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WSJ-米企業が国内に維持する巨額の「海外」資金

2013年01月23日 21時31分32秒 | 社会経済

 (ウォール・ストリート・ジャーナル)米企業が期限を設けずに海外に投資している推定1兆7000億ドルの資金
をめぐって、おかしな状況がある。その多くが実際は国内にとどまっているのだ。

 グーグル(Nasdaq:GOOG)やマイクロソフト(Nasdaq:MSFT)、データストレージ(外部記憶装置)関連機器大手E
MC(NYSE:EMC)を含むこうした企業は、海外関連会社の保有する現金の4分の3以上を米銀や米ドル、米国債、米社
債に向けている、と企業の現金ポジションに詳しい関係者は述べた。

 法律上や米国税庁、企業幹部の観点からは、こうした資金は海外にある。米国の親会社へと還流されないかぎ
り、米国はこれを徴税対象としない。一方、米銀口座や米国債にあるかぎり、潜在的リスクを伴う海外投資と比
較して安全となる。

 会計上、資金の場所はささいな問題にとどまり得る。しかし、法人税改革をめぐる異論の多い議論の両側にい
る人々にとって、この状況は、企業が利益を米国税から覆い隠すために講じるゲーム意味論、法的複雑性、非効
率な企業金融方式を奨励する規則の不条理さを象徴するものとなっている。

 米国最大級の企業が蓄積する現金は、今後数週間にわたる10-12月期、2012年度の決算発表において新たに注
目の的となる見込み。22日の発表にも手元資金が前年同期の446億ドルから481億ドルに増加したグーグルの詳報
に加えて、ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)(NYSE:JNJ)や米化学大手デュポン(NYSE:DD)が決算発表を行
った。

 こうした資金の多くが米国にあるという事実はまた、企業が海外で得た資金を自国に還流する際に税救済を求
める上での、「米経済の利益のために投資できる資金が海外に漂っている」という主張の中心にある、と税専門
家や議員らはいう。

 南カリフォルニア大学グールドロースクールの教授で、米下院税制委員会の元委員長のエドワード・クライン
バード氏は、企業の余剰現金について、「金のコインで保有され、ルンペルシュチルツヒェン(グリム童話に登
場するこびと)が守っている」手の届かないものだという誤解があると述べた。

 「それが米ドル資産であれば、最終的には何らかの形で米国経済にあるということを意味する」と同氏は付け
加えた。「一方、企業の株主の手元にはない」。

 米国は主要国経済の中で国内企業の利益がどこで得られているかにかかわらず、税当局がその一部の徴収を主
張する唯一の国だ。しかし、資金が経常的に海外に投資されているとの宣言を伴えば、監査法人は海外利益を納
税対象に計上しなくても良い。その利点といえば、米企業に利益の大半を海外で稼ぎ、これを海外部門の手元に
維持するための動機が強く働くことにある。

 最近、米証券取引委員会(SEC)は企業にこうした資金が米国の親会社に送金された場合に支払う税額を開示
するよう促した。この構想は、資金を還流した場合にどれだけの現金があるかを株主がより把握できるようにす
るためのもの。

 米企業は議会に現行の法人税制から国内利益のみを徴税対象とするものへ切り替えるようロビイングしている
。さもなくば、還流利益について現行の法人税率35%を下回る税率であればこれを受け入れ、資金を配当支払い
や自社株買いなど米国での用途に充てる意向をもつ向きもある。

 当局報告書によると、EMCの9月末の手元資金106億ドルのうち海外保有資金は51億ドルだった。一方、物理的
にはこうした海外利益の75%強は米国や米国投資に向けられたことを2011年の上院報告書は示し、同社もこの数
値を認めた。

 「米企業の海外関連会社が利益を米ドル建て投資対象に再投資する主因の1つは、外国為替差損による変動を
回避することにある」とEMCの広報担当者、レスリー・オグロドニック氏は同社の手元資金をめぐる質問状への電
子メールの回答で述べた。

