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ringoのつぶやき

音楽、ガーデニング、株、社会経済政治、etc・・・・日常の色々なことを書きたいと思います。

投資ノウハウを自分のものにするためには?

2012年08月08日 22時54分24秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)上昇中に買うことのメリットとデメリットを整理する。
2)「なぜ?」や「どうして?」の部分を考えることが重要。
3)株式市場が上昇しても、期待で買っている投資家が多いわけではない。

◆上昇中に買う手法のメリットとデメリット

本日は海外市場の上昇と円安傾向を背景にして、日経平均が大幅続伸し、8900円台を回復しています。9000円の大台回復も意識される水準まで上昇してきました。

株式市場の動きを見て、「ようやく株を買える環境になった」と感じる方や「上昇トレンドになったから、買ってもよい」と考える方がいるのではないかと思います。また、心理的に「なんとなく買いたくなってきた人」のいるかもしれません。

しかしながら、ケンミレでは上昇中は買わないで持ち株を売り、大きく下落したときだけ買うことをお勧めしています。

どうしてなのかを説明する前に、まずは上昇中に買うという投資手法のメリットとデメリットを簡単に整理します。

●メリット

(1)上昇の勢いが続くことがあるため、短期で結果がでやすい。
(2)上昇して買いやすいときのために、心理的なプレッシャーが少ない。

●デメリット

(1)上昇の反動で下がったときには下落率が大きくなる。
(2)最悪の場合には、高値つかみになってしまう。

単純にいえば、心理的に買いやすくて短期で儲かりやすいといえるが、大きな損もしやすい方法ということです。一般的な個人投資家はこの方法をとっているために、どこかで高値つかみになってしまい、大きな損をしてトータルで負けている可能性が高いと考えられます。

ケンミレの株式投資の前提は、「初心者や投資に詳しくない人でも、投資で失敗しない手法」です。したがって、株式投資でほとんどの投資家が負けているといわれていて、ほとんどの投資家が使っている投資手法が「高値つかみ」になりやすく、「大きな損」になる可能性がある方法であるのなら、初心者や投資に詳しくない人にはお勧めできる投資手法ではないということになります。まずは「上昇中に買わない」ということを徹底してもらい、投資で負けない心構えをマスターすることが最初のステップであると考えています。

◆投資ノウハウを自分のものにする方法

インターネット上にはいろいろな投資のノウハウがありますが、やり方だけが先行していて「なぜ?」「どうして?」がないものもあります。

「こうすればよい」という手順を教えてくれれば楽なのですが、手順だけを暗記するようなやり方ですと、自分で考える部分がまったくない状態になってしまいます。そうなると、応用が効かなくなりますし、臨機応変に対応できなくなってしまいます。

特に株式投資は、絶対に間違いない方法というものが存在しない世界です。「なぜ?」や「どうして?」の部分を考えるようにすれば、投資ノウハウをヒントにして、自分で実践できる投資法にできると思います。

ケンミレ会員の方で、「どうやって勝ち組になれたのか?」のインタビューができました。ぜひ勝ち組になれたストーリーを参考にしていただき、ひとりでも多くの方が自分で考えることができる投資の勝ち組になって欲しいと思います。

ケンミレ投資家に聞く 勝つためのコツはコチラです>>

◆株式市場はどうして上昇しているのか?

株式市場が上昇すると、「先行きに期待して買っている投資家が多い」と感じるでしょう。長い期間のトレンドで緩やかに上昇していれば、このような状況であることが多いといえます。しかしながら、短期の動きでは必ずしもそうならないことがあります。

株式市場では「先行きを悲観して売っている投資家」もいます。下がったときに利ザヤを稼ぐ「空売り」をしている投資家ということになりますが、空売りしている投資家は、株式市場が上がってしまうと困るので、「損を覚悟で上昇中の高値を買う」ことになります。

本日の株式市場では、先行きが懸念されて大きく下がっていた海運、精密、非鉄、鉄鋼、ガラス土石などの景気敏感株の上昇が目立っています。いいかえますと、「先行きを悲観して売りたい銘柄群」が上昇しているといえます。つまり、空売りしたい銘柄群が買い戻しで上昇している可能性が高いと考えられます。

また、今週末にオプションと日経ミニのSQを控えていることから、日経先物にも買い戻しが入りやすい状況と考えることができます。

どうして買い戻しが中心と考えるのかといいますと、売買代金の低迷が続いていて、増加傾向が見られないからです。

▼8月の売買代金の推移

8/7 8240億円
8/6 8363億円
8/3 9431億円
8/2 1兆85億円
8/1 1兆88億円

「先行きに期待して買っている投資家が多い」状態で上昇しているのであれば売買代金が増えるはずですが、そういった傾向は見られていません。日経平均の上昇だけを見ると先行きが良くなるような錯角をしてしまいますが、やむなく買い戻している投資家による上昇の場合もあります。

どちらにしても上昇中に買うのは「下がったときのリスク」をしっかり管理する必要がある投資方法ですから、「なんとなく買いたくなった」という気持ちだけで売買しそうになっているのであれば、いったん冷静になることをお勧めします。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


EFSF(いーえふえすえふ)/ESM(いーえすえむ)とは(いーえふえすえふ)

2012年08月07日 14時20分24秒 | ケンミレコラム

 

始めから難しいことにチャレンジしなくても大丈夫!株式用語を普通の言葉で説明します。

まずはざっくり

EFSFとは"European Financial Stablity Facility"の略称で、日本では「欧州金融安定基金」とも呼ばれています。

最近の欧州危機でも度々登場しています。
(EFSFとかESFM、ESM、ECB、IMFとか、ほんとにややこしいですよね。「違いがワカラナイ!」と思ってもしょうがないと思います。)

さて、その発足は2010年のギリシャ危機。
財政危機が他の欧州諸国に飛び火した場合に備えて、欧州連合加盟国27カ国の合意で発足しました。

本部は、ドイツとベルギーとフランスに挟まれた小国、ルクセンブルグです。

これだけは覚えよう!

■ EFSFの基金の目的は?

欧州諸国の救済(資金支援)が目的です。
お金を貸す対象は、EFSFに出資しているユーロ加盟国の17カ国です。

EFSF融資実績

2010年 4月 ギリシャ
2010年11月 アイルランド
2011年 4月 ポルトガル


■ 基金の総額(融資拠出限度額)

EFSFは、最大7500億ユーロのお金を用意しています。
しかし、この総額はEFSFが単体で用意するものではなく、内訳はESFM(欧州安定化システム)から最大600億ユーロ、IMF(国際通貨基金)から最大2500億ユーロが拠出されることになっています。EFSF単体では、4400億ユーロです。

*ちなみに2012年半ばから、EFSFとEFSMは、ESMに引き継がれる計画があります。(ややこしいですもんね・・・)

ですので、ニュースには既にESMと出てきます。
*EFSMも困った国に資金支援することは同じです。EFSMはユーロ加盟国の27カ国が対象です。EFSFの対象はユーロ加盟国の17カ国です。

■基金のお金はどこから?

ユーロ加盟国17カ国がEFSFに出資金を出します。その出資金の割合は、欧州中央銀行(ECB)への出資比率(*1)に応じて違います。(資本金への出資率)。EFSFへの出資の仕方は各国政府の保証付き債券を発行し、資金を調達します。

ECBの資本金における負担割合上位5位(*1)
1位 ドイツ
2位 イギリス(非ユーロ加盟国)
3位 フランス
4位 イタリア
5位 スペイン

となっています。

もうひと頑張り!

