを持った観光客が多いからでしょう。



バスは海岸線沿いに走ります。
多少雲が厚めですが、時折青空が顔をのぞかせます。


● 堀切峠

バスは坂をどんどん上っていき、見晴らしがよい場所までやってきました。
日南海岸の絶景が一望できる、堀切峠です。

宮崎県の木は、このフェニックス。

 

青島だけでなく、ところどころに鬼の洗濯岩っぽい場所が見えます。
ところで鬼は、洗った服をどこに乾かすんでしょう?
ワイルドに、そのまま着ちゃうのかな?


こちらのアジサイは色鮮やかできれいなですね。
梅雨の季節の旅行は、雨が降らないかと心配ですが、6月にはあちこちで大輪のアジサイが歓迎してくれるのがうれしいところです。


その2に続きます。

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