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徒然草 第三十七段 朝夕

2006-08-05 19:37:51 | 新訳 徒然草

 朝夕、隔てなく馴れたる人の、ともある時、我に心おき、ひきつくろへるさまに見ゆるこそ、「今更、かくやは」など言ふ人もありぬべけれど、なほ、げにげにしく、よき人かなとぞ覚ゆる。
 疎き人の、うちとけたる事など言ひたる、また、よしと思ひつきぬべし。

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<口語訳>

 朝夕、へだてなく馴れた人が、ふとある時、我に心置き、引きつくろう様に見えるのこそ、「いまさら、こんなは」など言う人もあるはずだけれど、なお、実に実にして、よい人かなと思えるぞ。
 疎い人が、うちとけた事など言う、また、よいと思いつくはず。
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<意訳>

 朝夕、すっかりうちとけていた女が、ふとある時、いきなり気を使いよそよそしくとりつくろう。「今さら、こんな」と言う人もいるだろうが、これがやはり本気らしくて、良い女だなと思ってしまう。

 知り合ったばかりの女が、うちとけた口調なのも、また良いものだ。
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<感想>

 この段は、2人の女の様子を例にして兼好好みの女を語ったものである。あくまで内容は一般論として書かれており、兼好の実体験を示すものではない。

 1人目は、すっかりうちとけて生活をしていたはずの女が、ある日突然にとりつくろったような様子を見せるのは可愛いよねという話。
 2人目は、会ったばかりなのにタメグチな女も、それまた可愛いという話。

 現代風に言うなら、1人目は妻か同棲相手だろう。2人目はキャバクラ嬢か。

 ようするに、妻となる女は、慣れ親しんでいるからとだらけずに、たまには男の前で身だしなみをきちんとしなさいということ。
 遊びの女なら、いきなりタメグチなぐらいでちょうど良い。

 この段は一般論で、兼好の女性関係をうんぬん言う段ではないと思う。
 単なる当時の貴族の男の一般論で、兼好もそういう女が望ましいと思ったのだろう。

 まぁ、なんにしろこの段も女の話だ。
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<受け売り>

『朝夕、隔てなく馴れたる人の』
 朝も夜も常に親密にしている人。
 ここでいう「馴れたる人」は男女関係にある親密な人であろうとテキストは深読みしている。俺には全くそんなやらしい考えはなかったが、仕方ないので渋々テキストに従おうと思う。

『ともある時』
 「というある時」、あるいは「友ある時」の意味だと言われているが、「ともかく」という日本語もあるし「ともかくある時」でだいたい正解だと思う。

『我に心おき』
 自分に心置き。
 心置きは相手を気にかけての意で、この段では女が男を気にしての意。

『ひきつくろへる』
 引き繕う、とりつくろう、身だしなみを整える、改まった態度をとる。

『げにげにしく』
 「実に実に」「いかにもいかにも」なんていう肯定を重ねた言葉が形容詞になったもの。昔の言葉はこんなのが多い。
 現代風に言うなら「マジでマジっぽく」みたいなかんじで、昔の日本語はかなり乱れている。


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