欧州危機の原因になっているのは、イタリアとスペインとギリシャです。EFSFに出資割合の多い国が2つ入っています。もちろん、お金を貸すEFSF側は厳しい審査をしなければなりません。

この財政危機問題が解決しないで最も困るのは問題の当事国ですが、EFSFに多くの資金を出資しているドイツ、フランスも同時に多くのお金を失うリスクを抱えることになります。ドイツ自体は健全な国ですし、EFSFに多く出資しているにも関わらず、他国の問題で自国が傷つく可能性があります。つまり、EFSFが融資しなければユーロ加盟国全体が共倒れの危機にさらされる可能性もあるということですので、EFSFには厳しい判断が求められています。

そして既に、合計7500億ユーロの融資限度のお金から、3カ国に約2600億ユーロ融資をおこないました。今後、スペインとイタリアが要請したい財政支援金の予想額は、7500億ユーロより大きな額(約2倍とも)と言われています。

EFSMの融資枠が、欧州危機に対応できるのか不安視されています!!!


もしも円安トレンドになるのなら?

2012年08月02日 23時18分08秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)FOMCでは追加緩和策が見送られた。
2)円高の悪影響は、業績面と需給面でダブルパンチの悪材料。
3)円高で売られれば、円安になったときの反動高が大きくなる。

◆FOMCで追加緩和策を見送り

昨日の米国市場では、連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、追加緩和策を見送ることになったため、期待が後退する格好でNYダウは3日続落となりました。

ただし、追加緩和については9月のFOMC(12日~13日開催)で実施されるだろうとの見方が大勢でしたので、市場予想通りの見送りでした。

一方で、連邦準備制度理事会(FRB)は、米国の景気が「いくらか減速した」というコメントを出しており、「緩やかに拡大してきた」といっていた6月の景気判断を修正していますので、追加緩和期待よりもFRBの景気認識を引き下げたことの方が、投資家心理をやや弱気に傾けたと考えられます。

3日続落となったのですが、今年の高値に近いNYダウのチャートの傾向を見る限り、投資家はまだ米国景気に楽観的な見方の方が強いと考えられます。

ただし、景気や企業業績が減速するという見通しがあれば、今年何度も上げ止まっている13300ドルの水準は強い抵抗ラインとなる可能性が高く、米国市場が調整することも想定しておいた方がよいと考えられます。

◆円高の悪影響

為替市場では、追加緩和策の見送りがドルの買い戻しにつながりました。しかしながら、前述したように市場でそれほど期待されていたわけではないと考えられますので、一気にドル高が進んだということではありませんでした。

今週末には、為替市場の大きな材料になる雇用統計が発表されますので、この結果を受けてドルの方向性が出てくるかもしれません。

朝方買い先行となった本日の国内株式市場の動きを見ても、国内市場にとって円高傾向がどうなるかが大きなカギを握っていると考えられます。

決算発表で輸出企業の下方修正が目立っており、対ドル、対ユーロともに円高になっていることが企業の利益を押し下げている面がありますから、企業収益の悪材料として円高を認識している投資家が多いといえます。

しかしながら、企業収益だけではなく、円高になると運用面の需給を悪くするという構造的な問題があります。世界の株式を一定の割合で持ってインデックスとして運用する場合、資産をドルベースで計算することがほとんどのため、円高になると「株が上がらなくても日本株の割合が増える」ことになります。


たとえば、100万ドルの資金を世界の株式市場で運用するときに、米国50%、欧州30%、日本20%に振り分ける戦略を立てたとします。

米国株50万ドル、欧州株30万ドル、日本株20万ドルでスタートして、株価がまったく動かず、円がドル、ユーロに対して10%上昇したとします。

そうするとドルベースの資産は、米国株50万ドル、欧州株30万ドル 日本株22万ドルになります。

資金割合を変更しないのであれば、日本株だけ割合をオーバーしていますので、2万ドル分の日本株を売る必要が出てきます。この売却分は、景気動向などを予想しているのではなく、最初に決めた投資割合のルールに基づいたことですので、あくまでも機械的に売却されます。

上記は、ドルベースの日経平均にNYダウと円ベースの日経平均を上書きしたチャートです。ドルベースの日経平均は、出遅れ感の強い円ベースの日経平均ほどはNYダウと離れていないことがわかります。

円が1ドル=90円を突破して、1ドル=90円割れが定着したのが2010年の夏ごろからでしたので、そこあたりから円建ての日経平均の出遅れが目立ちはじめています。

外国人投資家が約7割を占めている国内市場にとって、世界の株式市場で運用する資金の影響はとても大きいことが想定されます。円高の影響で、業績見通しから日本株割合を引き下げた運用会社もあると思いますから、業績面と需給面でダブルパンチの悪材料になります。

◆もしも円安トレンドになるのなら?

9月のFOMCで追加緩和策が期待されているので、短期的にはドル売り傾向が続く可能性はあります。ただし、緩和期待が為替市場の材料になっているように、もしも円安トレンドが起きるとするのであれば、米国の金利が上昇しはじめればよいということになります。

世界的に金融緩和が起きていますが、慢性的なゼロ金利政策になっている日本と最近になってゼロ金利政策になった米国を比較すると、金利の下がる割合が米国の方が大きかったので、円安にならない環境が続いていると考えられます。

では反対に、米国と日本で景気が回復しやすいのはどちらかといえば、円高の影響を受けて疲弊している日本よりも、もともと景気が良かった米国である可能性が高いのではないかと思います。したがって、日本よりも先に米国の金利が正常化しやすいと考えられます。

米国の方が金利の戻る割合が高くなった場合に円安になりやすい環境になるということなので、結局は米国景気が回復しないと円安になりにくいということなのですが、もしも米国の景気回復の動きが出てくるようだと、日本株のパフォーマンスがよくなる可能性も考えることができます。

もちろん、かなり楽観的なシナリオですし、先を見たシナリオですが、目先的に何十年来の安値まで下がった輸出関連株を見ますと、もしも円安トレンドになった場合には反動の上昇が大きくなるという期待もあります。別の視点で考えますと、これから買う投資家にとって「宝の山」になる可能性もゼロではないと思われます。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


外国人投資家と移動平均線の傾向

2012年07月31日 15時20分32秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)日経平均が移動平均線に近づき、戻り売りが出やすい環境になった。
2)外国人投資家の傾向は、はっきりしていない。
3)重要イベントや決算を控えているので、現金化を優先する。

◆移動平均線が意識される展開か?

