私は叫んだ。
「復讐なんてごめんだ。わたし帰る!」
死神は周囲を気にして小声で言う。
「ここまで来て、それは無いだろう!」
「ここまでって、まだ国分寺にも着いてないじゃん。国分寺で U ターンして家に帰る!」
「死神である俺と『復讐』を契約しただろう。神との契約は履行しないと」
「うるさい。契約なんか関係ない!
契約より今の私の気持ちの方が大切だ!
大人なんか大人なんか、みんな子供を自分の好きなように利用しようとしているだけだっ。子供の気持ちなんかいつも踏みにじるっ!」
「おいおい。せっかく買った切符代がもったいないだろ。冷やし中華だって奢ってやったのに」
「恩にきせようってなら、金で返すよ!
ほら千円!」
私はお父さんの千円を死神につき出した。
死神は困った顔をした。
「千円じゃ足りないよ」
「千円で足りないなら、そのぶん体で払ってやる!
それでどうだぁ!?
なんでもやるぞぉ!」
死神は電車のシートから腰を離し、他の乗客の目も気にせずに私の前に正座してひざまづいた。
「では、もし気が向いたならで良いのですが復讐をしてはいただけないでしょうか?
もし、そうしていただけたなら、残りの俺の人生を全てあなたに捧げましょう。これから一生あなたの下僕として仕えます」
「え?」
西武線は国分寺駅に着いた。