「で、死んだら死ぬと言うテーマなんですが?」
死神は言う。
「あー。死んだら死ぬ。確実に死ぬ絶対死ぬ間違いなく死ぬ。
そして、2度と生き返らない!」
「まんまですね」
「まんまだ!」
「で、死んだら死ぬと言うテーマなんですが?」
死神は言う。
「あー。死んだら死ぬ。確実に死ぬ絶対死ぬ間違いなく死ぬ。
そして、2度と生き返らない!」
「まんまですね」
「まんまだ!」
ゲストの protozoa が話し出した。
「こんばんは protozoa です。『死んだら死ぬ』と言うテーマは当たり前のようでいながら本当に当たり前なので興味深いテーマです」
「死についてはどうお考えなのですか?」
「いや、やっぱり死んだら死ぬとしか答えようもありません」
「なんか、いつもとちがう話し方ですね?」
「死神とキャラがかぶるんでワザと口調を変えているんですよ!」
「まぁ、ほとんど同一人物みたいなもんですからねぇ」
「待て待て、こいつと俺と同一人物扱いするな!」
「なんだ、お前。俺につくられたキャラのくせに生意気な口きくな!」
「けっ、お前みたいなヘボ作者と俺を一緒にするなよ!」
「誰がヘボだっ。だいたい物語をぶち壊したのはお前の責任だろ!」
「なーんで俺の責任になるかな?」
「物語のキーパーソンであるお前が、とっとと物語を進行させないから、物語が停滞すんだよ!」
「お前が見通しもなく物語を書き始めたのがもともとの原因だろ!」
「馬鹿ぁっ! 出だしとオチだけは最初から決まってたんだ。真ん中をうまくまとめるのが登場人物の責任ってモンだろ!」
「知るかよ。だいたい俺は木村みのりに復讐をそそのかす誘惑者という設定だったのに、この子は復讐なんかやる気ゼロじゃん! そそのかすもクソもやる気ナッシングな奴を丸め込むのにどれだけの労力が必要だと思ってんだよ。俺こそこんなに手間がかかる仕事だなんて聞いてねぇよ!」
「お前こそやる気ねぇよ。創意と工夫と努力が足んねぇから説得できねぇんだよ!」
「おまっ、この子は創意や工夫や努力でなんとかなるキャラか?」
「人のせいにすんなよ。自分の能力の足りなさを恥じよ!」
「えっ偉そうに!! その言葉まんま返してやるよ! だいたい出だしとオチだけは決めてたって言うけどどんなオチだ?」
「なんとなく丸くおさまる」
「馬鹿かテメーはっ!! そんなアヤフヤな構想で書き出すな!」
「っせっー。俺の処女小説をムチャクチャにしやがって!」
「いまさら小説なんて言うなっ! 読んでいる連中に笑われる。だいたいお前には3文字以上の文章を書く才能なんてないんだよ!」
「馬鹿やろ! 3文字で文章になるかっ!」
「知るか馬鹿!」
「くそぉ。俺の作家になって印税計画という夢をぶち壊しやがって!」
「え? いや、おい。いまサラッと言ったけど、まさか本気でそんなこと考えていたんじゃないよなぁ?」
「ウハウハの夢を!」
「うっわぁー情けねぇ。こんな奴に創造された自分が情けねぇ!
こらっ!