本日の株式市場は、朝型は安く始まったものの、円高一服やアジア株高で買い安心感が広がったようで、日経平均がプラスに転じる動きとなりました。このままプラスを保てば、4日続伸となる展開です。

ただし、日経平均の上値を抑えていた25日移動平均線に近づいてきたことから、4日続伸とあわせますと、いったんはリバウンドが一巡する可能性も出ています。

移動平均線は過去の終値を平均した単純な指標ですが、株価のトレンド(傾向)を示す指標として、ほとんどのチャートに表示されているものです。基本的な使い方は、株価と移動平均線との位置関係でトレンドが上向きか下向きかの判断に使われます。

移動平均線は、終値の平均で計算されますので、株価に遅れて動く指標です。株価が常に先行して動きますので、移動平均線よりも株価が高いと上昇傾向、移動平均線よりも株価が低いと下落傾向と判断することが基本になります。

そして、もうひとつは「過去の買い値の平均」と考えることができる指標です。終値の平均ということは「買いコストの平均」と置き換えることができますので、25日移動平均線であれば過去25営業日に買った投資家の平均コストと考えられます。

日経平均が続伸して25日移動平均線に近づいたということは、過去1ヶ月程度に買った投資家が売れるくらいまでは戻ったといえます。つまり、戻り売りが出やすくなることが考えられますので、株価が抵抗しやすくなるといえます。

加えて現在の日経平均は、75日移動平均線も近づいています。したがって、移動平均線と株価の関係から考えますと、抵抗しやすい価格帯まで戻ったといえますので、抵抗しそうなことがわかっているのでに買うのは、あまり賢い戦略とはいえません。

◆方向感のない外国人投資家

もちろん、高値を買う材料があれば、移動平均線を突破して高値を目指す展開になる可能性はあります。そこで、高値を買う可能性がある外国人投資家の動向をチェックしますと、ほとんど傾向が出ていないことがわかります。

先週、東京証券取引所から発表された7月第3週(7月17日―7月20日)の投資主体別売買動向によると、外国人投資家は364億円の売り越しとなり、4週連続の売り越しとなっています。

ただし、過去と比較しますと、ユーロ不安が表面化した時期よりも売り越し額が目立っているわけではなく、売っているというよりは買っていないという印象を受けます。

4日続伸して全体に下値不安が後退してきますと、株を買ってみたくなるところですが、今週はECB理事会とFOMCの金融イベント、ISM景気指数と雇用統計の経済指標の発表をを控えていますし、あわせて国内決算がまだまだ発表されます。買うのを待てないで失敗している方は、こういうときこそガマンの場面です。

また、6月以降の相場は上昇が短かく、下がりだしてからが早かったので、底値圏でうまく買えても利益確定の売りタイミングを逃してしまった方もいると思います。売り損なった株や日経先物があるなら、いったんは現金化して、次の相場に備える安全策を取ることが有効だと思います。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


決算シーズンを迎えた個人投資家の心構え

2012年07月27日 22時41分18秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)決算発表をきっかけに、好業績銘柄が急落した。
2)好決算銘柄は、期待が高いので反動も大きい。
3)個人投資家なら、無理に決算予想で投資しないで、別のやり方をすればよい。

◆ドラギ発言で反発

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が「あらゆる手段を尽くす用意がある」と発言したことで、欧米株式市場が急上昇となりました。これを受けて国内市場も大幅続伸となり、日経平均は8500円台を回復する展開になっています。

上昇転換に期待したいところではありますが、チャート上では、短期的な売られ過ぎのリバウンド状況と考えられます。

ポイントは移動平均線の角度で、25日、75日ともに下向きになっていることから、上昇トレンドに転換するためには、時間がかかる可能性があります。加えて決算発表が始まったばかりのため、決算がひとまわりするまでは短期資金中心の相場展開になる可能性もありと思われます。

◆決算発表で急落した「良い銘柄」

昨日、キヤノンが決算発表をきっかけにして急落しましたが、本日は東証マザーズ市場のサイバーエージェントが決算発表でストップ安売り気配になっています。

同社は新興市場の銘柄ではあるものの、マザーズ市場の時価総額でダントツのトップであり、東証一部の古河電工や住友大阪セメントなどの有名な会社よりも時価総額が大きな会社ですので、株式市場全体にも影響を与える銘柄といえます。

そして、両者に共通しているのは「発表されている業績が良かった」という点です。

四季報のコメントを見ますと、「増益」「増額」「増益幅拡大」「増配」「最高益連続更新」といった魅力的なことばが並んでいます。コメントを見て判断するなら、業績面で安心できる銘柄になりますが、両者ともに今回の決算発表で増益幅が小さくなったために急落しています。

個人投資家が業績が良いという判断は、四季報などのすでに発表されている情報をもとに判断していると思います。しかしながら、個人投資家が業績が良いと判断できる銘柄であれば、市場に参加している投資家がみんな知っている材料ですから、すでに株価が反応しているはずです。

業績が良いから株価が上がるのではなく、将来の業績と今の業績と比較して、今の方が安いから株価が上がります。四季報などに出ているコメントは「将来ではなく過去」のため、株価を大きく動かす材料とはいえません。

将来の業績と比較する投資方法を「グロース投資」と呼びます。株価がこれから上昇するかどうかを「将来の企業業績やその銘柄に関するニュースを調査する」ことによって「今の株価が将来の株価に比べて割安か?」を判断する方法です。

オーソドックスな考え方なので、「株式投資=グロース投資」と考えている方が多いと思います。ただし、グロース投資の最大の欠点は「将来のことは誰にもはっきりと分からない」ということです。

◆決算シーズンを迎えた個人投資家の心構え

キヤノンもサイバーエージェントも好業績だったために、「将来を期待して買っている投資家も多かった」と考えられます。そうなると、失望されたときの反動も大きくなるといえますから、誰が見ても業績が良い銘柄ほど、将来の期待も高くなり、期待に届かなかったときには反動が大きくなるリスクがあるといえます。

四季報に好業績と書いてあるのを知っているのは自分だけではありません。すでにみんなが見ていますので、わかっていることには投資家が対応しています。

おそらく、キヤノンもサイバーも優良銘柄だったために、投資信託など運用者が買って大きな損を出して売った分も多かったと思われます。つまり、個別銘柄の業績を予想して投資することは、プロや専門家でも難しいやり方といえます。

個人投資家が資産活用でお金を殖やす目的ならば、個別業績の予想をする必要がいらない日経先物を対象にする、業績に関係なく反発する株式市場の大きな下げを待つ、決算発表中は売買しないなど、個別銘柄のグロース投資をしないでも、自分が出来るやり方を選べばよいと思います。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


年初来安値が抵抗ラインにならない根拠

2012年07月25日 22時05分08秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)代表的な株価指数が年初来安値に近づく。
2)高値や安値は抵抗ラインになりやすい。
3)下落トレンド中は安値を更新するので、年初来安値を割りこんでからが勝負。

◆日経平均、TOPIXが年初来安値に近づく

日経平均が8400円を前場で割り込みました。日経平均の年初来安値は6月4日につけた8238円(ザラ場べース)ですので、「あと100円程度」まで下がってきました。

TOPIXの年初来安値は6月4日につけた692P(ザラ場べース)ですので、本日前場安値の707Pから計算しますと「あと15P」になります。

東証一部の代表的な指数があと2%程度下がると年初来安値になる水準になってきたということになります。

株を売買しようと思った場合、投資家は買い値や売り値を決めるときの目安を探します。その代表的なものが「過去の高値や安値」です。高値や安値はチャートを見れば誰でも確認できますので、すべての投資家の判断材料として共通ですから、株価も抵抗しやすいと考えられます。

たくさんの投資家が動けば動くほど、抵抗する力が増えますから、チャートで印象的な高値や安値は抵抗ラインとして機能しやすいということになります。

もっとも印象に残るのが最高値と最安値です。年間の最安値が年初来安値ですので、代表的な株価指数があと少しで年初来安値に近づいたということは、市場に参加している投資家のほとんどが安値を意識しはじめていると考えられます。

安値を目安にして買おうと思っている心理としては、「最安値までいかないで止まってしまうかもしれない」し、「最安値を割り込んでしまうかもしれない」し、と決断できないと状況だと思います。