 EMCのみではない。マイクロソフトの手元現金580億ドルのうち93%前後は米国債、米社債、米モーゲージ債に
投じられていることをSEC報告書は示す。この大半は米国内の口座にある、と事情に詳しい関係者は述べた。合計
すると、マイクロソフトの現金は666億ドルにのぼることを報告書は示す。

 マイクロソフトの海外部門が保有する資金は「海外管轄に経常的に再投資されるものとみなされる」と同社は
報告書で述べた。「現在、われわれはこうした資金を還流する必要性を見いだしていない」。

 またグーグルが10月の報告書で国外に「経常的に再投資する」計画だと宣言した現金や投資分291億ドルの大
半は米国内の口座や投資対象に充てられている。上院報告書によると、ソフトウエア大手オラクル(Nasdaq:ORCL
)の海外利益の大半についても同様の状況にある。

 

 「米企業であれば、為替リスクにさらされるよりはドルにとどめる動機を持つことになる」とCBSの元最高財務
責任者(CFO)、フレドリック・レイノルズ氏は語った。利益見通しについて、「為替による打撃を受けることで
これをミスすることを望むCFOなどいない」。

 米企業の海外関連会社はしばしば巨額の米ドル建て口座をアイルランドやケイマン諸島、シンガポールなどの
タックスヘイブン(租税回避地)に持っている。しかし口座はどこで開設しようとも最終的には米口座である。
外国の銀行は通常、米国のいわゆる代理銀行にドル預金を保有している。

 「残高は米国内にあるが、米国外からコントロールされている」とフィラデルフィアの化学会社FMC(NYSE:FM
C)の財務担当幹部で米企業財務担当者協会の会長を務めるトーマス・ディアス氏は述べた。

 監査法人やSECは、企業はその関連会社が将来的に海外利益の一部を米親会社に支払うリスクについて、徴税
の可能性をふまえるよう見込んでいる。しかし、この可能性に対応する企業は少ない。

 これを迂回(うかい)することは簡単だ。CFOや財務担当など企業幹部は企業の監査法人に資金は経常的または
期限を設けずに海外に投資されると宣言すれば良い。監査法人は通常、企業の態度が一貫しており、海外投資に
充てられた資金を再三にわたり還流しないかぎりはこうした宣言に異議を唱えない、と金融専門家らはいう。

 資金を正式に海外に向けない理由は少ない。海外市場は多くの米企業にとって最高の成長性をもたらすほか、
資金は当地での工場建設や新製品開発、買収に必要となる。さらに、企業は税負担を受け入れる覚悟ができたら
瞬間的に指示を変更できる。複合企業ユナイテッド・テクノロジーズ(UTC)(NYSE:UTX)の例では、外国関連会社
の保有していたこうした「経常的に」再投資された資金40億ドルを昨年のグッドリッチの買収資金の一部に充て
た。

 企業は、米法人税率はあまりに高いため、必要以上の現金を持ち帰ることは財務上意味をなさないと述べる。
こうした資金の大半が自国にあり、米銀の融資用資金としてある一方、企業は配当や自社株買いを通じた株主へ
の分配など自由にこれを利用できるわけではないと主張する。

 多くの企業幹部らは依然として法人税制の包括的見直しに期待を寄せている。議会がこの件を取り上げる場合
、米企業が海外で稼ぐ利益についてどのように徴税するかは前面かつ中心に位置付けられることになる。課題は
、企業が当局の手の及ばないところに年間推定3000億ドルを充てるよりも税金を支払うことを選ぶよう、低税率
を定め、税収を増やす制度を導き出すことにある。

 上院の行政監察小委員会は11年にこの件について調査し、海外利益にかかる一時的税控除の必要はないと結論
づけた。「こうした資金が米国にあることは、未分配の累積海外利益が海外に『捕らわれている』との主張の土
台を覆すもの」と委員会は報告した。

 それでも、還流問題は企業の資本構造にひずみをもたらしていると運用資産約160億ドルのマディソン・イン
ベストメントアドバイザーズのアナリスト、アラン・シェパード氏は語った。中には現金を還流すれば負債を縮
小できるものを税制のために見送る企業もある、と同氏は述べた。「そしてお金は実質的に道のすぐ向こう側に
ある」。
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