だが、根が真面目であった。
自分の真面目さが自分の薄汚さを責め立てる。
そして、気がついたら自己嫌悪する楽天家となっていた。
加害者となる。
次に俺は加害者となって、あらゆる現象を再確認し直す。
自分と社会を見つめ直し、加害者でありつつ楽天家になった。
さらに自己分析の結果。俺は駄目だと分析。
もう駄目だと観念して、負け犬の楽天家になった。
(今思うと、この時期が最も精神的に楽だった)
ようするにねらいが高かったのだと認識。
負け犬根性から、スペシャルでない普通の人になろうとしたら、もうすでに普通の人になどなれない自分がいた。仕方ないので、他者への憎悪と自己嫌悪をすりこぎで押しつぶすようにメキメキとすりつぶし、自分の本性を粉々にして行く。そして残るのは生への肯定。
肯定とは、駄目なんだけどもまだいけるような、負けてても負けてないような気がする適当さ。
負けも駄目もどうでもいい。
今日も生きてることだし、面倒な事は明日頑張りゃ良いやという適当さ。
結局、俺の本性は『適当な楽天家』だ。
一回りしたのに、なにも変わってない。
真夏の炎天下の路上で、白いこうさぎ相手に話し込んでいる女がいた。
彼女こそが『マダム protozoa 』。『作者の protozoa 』が、死神に送った妖艶な刺客。
得意技は占いと召還である。
はたから見ると、小動物相手にお話をしている「危ない女」に見えるが、彼女はそんな事など全く気にしない。
周囲の人間の目など無視して、自分の召還獣と自由にお話できるだけの精神力が彼女にはあるのだ!
なんと強い精神力であろうか!
通りすがりの人達は「なんだこの女!」という目でマダムを冷たい目で見るが、そんなものはマダムにとって屁以下だ!
私を振り向かせたいなら、もちっと臭い屁をこいてごらんてなもんである。マダムはこうさぎに言う。
「こうさぎの『おいし』よ、腰が痛いのは分かる。
生きてりゃつらい日もあるだろう。
でも、私はあなたには頑張って欲しいの。
男なら負けると分かっていても立ち向かわなきゃならない時もあるのよ!
え?
えぇと、あんたメスなの。
まぁ、体調の悪いときもあるけどさぁ、やるときゃやんないと!
わかるかな?
それが今なんだよ!
今!!
今やんなきゃいつやる!
今やりなさいというのが私からのアドバイスだ!
私の『ころりころげた気の根っこ占い』は、ほぼ完璧に失せ物や尋ね人を見つけ出す。木の根っこでころげたウサギの肢体の様子で方向から座標、住所まで一発検索なのだ。さらに目的地までの運賃まで割り出せる。
いいか、私の使命は『死神の抹殺』である!
人間にとり使命とは、ウサギにとってのニンジンに等しい!
オレンジで固いんだよ!
それが使命だ!
ニンジンが歯ごたえあるように、使命も果たさねばならない!」
こうさぎのおいしはコクンとうなづいた。
「おぉ!
やってくれるのかぁ!
ここに木の根っこ置く!
コレを目指して走って転げよ!」
こうさぎのおいしは、後ろ足で地面を蹴り上げた。
そのとたんに飛ぶようにウサギは地を駆ける。
ととととと!
ガッ!!
パタン!
こうさぎは見事に走り転んだ!
マダムの目ん玉には涙が浮かぶ。
「信じてたよ!
お前はやれば出来る子だと!
なんと見事なこけっぷり!
感動したよ。凄いよ!」
おいしも満足げな表情を浮かべる。
だが、マダムは肝心な事を忘れていた。
「あっ。転げさせるのに必死になってて占うのを忘れてたっ!」
こうさぎのおいしの額にブルーの縦線が走る。
「わっ、悪いけど、も一度ころげてくれないかなぁ?」
おいしは首を横にふる。