ただ、ここまで年初来安値に接近してきますと、下げ止まるのかどうかを確認する投資家の方が多いと思われますので、もう一息というところかもしれません。

◆年初来安値が抵抗ラインにならない根拠

日経平均の8000円近辺、TOPIXの700P近辺は、チャートを見る限りとても強い抵抗ラインと考えられます。しかしながら、「割り込んでくれた方がわかりやすい」と考えています。

なぜなら「長期では緩やかな下落トレンド中」だからです。下落トレンド中は「2回目の抵抗ラインは止まらない」という傾向が強いため、割り込んでくれた方が安心感があると感じています。

上記のチャートは日経平均とTOPIXの週足チャートです。細かい傾向の違いはありますが、両指数ともに2010年から緩やかな下落トレンドになっていることが確認できます。

下落トレンドというのは、時間をかけて安値を更新していく動きです。トレンドが継続する前提であれば、前回までに止まっていた下値抵抗ラインは、いずれ割り込んでしまうといえます。

もちろん、トレンドが永遠に継続するわけではないので、日経平均の8000円近辺、TOPIXの700P近辺で下げ止まることも考えられるのですが、今回はいったん6月から7月にかけて上昇しているために、一回の下げ幅が足りないのです。

株価が下げ止まる確率を上げるためには、抵抗ラインにあわせて「下げすぎること」が必要です。目先の高値から5%下げ続けたときにある抵抗ラインと、10%下げ続けときにある抵抗ラインでは下げ止まる可能性が違います。今回は前者のケースになっていることと、長期の下落トレンドであることから、強い抵抗ラインでも割り込んだ方が安心感があるという根拠になります。

また、主力株に数年来、数十年来の安値を更新するという動きから考えても、日経平均やTOPIXが年初来安値を割り込む可能性は高いのではないかと思われます。むしろ年初来安値を割り込んでからが転換点投資の勝負どころになると思います。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


11年ぶりのユーロ安で全面安した株式市場は買いなのか?

2012年07月23日 16時23分09秒 | ケンミレコラム
■今回のまとめ

1)ユーロ/円相場が11年8ヶ月ぶりの安値となった。
2)輸出企業を中心に年初来安値銘柄が続出。
3)中途半端な下げで止まるよりも安値を試す可能性があるので、シグナル点灯を待つ。

 

◆ユーロ/円相場が11年8ヶ月ぶりの安値

 

スペインの財政問題がクローズアップされてユーロ売りが進み、1ユーロ=95円を割り込みました。ユーロ/円相場は約11年8ヶ月ぶりの安値までユーロ安、円高が進んでいます。

 

 

ユーロ売りのきっかけになったスペインの財政問題では、スペインのバレンシア州が中央政府に財政支援を求めるという地方政府の財政難が表面化したこと、スペイン政府が2013年の経済予測を下方修正したことが、スペイン国債売りにつながりました。

 

スペインの救済として銀行支援が対策として出ていましたが、今回の報道で銀行救済だけでは終わらず、全面的は支援が必要になるという投資家の認識になったと考えられます。スペイン国債利回りはユーロ導入以来の高利回りとなっており、スペインの資金調達がますます厳しくなったといえます。

 

本日の日経平均もユーロ売りに歩調をあわせる格好となり、寄付き直後から100円を超える下げ幅となりました。

 

 

上記は、日経平均にユーロ/円相場を上書きしたチャートです。今年の日経平均はユーロ/円相場との連動性がとても高いことが確認できます。6月に日経平均が安値をつけたときも、ユーロとタイミングも水準もほぼ一緒になっています。

 

そしてユーロが対円で11年8ヶ月ぶりの安値を記録したわけですが、チャートを見てわかるように、6月の安値水準を大きく下回ってしまっています。2つの連動性の高さから考えますと、日経平均が6月安値8238円を割り込むシナリオも想定できるのではないかと思われます。

 

◆年初来安値を更新した銘柄数が急増

 

本日は円高基調によって、輸出企業を中心に年初来安値を更新する銘柄数が195銘柄と続出しました。

 

日経平均が安値を付けた6月4日に、TOPIXでは今年の安値を更新するとともにバブル崩壊後の安値をわずかに更新しています。この日の新安値更新銘柄数が676銘柄でしたので絶対数としてはまだ少ないといえますが、現状でバブル崩壊後の安値を更新している銘柄が目だってきているということになります。

 

 

さらに本日は大引けにかけて一段安となり、日経平均が8500円割れ目前にまでなってきました。短期的には値ごろ感も出やすいタイミングですが、新安値銘柄数の増加とあわせて考えますと、中途半端な水準で止まるというよりは、日経平均、TOPIXともに6月4日の安値を試す可能性の方が高いのではないかと考えられます。

 

したがって、転換点シグナルが点灯する可能性が高まった段階と考えられますので、会員の方は無理をしないで、まずは転換点シグナルが点灯するのを待ち、株式市場の売られ過ぎを示す状態になってから買うかどうかの判断をすればよいと思います。

 

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


個人投資家が株式投資で勝てない理由

2012年07月20日 22時52分50秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)株式投資が勝てないのは、長期投資が時代に合っていないから。
2)日本の人口が減っている間は、日本経済は拡大しない。
3)『買って持つ』から『買ったら売る』時代。

◆「株式投資で勝てない理由」を考えたことがありますか?

株式投資では、個人投資家のほとんどが負けているといわれています。どうして負けているのかを考えたときに、「初心者で知識がないから?」「プロに比べて情報が少ないから?」など、個人投資家の「技術面」が取り上げられることが多いと思います。

しかし、実はもっと本質的な問題があります。それは、株式『投資』が時代に合っていないからです。

◆株式投資で勝てない理由は「日本人が減っている」こと

政府が「貯蓄から投資へ」というスローガンを掲げて、2003年から証券優遇税制がスタートしました。株式市場の低迷もあって延長が続いていましたが、来年の2013年末には終了する予定になっています。

政府のスローガンにある「貯蓄から投資へ」の意味は、お金を貯金しておくのではなく、「株式を保有しよう」ということです。いいかえれば、個人株主を増やす政策ともいえますが、株式投資になじみがない人が受ける印象は「投資=長期保有」だと思います。

つまり、株式投資で一般的に受ける印象は、将来有望な会社の株を買い、株主として長期保有して資産を増やすことです。

ところが、長期投資が有効な方法になるのは「経済が拡大しているとき」だからです。短期的に景気が良くなったり、悪くなったりといった景気の波はありましたが、長い目で見れば経済規模が拡大していたのが昔の日本経済です。したがって、株を買って長く持っていれば誰でもお金が殖やせた時代だったといえます。

そういう時代であれば、業績が良くなる企業は多いので、長期で保有して利益をあげる「株式投資」は有効で簡単な資産運用法でした。

しかし、日本社会の構造そのものが変わってしまったので、これから経済規模が拡大する可能性がなくなっています。いちばん大きな問題が「日本の人口減少」です。

厚生労働省が2006年9月に発表した2005年の人口動態統計で、はじめて人口が自然減(年間出生数が年間死亡数を下回る状態)となりました。その後も人口減少が続いています。

●人口が減ることで起きる影響

1.人口が減っているということは、労働力も消費者も減ることなので、GDP(国内総生産)が上がらなくなる。

2.人口の自然減が続くと、少子高齢化も進む。

3.高齢者が増えると、年金などの社会保障制度の先細る。

4.労働人口が減ると税収が落ちて、財政が悪化する。

ざっとあげただけでも現在の日本が抱える問題は「日本人が減る」ということでつながっています。つまり、「経済規模が減少する=株が長期で上がらなくなる」時代になっているということです。

