トヨタ自動車が9日に発表した世界計639万台のリコール(回収・無償修理)は、世界の自動車業界で進む生産工程の近代化はリスクと利点が紙一重であることを浮き彫りにしている。
資本集約的な自動車業界では、量販車メーカーが異なる車種間で部品の共通化を進めることによって生産の拡大・簡略化に成功してきた。そのためにはサプライチェーンを簡略化して、取引先を少数の大手サプライヤーに絞る必要もあった。
ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)では今後数年以内に、40以上の小・中型車で融通性の高い車台が使われる予定だ。経営コンサルティング会社アリックス・パートナーズによると、こうした共通車台で生産さ
れる車は2018年までに業界の成長の90%近くを生み出すと予想されている。
こうした部品の共通化によって、メーカーは一歩間違うと苦境に陥りかねない。
トヨタは世界中で大規模リコールを実施する理由として、数種類のモデルに使用されている複数の部品に安全
性の問題があるためと説明した。
・欠陥が見つかったのは、座席レール、エアバッグに接続されたケーブル、エンジンの始動モーター、ステアリ
ングコラム固定用ブラケット、フロントガラスのワイパーモーター。
・エアバッグに取り付けられているスパイラルケーブルの不具合だけでも、リコール対象車は全世界で350万台
(うち北米は167万台)。
・座席レールの不具合ではリコール対象車は232万台(同67万台)。
・リコール対象車種は、スポーツタイプ多目的車(SUV)の「RAV4」、「ハイランダー」、セダンの「カローラ
」、小型車の「ヤリス(日本名ヴィッツ)」など。
今回のリコールは、2012年に発表したもの(740万台)より規模が小さい。だが、大手メーカーの間では複数
の国に及ぶ大規模なリコールが相次いでいる。米フォード・モーターは自動速度制御装置のスイッチの不具合で
、09年まで8回にわたり計1600万台のリコールを実施した。今年に入ってからは、米ゼネラル・モーターズ(GM)が「シボレー・コバルト」の点火スイッチの不具合を理由に260万台をリコール。それとは別にステアリングシステムの問題で150万台をリコールしている。
GMとトヨタがすでに実感しているように、こうした大規模なリコールは消費者とブランドに直接影響を与える
だけにとどまらない。米議会はGMで点火スイッチの問題が見過ごされた原因を追究している。また米司法省は先月、安全性をめぐる情報開示に問題があったとして、トヨタに12億ドル(約1220億円)の制裁金を科した。
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