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墨汁日記

墨汁Aイッテキ!公式ブログ

平成マシンガンズを読んで 268

2007-02-23 20:18:06 | 

 私は叫んだ。

「復讐なんてごめんだ。わたし帰る!」

 死神は周囲を気にして小声で言う。

「ここまで来て、それは無いだろう!」

「ここまでって、まだ国分寺にも着いてないじゃん。国分寺で U ターンして家に帰る!」

「死神である俺と『復讐』を契約しただろう。神との契約は履行しないと」

「うるさい。契約なんか関係ない!
 契約より今の私の気持ちの方が大切だ!
 大人なんか大人なんか、みんな子供を自分の好きなように利用しようとしているだけだっ。子供の気持ちなんかいつも踏みにじるっ!」

「おいおい。せっかく買った切符代がもったいないだろ。冷やし中華だって奢ってやったのに」

「恩にきせようってなら、金で返すよ!
 ほら千円!」

 私はお父さんの千円を死神につき出した。

 死神は困った顔をした。

「千円じゃ足りないよ」

「千円で足りないなら、そのぶん体で払ってやる!
 それでどうだぁ!?
 なんでもやるぞぉ!」

 死神は電車のシートから腰を離し、他の乗客の目も気にせずに私の前に正座してひざまづいた。

「では、もし気が向いたならで良いのですが復讐をしてはいただけないでしょうか?
 もし、そうしていただけたなら、残りの俺の人生を全てあなたに捧げましょう。これから一生あなたの下僕として仕えます」

「え?」

 西武線は国分寺駅に着いた。


平マ 267『マダム侵入』

2007-02-22 20:44:25 | 

 その頃、作者から死神の暗殺を命令されたマダムは途方にくれていた。『平成マシンガンズを読んで』の本編の世界に侵入したまでは良かったのだが。

「死神が何処にいるのかわからん」

 だが、マダムはこんな事ぐらいで諦める女ではない。ちゅーか、むしろ諦めは悪い方。てか、諦め方を知らない女だ。

 ピカッ!

 マダムの頭の電球が点灯した!

「そうだ。
 思い出した。
 私は占い師。
 占いの『マダム protozoa 』。
 失せ物から心の秘密、前世までなんでもござれ。
 占いで明かせぬ謎は無い。
 では、よし。
 今回は『木の根で転げた占い』!
 いでよ!
 ブログペットのこうさぎ『おいし』!」

 ピカッー!

 無駄な落雷とともに、マダムの召還獣である『こうさぎのおいし』が現れた。マダムはおいしに言う。

「わたし、ここ置く。
 ここに置いたこれ。
 これは木の根っこ。
 おまえ、転げる。
 この木の根っこで!
 オーケー?
 ラジャー?」

 おいしは首を振る。

「今日は腰が痛いから転げたくないと!
 でも、お前が転げてくれないと占いできない。
 占い出来ないとわたし困る。
 お前の転げ方で死神の行き先を占えるのに、転げないと占いできない。
 え、転んで怪我したら労災はきくのかだって?
 たぶんウサギに労災は適用されない。
 適用されても、せいぜい『動物保護法』だろう。
 じゃあ、イヤだって。
 生意気だなおまえ、畜生のくせに!」


平成マシンガンズを読んで 266

2007-02-22 20:07:28 | 

 大人の話によると、大人達が子供の頃には駅員の人がいちいち改札を通る人の切符を全て確認して、パチパチ切符にパンチをいれていたらしい。
 自動改札を通る度にその話を思い出して、いつもすごいなぁと思う。
 その頃の駅員さんはみんな、今の人にはもうきっと真似も出来ないような、すごいテクの持ち主だったに違いない。世の中が機械化される事により『匠の技』はどんどん消滅していってしまうんだなぁと思う。

 思いながらも、死神がくれた切符を自動改札に差し込むと、シュルンと飲み込まれてピュンてなかんじで向こう側に出てくる。
 面白い。
 自動改札は好きだ。『スイカ』はアクションがなくてつまらない。

「自動改札は好き」

「変なもんが好きなんだな」

 死神が答える。
 それと同時に駅舎内にある踏切がいきなりカンカンと音をたてて閉まりかけた。死神はあせって走り出しかけたが、私は死神のシャツの裾を引っぱって言う。

「大丈夫。踏切が開いてからでも余裕で乗れるから」

「さすが地元。西武線のプロだな」

「えへへ」

 なんとなく誉められて嬉しくなる。

 電車に乗り込むとクーラーがきいていて涼しい。ホッとひと心地つく。この時間の西武線はガラガラで、2人とも適当に座ったら、2人の間にだいたい1人分のスペースがあった。

 死神が言う。

「まぁ。アイドルは良いよ。テレビに出れば必ずアイドルになる」

「そ、そうかなぁ?」

「テレビも新聞も雑誌も、けして放っておけなくなる!」

「いやぁー、うそぉ。ソコまで言ぅかぁ!」

「その為には、ちゃんとやる事をやらないとな!」

 そうだった。
 私達はこれから『お笑い』に挑戦するのだ。
 ピンポイントに確実なツボをつき、視聴者の印象に残るようなギャグを披露しない事には、私のアイドル人生は訪れない。可愛いだけで生き残れるほど芸能界は甘くないのだ!