長期投資なら安全性が高く、ほっておけば資産が増えるという時代が終わったということです。個人投資家が考えている従来の株式投資が、実は「もっとも難易度の高い投資法」になっているから、株式投資で勝てないのです。

◆『買って持つ』から『買ったら売る』時代

では、株式投資ではお金が増やせないのかといいますと、そんなことはありません。

株式投資の最大のメリットは「流動性」です。

平日であれば株式市場が開いていますので、ほとんどいつでも売買することが出来ます。しかも、ネット証券を使えば手数料は微々たるものです。いつでも換金できる株式は、「買って売る投資」ではとても有効な投資先です。

先日ソニーが1000円を割り込み、32年ぶりの安値というニュースになりました。本日は、川崎汽船が28年ぶり安値となっています。もし、安定的ににお金を殖やしたいと考えて、「日本を代表する企業なら、いつか上がる大丈夫」と株式投資をしていた人は、ほとんど誰も儲かっていないということです。

過去32年間でソニーを買ってお金を殖やせた人は、「どこかで売った人だけ」ということになります。

ソニー株を投資のつもりで長期保有している人は、おそらくは今でもたくさんいるでしょう。安定的ににお金を殖やしたいと考えた結果の「長期保有のソニー」であるなら、今すぐにでも「長期投資=塩漬け株」の考え方を解消する必要があります。

ケンミレは「財産構築のための株式投資」といっていますが、「買って持つ株式投資」ではなく「買ったら売る株式投資」をお勧めしています。提供している投資手法や投資ソフトなどはいろいろ進化していますが、設立した当初から「株式投資は買ったらなるべく早く売ること」という考え方は変わっていません。

現在の転換点ソフトを使った「転換点投資」は、株式市場全体が下がったときだけ買い、買ったら確実に売るという方法です。日本人口が減って日本経済が拡大しなくなっても、株式市場の上げ下げがなくなることはありませんから、株式投資はお金を増やすために有効な手段になると考えています。

本日の株式市場は、日経平均が下落して7月13日の安値を割り込みました。「買って売る投資」をするためには、株式市場が下がってくれないと始まりませんので、来週以降の相場が面白くなってきたといえます。


LIBOR(ライボー)とは(らいぼー)

2012年07月19日 22時30分36秒 | ケンミレコラム

 

始めから難しいことにチャレンジしなくても大丈夫!株式用語を普通の言葉で説明します。

まずはざっくり

LIBORとは「London Interbank Offered Rate」の頭文字の略称です。
英国のロンドン市場においての銀行間取引の金利のことで「ライボー」と呼ばれます。

このLIBORが決められているロンドン市場は金融街『シティ』という街にあり、2012年のロンドンオリンピック最終日の男子マラソンの舞台でもあります。

LIBORは馴染みのない言葉かもしれませんが、私たちの生活にも密接に関係している金利を決める重要な指標なんです。

これだけは覚えよう!

LIBORは英国銀行協会(BBA)が毎営業日ロンドン時間11時に発表します。

国際金融市場ではLIBORが一般的によく使われます。
LIBORとはロンドンの銀行間取引のうち、銀行間で資金調達をする際の基準金利で資金を貸し出す側が示すレートです。LIBORでは1週間のレートから12ヶ月のレートまで算出されています。

主要銀行から提出された金利レートから最も高い金利と最も低い金利のレートを上下4分の1ずつ省いて残りを平均して算出されたものをLIBORとして公表しています。

実は各銀行は銀行協会に実勢レートを報告する義務はありません。適当なことも言えそうですが、信用力が違う銀行の提出した金利を平均してだすことで銀行の貸し出し金利の実勢値に近づくと考えられており、上記の方法を採用しているようです。

LIBORは国際的な金利の基準となっていますが、ユーロではEULIBOR、日本ならTIBORも一般的ですので一概には言えません。

また円LIBORやドルLIBOR、ユーロLIBORなどもあります。
例えば円LIBORのレートを決める際は日系の銀行が何社か入って決めます。
2012年7月であれば、
三菱東京UFJ、みずほ、三井住友と、海外の銀行、バークレイ、JPモルガン、HSBCなど、大きな金融機関が円LIBORを決定する際の主要銀行となっています。

もうひと頑張り!

LIBORは住宅ローン等の設定の基準として使われる金利で、国際的な短期金利の指標です。金融商品の指標として使われており、企業向け融資やデリバティブ商品、社債、住宅ローン、教育ローン、クレジットカードなどの金利の基準になっています。
例えば企業向け融資は「LIBORの金利に0.8%上乗せ」などと決めたりします。
ちなみに、このLIBORを基準にしている金融商品の金額は世界で約3京円と言われ天文学的数字となっています。

このLIBORの問題点は、銀行が短期の貸出し実勢レートを報告する義務がないところです。
言い換えれば、貸出し金利(LIBOR)が上がれば銀行に入ってくる実入りがよくなりますので、金利を上げる不正行為を働きやすくなることです。

例え0.01%という金利が動いたとしても大きな金額が銀行に入ることになります。(3京円×0.01%=3兆円)これは私たちの生活にも大きな影響を与える大問題となります。

一方で低い金利を申告し銀行の財政状態が良好であるように見せたりもできます。

このLIBORの不正操作に関する問題は、繰り返しニュースになっています。
金額だけで比べれば、国内証券のインサイダー取引の比にならない大きな金額が動きますので、根本的に変えていかなければならない問題の一つとも言えるでしょう。


「とにかく売買したい病」をどうすれば克服できるか?

2012年07月19日 22時24分47秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)投資になれてくると、目的が「売買すること」に変わってきてしまうことがある。
2)相場は動くが、大きく動くことはそんなにない。
3)「大きく儲かりそうなときしかリスクを取らない」と考えるようにすれば、闇雲な売買が少なくなる。

◆TOPIXが10日ぶりに反発

昨日までにTOPIXが3年ぶりに9日続落を記録しました。ただし、9日続落といっても下落率5.5%と大きくなく、大幅調整というほどではない状況です。

TOPIXは時価総額ベースで計算される指標ですので、時価総額の大きな大型株に影響を受ける指標です。その指標が下がり続けたということは、大型株が不振であるということを示しています。

大型株不振の原因は世界景気の後退懸念となりますが、もうひとつの問題が「円高」です。本日の為替市場では1ドル=78円台中盤で取引され、対ドルで約1カ月半ぶりの円高水準になっています。

インテルやIBMの決算が好感されてNYダウやナスダック指数が大きく上昇しても、円高基調が上値を抑えるという図式になっています。今月末にかけて主力銘柄の決算発表を控えていることも、積極的に買えない要因としてあげられます。

◆投資になれてくると陥る「とにかく売買したい病」とは?