「ほぼ同一人物が同じ口調で話すな! もー読者はどっちがどっちだか分からなくなってる! protozoa もう発言禁止!」
『ごめんなさい』(ダブル)
チャン、チャラチャラチャラチャン♪
ヂャン、ヂャラヂャラヂャラヂャン♪
ヂャンラー、ララララーン♪
えーと。
お琴の演奏テープが流れる中をおめでたい雰囲気のタイトル・テロップが立ち上がるようにというか、死神がボール紙に書かれたタイトルを手で立ち上げていく。
えー、オコタ。
コタツがあってね。コタツの上にはミカン。
そしてオコタには私が髪を結って振り袖で座っている。
死神は黒い野球帽に黒いTシャツでジーパンといういつもの格好の上にちゃんちゃんこ。
死神が声をふりしぼって叫んだ。
「新春『平成マシンガンズを読んで』特別企画!」
私が続ける。
「朝まで生ブログ!」
この特別企画は死神がメイン司会で、私はサブの司会。
「えー。メイン司会の死神です」
「木村みのりです」
「いやいや、毎年恒例のこの企画」
「今年はじめてじゃん。だいたい朝まで生ブログって、本気で朝までやる気なの?」
「省略の美学だ。『朝まで(できたらいいな)生ブログ』から、できたらいいなを省略している」
「はじめから、朝までやる気なんてないくせに」
「やる気なくても、できたらいいなって気持ちが大切なんだよ。まぁ、この企画によって本編のストーリーが一時中断してしまうが、なにしろ新春だしな。記念になんかやっときたいなと思って俺が企画提案した」
「一時中断も何も、だいたいまともなストーリーなんてなかったじゃん!」
「まぁね。で、テーマなんだが。テーマは『死んだら死ぬ』というテーマだ」
「はぁ、死んだら死ぬのは当たり前じゃん。だいたい正月から縁起でもない」
「死神らしいテーマでいいだろ」
「正月早々、死なんて一休さんみたい」
「っせぇなぁ。とにかくゲストを紹介しよう。最初のゲストはパラサイト・シングルとフリーター問題についての専門家、protozoa さん!」
「専門家ちがう! まんまのパラサイトでフリーターじゃん!」
「以上です」
「1人かよ!?」
今朝は6時30分に起きた。
くもりの天気予報が出ていたが青空が見える。
冬らしい澄み切った青空とまではいかないがそれなりに快晴だ。
今日は1月3日で、まだ正月休み。昨夜は少し気になる事があって夜中の2時過ぎまで起きていたので少し眠い。
身支度を整えて散歩に出かける。
今朝も昨日に引き続き暖かい。風も弱い。
矢川緑地に行って今朝も餌をあさっているカモの様子を見る。
餌を探すカモは、水たまりに浮かんでものすごい早さでクチバシを振るいながら泥の中をあさっている。
そうかと思えば羽を広げて変なポーズをとりながらジッと固まっているカモもいれば、遊泳しているだけのカモ、首を丸めまだ惰眠をむさぼっている様子のカモもいる。
カモはハトに比べて行儀がいい。
普段、街で見慣れているハトは他のハトを押しのけてまで餌をとろうとするが、カモはお互いに十分な距離をとって餌を探す。他のカモが見つけた餌を奪うような真似もしない。
カモのエサは探し出す物であって無くなるような物ではないのだろう。
頭の中が空っぽでぼんやりする。
富士山でも見に多摩川沿いの堤防に行こう。
普段の矢川沿いの道ではなくショートカットのコースで手っ取り早く多摩川を目指す。歩きながら、この天気では富士山はかすんで見えないかもなと考えた。
多摩川の土手の上にあがると危惧は当たっていた。
富士山の方向には雲がたちこめて全く富士山は見えない。
東西南北すべてに雲が広がる。
たまたまこの立川の周囲だけがスッポリ晴れている印象だ。
帰り道に朝食とタバコを買いにサンクスに寄った。
商品を選びレジに立ってアレッと思った。
良く知っている顔の女性がレジに立っている。
レジに立つ女性と一瞬だけ目が合い相手も俺に気がついた。だが、彼女はフイッと視線をそらすと下を向いて知らん顔をした。
彼女は、俺が仕事帰りによく寄るセブンイレブンの店員だ。
仕事のある時なら週に2・3回は彼女にレジを打ってもらう。胸につけている名札から察すると彼女は中国の人なのだろう。
セブンイレブンは仕事帰りには便利で良く利用するのだが、家からやや遠いので休みの日はまったく利用しない。また逆に、サンクスは家から一番近いコンビニなのだが仕事の時の帰り道とは外れているので平日はまったく利用しない。
彼女がセブンイレブンとサンクスでかけ持ちのバイトをしているとは知らなかった。正月から働き者だなと思ったが、中国から来たなら親族もいない日本の正月など無関係なのかもと思う。
サンクスの袋をぶらさげて歩きながら思う。
カモがいて人がいて、今こうして俺が歩く地面がある。
頭の中で地平が広がる。