2012年8月28日(火曜日) 14時26分 更新
■今回のまとめ
1)バーナンキFRB議長を控えて超閑散相場になっている。
2)投資手法によっては、将来の予想は必要ない。
3)将来のシナリオを考えるにしても、まずは下がりだしてから。
◆バーナンキFRB議長を控えて超閑散相場に
昨日の株式市場では売買代金が7000億円を割り込み、さらに出来高が今年最低の10億株台となって、超閑散相場になっています。
週末にバーナンキFRB議長のジャクソンホール講演を控えているため、米国の追加金融緩和が気になるために、売買が手控えられているという解説がたくさん出ています。
会員の方からも「QE3があるのか?」「あった場合には株価がどう動くのか?」「なかったらどうなるのか?」といった質問が来ています。
過去を調べると、QE1、QE2を実施したあとのNYダウは上昇しています。したがって、もしもQE3が実施されたら過去の傾向からはまた株価が上昇するかもしれませんので、気になって誰かに聞きたいという気持ちはとてもわかります。

しかしながら、将来の材料については、過去と同じように反応するとは限りません。一番大きな問題は、世界景気が減速しているということです。本日、古川経済財政担当相が記者会見して、日本の景気判断を10ヶ月ぶりに下方修正しています。
欧州、米国、中国が景気判断を下方修正していることが要因で、海外全体の景気判断も「減速の動きが広がっており、弱い回復となっている」とコメントしています。
株式が企業の利益の配分をもらえる証券だと考えれば、株価が上昇する一番大きな要因は企業業績です。金融緩和をいくらしても、企業業績が悪ければ、株価が上昇する理屈が通りません。
また、米国が金融緩和のする狙いの1つに、ドル安による景気浮揚効果があります。狙いどおりのドル安となれば、株価が上昇するよりもドル建てで取引される原油などの商品市況が上昇する可能性が高いと考えられます。
現在、トウモロコシなど穀物の価格が高騰し、世界各地で食料インフレへの懸念が強まっています。22日に農林水産省は、小麦の国際価格が上昇しているので、政府から製粉会社に売る輸入小麦の価格を10月から平均3%引き上げるとを発表しています。
景気が悪いのに食品や原油など生活に必要なものの価格が上がるとどうなるかといえば、スタグフレーション(景気が低迷して物価が上昇する状態)が警戒される可能性があります。
簡単にいいますと、QE3によって不景気の物価高が起きてしまうと、景気回復を狙った金融政策が裏目に出るということになります。
したがって、QE3が実施されても、その後の環境を読みきることはとても困難であると思われます。さらに現在は米国の金融緩和だけではなく、欧州の9月危機が警戒されていますから、バーナンキ議長講演のイベントを通過しても次のイベントを待って様子見が続くというのが、現実の相場展開ではないかと思います。
◆QE3の予想が本当に必要なのか?
先週の土曜日に「塩漬け解消セミナー」を開催しました。塩漬け株に悩んでいる方が対象のセミナーでしたので、現在持っている株の一覧を持ってきてもらい、参加していただいた方と一緒に解消するためのステップを考えました。
塩漬け株で悩んでいる方と応対したときに印象に残ったのが、「何か売買したくなるんだよ」と話されていたことです。
塩漬け株にしてしまっているのは、何か売買したくて買い、損切りができなくなってそのままになった結果なのでしょう。いつでも売買したいと考えますと、目先に迫っている材料を予想して、何か売買をしたくなるのだと思います。
何か売買したいというのは「自分の都合」です。反対に材料を探せば、何かしらのニュースがあります。したがって、自分の都合で売買することは、いつでもできてしまいす。この結果が、塩漬け株をたくさん持った投資家になってしまう原因だと思います。
一方で、株式市場は勝手に動いていますので、自分が投資したいと思っているときにチャンスになっているとは限りません。個人投資家であれば、どうしても投資しなくてはいけないということではありませんから、自分が投資に使える時間にあわせて投資スタイルを選べばよいと思います。
今の環境を考えますと、米国の金融緩和だけではなく、欧州不安、中国景気、国内景気と懸念材料はたくさんありますから、株を買って長く持とうとは思えません。
どうしても今の環境で売買したいのであれば、自分だったら材料の影響が少ないデイトレのような短期投資に徹します。ただし、日中に相場に張り付くことは現実的に無理ですので、実践しようと思ってもできないことです。
どうしても売買しなくてはいけないプロの投資家がやっている将来を予想して売買するという難しい方法を取る必要はないと思います。しかもそのプロの投資家ですら、超閑散相場になっているということは、売買を手控えていると考えられます。
誰でも実践できる方法として提案している転換点投資法では、将来のシナリオを考えるにしても「株式市場が大きく下がりだしてから」ということになります。それまでに起こることは今すぐ売買するための材料にする必要はないと考えて、時間を有効に使って欲しいと思います