結果的にTOPIXは10日ぶりの反発となっていますが、毎日相場を見ていると「そろそろ上がるかな」と考えながら見てしまうのではないかと思います。

連続して下がれば、そろそろ上がると考える人もいれば、まだ下がると考える人もいるでしょう。上昇すればこの反対で、もっと上がると考える人や下がると考える人に見方がわかれるはずです。

相場の動きを見ていると、どうしても次の動きを考えながら見てしまうので、いつでも投資チャンスがあるように感じてしまいます。

特に株式投資が日常的になっていると、「とにかく何か売買したい」という気持ちの方が先行しまいがちです。株式投資の目的が、利益を上げるから「売買すること」に変わってきてしまいます。

株式投資を始めた頃は慎重にやっていたのでそんなに負けなかったのに、だんだん負けるようになってきたと感じるのは、売買に慣れてきたくらいだと思います。そのときに陥るワナが、相場を見ていて起きる「とにかく売買したい病」だと思います。

この段階は、投資を始めたほとんどの方が経験するステップだと思います。投資を始めた最初に運良く勝ち、株式投資が面白くなってきたときに「とにかく何か売買したい病」になり、この段階で大きく負けてしまうと、しばらく投資をしなくなってしまいます。

「とにかく売買したい病」のステップをクリアした投資家が、次のステージである「チャンスだけを待てる投資家」になれます。

◆「とにかく売買したい病」をどうすれば克服できるか?

本当は儲けるためにやっているのに投資することが目的に変わってしまうのは、単純に「上か下か?」の相場の動きを当てたくなるからではないかと思います。

株価は動くので必ずどちらかに動きます。しかしながら少し見方を変えると、「大きく動く」ことはそんなにありません。

つまり「とにかく売買したい病」を克服するのは、「上か下か」で判断するのではなく、「大きく動くかどうか」を判断材料にすればよいということになります。

TOPIXが3年ぶりに9日続落を記録して反発しましたが、そんなに下げ幅が大きくなっていたわけではありません。「山高ければ谷深し、谷深ければ山高し」といわれるように、下がって大きく反発するためにはもっと大きく下がる必要があるということです。

毎日下がっている相場を見ていて、TOPIXが9連敗もすれば、「明日はそろそろ反発する」と判断することもできると思います。しかし「大きく動くかどうか?」を判断基準にすれば、そんなに下がっているわけではないので、「わざわざリスクを取るほどではない」という結論になります。

転換点投資、割安株投資の考え方は、一般的な個人投資家向けに体系化した投資手法です。だから、下がればOKということではなくて、「大きく反発するかどうか?」がとても重要な判断材料になります。

売買するということは、お金が減るかもしれないリスクを取ることです。どうせリスクを取るのなら、「大きく儲かりそうなときしかリスクを取らない」と考えるようにすれば「とにかく売買したい病」を克服できると思います。

投資することが仕事のプロ投資家は、小さい利益を狙ってでもリスクを取らなくてはいけません。一方で、自分の大事なお金を守りながら運用しなくてはいけない個人投資家にとって、この考え方はとても大切なことだと思っています。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


新値銘柄数からわかる高い銘柄と安い銘柄の二極化相場

2012年07月17日 22時25分55秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)新安値銘柄が多いにもかかわらず、日経平均が上昇している。
2)新値銘柄数の傾向から、高い銘柄と安い銘柄が二極化していることがわかる。
3)二極化現象が起きているときには、あせらずに株式市場全体の大きな下げを待った方が安全。

◆新値銘柄数が示す「はっきりしない相場」

3連休明けの国内株式市場は、連休中に海外市場が上昇しているものの円高傾向が重石となり、もみ合いでスタートしました。その後、日経平均はプラス圏を回復して上昇幅を広げましたが、「はっきりしない展開」になっています。

相場の動きがはっきりしないことは「新値銘柄数」が示しています。新値銘柄数とは、安値や高値を更新した銘柄の数を指します。一般的な集計方法は、新年度入りする4月までは昨年来、4月以降は年初来の高値、安値更新銘柄をカウントします。ケンミレでは、4月で集計方法が変わるのはおかしいと考えていますので、いつでも1年3ヶ月(過去15か月)の高値、安値更新銘柄をカウントしたデータ(ケンミレ式)も提供しています。

本日の前場段階ですが、一般式の計算方法で東証一部の「新高値銘柄数が45銘柄」「新安値銘柄が53銘柄」を記録しており、年初来高値更新銘柄が多い一方で、年初来安値更新銘柄も多いという「二極化現象」が起きています。

上記のチャートは、日経平均と新値銘柄数(一般式)を表示したものです。先週末にかけて日経平均が8800円を割り込んだときに、新安値銘柄数が増加しています。そして本日は、新安値銘柄数がさらに増加していますので、ここだけを見れば「株式市場が調整」と考えるのが普通なのですが、日経平均は上昇して、新高値銘柄数も増えています。

つまり、相場の動きがはっきりしないのは、高い銘柄と安い銘柄が両極端であるという意味です。

◆新値銘柄数のチェックポイント

株式市場全体の買われすぎや売られすぎをチェックする指標の1つとして、「新値銘柄数の数の推移」を見ることがあります。たとえば、株式市場の下落が続けば続くほど、「新安値銘柄数」の数をチェックするわけですが、絶対的な数ではなくて、連日増加するという推移がポイントになってきます。

どうして推移なのかといえば、昨日50銘柄が新安値を更新していた場合、本日も株式市場が大幅安となれば、昨日の50銘柄はさらに安値を更新する可能性が高くなります。

そして、昨日には新安値にはなっていなかった銘柄の中で新たに新安値を更新する銘柄が出てくれば、累計の新安値銘柄数が増加することになります。

つまり、新安値銘柄数が大きく増加するということは、それだけ一度にたくさんの銘柄が売られないと起きないことであり、売りが一気に出尽くすタイミングになる可能性として考えられる指標となります。

新高値の場合はこの反対で、連日高値を更新している銘柄がどんどん増えるから、新高値銘柄数が急増するということになります。ただし、株式市場が上昇するときは循環して買われることが多いので、新高値銘柄数の場合は新安値のように「ドン」と増えるよりは、高水準の状態が長く続く傾向があります。

◆新値銘柄数の傾向

本日の新値銘柄数の傾向を業種で見ると、新高値銘柄の上位は「小売業15銘柄、情報通信6銘柄」、新安値銘柄の上位は「電気機器15銘柄、輸送用機器8銘柄」となっています。

輸出型の代表である電機や輸送用機器に年初来安値銘柄が多いのは、世界的な景気後退が警戒されていることを示しているといえますが、一方で高い銘柄と安い銘柄の「二極化現象」が起きているということは、「日経平均で割安なタイミングを取りにくい」ということになります。

上記のチャートは日経平均に短期波動を表示したものですが、直近で日経平均が8700円程度の水準まで下がり、短期下落波動が引かれました。そして、日経平均が本日上昇しているので、いったんは下げ止まる動きを見せています。

しかし、日経平均を株式市場の押し目買いのタイミングにしたとしても、下がっている銘柄がさらに下がり、上がっている銘柄がさらに上がるという傾向があるために、割安だと思って買った銘柄が下がり続けてしまい、うまくタイミングが取れないのではないかと思います。

株式市場全体で割安なタイミングを探すのは、反発したときにほとんどの銘柄が上がるので、買った銘柄が上がる確率を上げるためです。しかし、今の株式市場の傾向では、日経平均の押し目がほとんどの銘柄が上がるという調整ではないので、あまり意味がないという結論になります。

ほとんどの銘柄が上がるような転換点になるためには、新安値銘柄がいっきに増加する必要があります。現在は世界景気に連動する輸出型ばかりが下がっていますので、あせらずに株式市場全体の大きな下げを待った方が安全ということになります。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


どういう動きになったら『転換点シグナル』が点灯するか?

2012年07月12日 19時13分53秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)景気敏感株が重しになって、日経平均が6日続落。
2)4月の下落をあてはめると、8300円くらいでシグナルが出るかもしれない。
3)いつシグナルが点灯してもよいように、心の準備はしておいた方がよい。

◆日経平均が6日続落

本日の日経平均は、寄り付きこそ5日続落の反動で買い戻し先行で始まりましたが、すぐに反落して、直近安値を更新する展開となりました。このままいけば6日続落となりそうです。

テクニカル面では25日移動平均線が下値として意識されて、一旦は抵抗した格好ですが、あっさりと割り込んだ形です。

個別銘柄の傾向も、JFE、三井金属などの資源株、NTN、不二越などの機械株、パイオニア、シャープのなどの電機株、アルプス電気、大日本スクリーンなどの半導体株などが年初来安値を更新しており、景気敏感株が指数を押し下げていることがわかります。

好業績の内需株が買われていますが、株式市場は景気を買うといってもよいので、景気敏感株が上がらないと活気がなくなります。

年初来安値を更新している銘柄群のチャートを見ますと、日経平均も安値を試すのではないかと考えてしまう動きです。

◆転換点シグナルが点灯するなら

日経平均が6日続落で思い出すのが、4月上旬の日経平均7日続落です。結果的に7日続落で止まりましたが、7日続落の最後にカエサルシグナルが点灯していますので、当時の下落相場を今回に当てはめてみます。

●4月上旬の下落相場

3月27日の高値 10255円
4月11日の安値  9458円
※終値ベース

下落率 -7.8%、
下落幅 -797円
日柄   11営業日


今回は7月4日の高値が9104円ですので、

下落率 -7.8%、 → 8393円
下落幅 -797円  → 8307円
日柄   11営業日 → 7月19日

となります。

転換点シグナルが出るかどうかはわかりませんが、転換点シグナルが点灯するくらいの大きな下落のイメージがつくのではないかと思います。

◆サプライズの韓国利下げ

本日、韓国中央銀行が2009年2月以来の利下げをサプライズで発表しています。最近の金融政策や経済指標のコメントからは、「2009年以来」がキーワードになっているように感じます。

2009年は、2008年にリーマンショックが起きて世界景気が大ダメージを受けてから景気の底入れをした年です。その当時まで世界景気が戻ってしまっているのが現在の状況であると考えられます。

景気の状況から、もしもあてはめた下落が起きるようですと、日経平均は「ダブル底(ダブルボトム)」になる可能性があります。

ダブル底は、株価が大きく下落した後にいったん上昇し、前回下落した安値近くまで再度下落してから上昇に転じるチャートの形のことです。

株式市場が大きく下落してから上昇に転じ、再び下落した時に前回の安値を割れなければ「下値は堅い」「これ以上は下がらない」といったコンセンサスが投資家の間にできるので、ダブル底になったときには強い底入れパターンとなります。

まだ時間はありますが、株価が下がりだすときには値幅が一気に加速することもあります。もしかしたら転換点が出るかもしれないと「心の準備」だけはしておいて損はないと思います。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


世界的な金融緩和で「不景気の株高」になるか?

2012年07月07日 08時53分34秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)欧州、英国、中国が利下げを発表。
2)米国では、景況感が悪化している。
3)各国が金融緩和をしても、すぐに株高が起きるとは限らない。

◆世界的な金融緩和期待が高まる

昨日は、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行、中国人民銀行が利下げを実施する発表がありました。ECBは政策金利の0.25%引き下げを行い、過去最低水準となる0.75%、中国人民銀行は6月に続いて2ヶ月連続の利下げとなっています。

欧州、中国の利下げ実施は世界的な流動性相場に期待がかかるため、株式市場にとって好材料と考えれられます。しかしながら、欧米株式市場は「反応薄」となりました。

欧米株式市場に足並みをそろえるように、日経平均も一時9000円を割り込む動きとなって、世界的な利下げムードに反応しない結果となりました。



各国の中央銀行が金融緩和政策に踏み出すということは、景気が悪いことを認めたということです。株式市場が利下げに反応しないのは、景気悪化と金融緩和の綱引きになっているということになります。

昨日の米国で発表された6月のISM「非製造業」指数は53.2から52.1となり、2010年1月以来の低水準となりました。先行して2日に発表されている6月のISM「製造業」指数はは49.7となり、2009年7月以来初めて50を下回っています。

ISM指数はGDPや雇用統計など一般的な経済指標ではないため、あまりなじみがないかもしれませんが、とても重要な指標です。

ISM指数とは、米サプライマネジメント協会(全米供給管理協会)が毎月第一営業日に発表する経済指標です。製造業と非製造業指数がありますが、米国の景気先行指標としては製造業指数の方が注目されます。

ISM指数は、企業に対して、受注や生産、在庫などの状況をアンケートした結果を指数化したものです。企業のマインドをアンケートして指数化するので、今週日本で発表された「日銀短観」と非常に似た指標となります。

ISM指数は「景気判断の分かれ目が50」となっていて、「製造業指数が50を割れているときに、FRBは利上げをしたことがない」ということから、FRBの注目度がとても高いということがわかると思います。

◆不景気の株高はおきるのか?

世界的な金融緩和の流れからイメージすることは、「不景気の株高期待」ではないかと思われます。株式市場は、「景気がよいと上昇」「景気が悪いと下落」が自然なのですが、「好景気の株安」「不景気の株高」ということがおきます。

景気が良くて過熱してくるとインフレになりますから、中央銀行はインフレを抑えるために金融引き締めの政策を行います。この結果、「今の景気は絶好調」でも株式市場が下がりだします。反対に「今の景気が悪い」と金融緩和をして景気を下支えしようとしますので、お金が市場に流れて「金余り相場」が起きることがあります。

どうして起きるのかといいますと、「株式投資は将来を買う」ことだからです。今の景気は関係なく、これから3ヵ月後、半年後、1年後がどうなっているかを想定して株を買う人が多いから、「好景気の株安」「不景気の株高」ということが起きるといえます。

「不景気の株高」は流動性相場といわれる現象です。最近でも株が上昇して「過剰流動性相場」と表現されることが多かったので、世界的な金融緩和が起きたので「株が上がりそう」と期待をしてしまいがちではないでしょうか。

単純に金融緩和になったとしても、株が上がるためには、将来の企業業績が良くなることが前提といえます。欧州の債務問題は解決したとはいいきれませんし、先月3年半ぶりの利下げを行った中国は、景気減速が始まったばかりかもしれません。

世界的な金融緩和でも株式市場の反応が薄い背景には、投資家が先行きの景気に自信が持てないことを示している可能性があります。しばらくは、景気悪化と金融緩和の綱引きが続くと考えて、安易に高値を追いかけないようにした方がよいと思われます。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


投資戦略の『定跡』をマスターしよう

2012年07月05日 22時59分22秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)収録した『投資戦略の立て方』動画をレベルアップに使って欲しい。
2)株式市場が上昇するときの『定跡』がある。
3)定跡をマスターしてから、臨機応変に対応できるようになることが上達の近道。

◆『投資戦略の立て方』について、動画を収録しました。

今週月曜日の『今日からの投資戦略』でお伝えしました『3つの投資戦略』の動画を収録しました。(「アドバ動画」7月3日・7月4日・7月5日配信分です。)


第1回  出遅れ業種を探す戦略    (7/3 配信)

第2回  市場全体の初押しを待つ戦略 (7/4 配信)

第3回  主力株の「空売り」戦略    (7/5 配信予定)

今回取り上げた3つの戦略のうち買い戦略については、株式市場が底値から上昇初期に使える考え方です。3つの戦略に転換点投資を加えれば、年間の利益率をアップすることに役立つと思います。

ただし、無理に売買回数を増やしてリスクを取ることはありませんので、いきなり実践するのではなく、教材として使ってください。大まかな考え方がわかれば、あとは自分流で考えたことを加えることで、さらにレベルアップできるはずです。

◆投資戦略をどう使うのか?

株式市場が大きく下がってから上昇に転じるときは、ある程度「パターン」があります。実は3つの戦略というのは、株式市場が上昇に転じるときのパターンにあわせた対応策といえます。

・株式市場が上昇するときのオーソドックスな流れ

1.株式市場全体に売られ過ぎて底値を付ける。

2.売られ過ぎの水準訂正で株式市場全体にリバウンドする。

3.リバウンドで終われば下落トレンド継続となるが、リバウンド後に良い材料などが出て、業績の良い銘柄やテーマ性のある銘柄が株式市場を牽引する形になると一段高になる。

4.先行銘柄が利益確定売りなどで上昇一服となり、出遅れている銘柄群が買われ始める。

5.出遅れている銘柄群に買いが一巡してしまうと、買う銘柄がなくなってしまい、株式市場全体の水準がかなり上昇してしまうので、全体では上昇が止まり、市場全体の調整が起きる。

6.株式市場全体に調整が起きても、良い材料やニュースなど、さらに高値を買うきっかけが出てくれば、調整から再び上昇が始まる。

7.再び上昇が始まると、4から5が繰り返される。ただし、いずれは株式市場全体が天井圏となり、上昇トレンドが終わる。また、6の時点で大きく下がりだして、下落トレンドがスタートすることもある。

上記の流れを投資戦略に当てはめまて考えます。

まず、1から2、3の動きを狙うのが「転換点投資」です。2と3の違いは、下落トレンドが転換するかどうかといえます。

3から4の段階で使うのが「出遅れ業種を探す戦略」です。いいかえますと、2の段階で終わってしまう(リバウンドで終わる)のなら、出遅れを探す意味がないといえます。

5から6の段階で使うのが「市場全体の初押しを待つ戦略」です。

これが繰り返されていきますが、株式市場の水準が上がっていくたびにリスクがどんどん上がっていきます。

そして、7の天井圏では「主力株の空売り戦略」が有効になります。

今回の上昇にあてはめると以下のように考えられます。

◆定跡を知って投資に役立てる

将棋や囲碁で「定跡(定石)」があるように、株式投資でも定跡があります。三角保ち合いやダブルトップ、三尊天井などはチャートパターンの定跡ですし、今回の戦略は投資する銘柄を探すための定跡です。

将棋をはじめようと思ったら、まずは駒の動かし方などのルールの基礎を覚えてから、次に手筋の定跡を覚えるでしょう。株式投資も同じで、まずは注文の出し方などのルールの基礎を覚えてから、次は定跡を覚えることが上達の近道です。

ただし、定跡どおりにいかないのは将棋も株式投資も同じですから、常に臨機応変な対応が必要です。将棋でも相手が定跡どおりに打ってくるかわからないように、相場も定跡ではない動きをすることは多々あります。

基本を知って、応用できるように、今回収録したアドバ動画をご覧ください。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明


来週発表される日銀短観と日経平均の傾向を比較

2012年06月29日 09時06分41秒 | ケンミレコラム

 

■今回のまとめ

1)欧州の銀行救済が報道されて、日経平均が9000円台を回復。
2)来週発表される日銀短観は、横ばいが予想されている。
3)日経平均と短観を比較した傾向からは、上昇したら売っておいた方がよいことがわかる

◆日経平均が9000円台を回復

株式市場が昼休みの間に、EU首脳が1200億ユーロ規模の成長策で合意するとともに、欧州安定メカニズム(ESM)が銀行に直接資本注入する可能性を示したことから、日経平均は9000円台を回復する動きとなりました。

日経平均が急騰した背景は、ESMが銀行救済資金を拠出するという点です。

6月中旬にスペイン支援が報じられましたが、このときにはスペイン政府へ直接融資するという内容だったため、スペイン財政の重荷は変わらないと評価されました。このために、株式市場や為替市場の反応は薄く、スペイン国債の利回りも上昇しました。

今回は、ESMからの資金拠出によって財政負担を増やさずに銀行に資本注入するという内容のため、EU加盟国の追加負担がなく、各国の財政が悪化しないという点が評価されたといえます。

ただし、株式市場の上昇した要因として、期末に向けた「ドレッシング買い」という見方もあります。本日は四半期末、半年末、月末ということから、投資信託やファンドなどが評価を上げたいために買いが入っているという可能性が指摘されています。

また、騰落レシオが120%を超えていたり、テクニカル指標が短期的な過熱感を示しており、持ち株があれば利益確定売りを検討するタイミングになったと思われます。

◆7月短観発表が注目される

一方で、来週月曜日(7月2日)には、6月調査の日銀短観が発表されます。株式市場にとって材料視される「大企業製造業の業況判断」は、3月と同じ「-4」になることが予想されています。

仮に来週発表される7月が「-4」となった場合、2011年12月から3四半期連続で「-4」となり、短観結果の横ばいが続きます。

そこで、2000年以降の日経平均と日銀短観(DI)の傾向を比較しました。


短観で注目される「業況判断DI」とは、各アンケートの項目について3個の選択肢(良い、さほど良くない、悪いの3つ)で解答してもらった結果を指数化したものです。

計算方法は案外簡単で、アンケートをとった全体の中で「良い」と答えた割合から「悪い」と答えた割合を引いて計算します。たとえば100社にアンケートをとって、「良い」40社(40%)、「さほど良くない」30社(30%)、「悪い」30社(30%)となった場合、「良い」(40%)から「悪い」(30%)を引いた10%がDIとなります。悪いが良いより多ければマイナスになりますので、業況判断DIは最大100からマイナス100までの範囲になります。

つまり、DIがプラス圏であれば、景気がよいと考えている企業が多く、マイナス圏であれば景気が悪いと考えている企業が多いということです。

日経平均とDIがプラス圏なのか、マイナス圏なのかに注目して比較するとよくわかります。2004年から2007年頃まで、DIはプラス圏を維持しています。景気が良い状態が続いていたといえますので、株価も右肩上がりの上昇になっていたといえます。

その後、リーマンショックに向かってDIが急低下し、日経平均も暴落しました。そして、2010年にかけてDIが回復し、プラス圏になるまで日経平均の上昇が続いています。

しかしながら、2010年にプラスを回復してから現在までのDIは、マイナス圏でしばらくもみ合っている状態です。日経平均もDIに連動するようにはっきりしない展開となっており、2010年からはゆるやかな下落トレンドになっています。

日銀短観と日経平均の比較から考えられるのは、プラス圏で推移しないと日経平均が大きく上昇して、右肩上がりの上昇を始める可能性は低いということです。景気の状況から考えましても、株式市場が上昇したときには売っておいた方がよいと思われます。

また、日銀短観は日本の景気をチェックするときに、外国人投資家も注目している指標です。欧州問題や世界的な景気もとても重要な要素ですが、国内株式市場にとっていちばん肝心なことが国内景気の状況ですので、株式市場全体の方向性を再確認するために注目しておいた方がよいといえます。

レポート担当:ケンミレ株式情報 市原 義明