 死神は言う。

「テレビの生放送中に『子供達の復讐』を実行する。
 収録を観にきた観客をそのマシンガンで惨殺するのだ。
 そして、あんたは『復讐』の象徴としてカリスマ的アイドルとなるだろう。
 明日の新聞の1面記事は、全てあんたの記事で埋め尽くされる!」

「え?」


平成マシンガンズを読んで 265

2007-02-21 21:05:15 | 

 駅に着いたら、死神が切符を黙って購入して私に渡した。

 国分寺乗り換え。JR で都内へ!

「なんだよ、西武線で『新宿』まで行った方が安いのに」

「西武新宿線は乗り換えが面倒だ」

 私は死神に疑問をぶつける。

「なんで、ウチらがテレビに出るの?
 しかもお笑いで!
 意味分かんないよ!」

「テレビに出たらスカウトされるかもしれないぞ!」

「何のスカウトよ?」

「アイドルだ。あの相方が可愛いって評判になって、事務所からスカウトされるかもしれない!」

「ア、アイドル!
 アイドルはけっこう憧れてる職業の1つなんだ!」

「おい、本気でキャラ変わってないか?」

「いや。言いたい事を自由に言えると、本当はこういうキャラなのです」

 何でも好きな事を言える相手がいる幸せ。


平マ264 番外『復讐』

2007-02-21 20:38:03 | 

 ツツツッ。て、湧き水を貯えちゃった竹があたまを下げる。

 ガコンッ!

 静寂の中、鹿おどしの音が室内に響き渡る。

 時は、西暦2007年の2月で21日。
 すなわち『今日』。
 場所は東京都立川市にあるマンションの一室。
 すなわち protozoa 邸。

 ガチャン!

 頭に包帯を巻いた protozoa が、CDラジカセの停止ボタンを押した。
 そのとたん、小川のせせらぎの音や鹿おどしの音は消え、辺りは本当の静寂に包まれる。
 聞こえるは Power Mac のファン音だけ。

「口惜しや。口惜しいぞ。死神!」

 なんと言う事であろうか。
 死神にバットで頭を殴打されて、殴り殺されたはずの protozoa は生存していたのだ。
 なんという生命力、なんという諦めの悪さであろう!
 素直に死ねばいいのに。

「マダムよ、マダムはおるか?」

 protozoa が呼ぶと、即座に闇から湧き出るようにして豊満な肉体を持つ女が現れた。女は、たわわにプルルンとプリンのような怪しい色香を放っている。

「はーい。マダムでーす!」

 このマダムという女は、protozoa の半身である。
 女という性を与えらえた protozoa 自身の分身。
 これも protozoa の妄想が産んだ、怪しき技の結果である。
 マダムの性格は protozoa の生き写し。そのせいで根性は曲がっている。だが、見た目だけはもの凄い美女である。なぜなら、それが protozoa の趣味だからだ。
 protozoa の恐ろしい妄執が産んだ、毒舌の絶世の美女。それがこの女『マダム』である。

「儂は常に前向きに生きねばならんと思っている」

「はぁ?」

「世間的に見れば後ろ向きに見えても、気持ちだけはいつでもポジティブ・シンキングなのだ。そう生きろと『ミンキー・モモ』が教えてくれた」

「はぁー?」

「行けマダム!」

「ごめんなさい。どこへ?」

「死神のもとへ!」

「ナニしにですかぁ?」

「殺せ!」

「えー。統合すると『死神を殺してこい!』というオーダーでよろしいんでしょうか?」

 残忍な笑みを浮かべ protozoa は、満足げに頷いた。

「では、さっそく!」

 女は共のこうさぎ『おいし』と一緒に闇に消える。

「ククク、死神め。
 儂の分身の1人でありながら裏切りおって。
 だが、儂にバット向けたことを地獄で後悔させてやる!
 そして、死神なき後は、みのりタンは儂のもの!
  ハァハァ!!
 みのりたーん!」

 作者である protozoa の、死神への暗殺指令。

 もはや、作者と死神は別人格である!
 物語は、木村みのりの争奪戦という新たな局面を迎えながらも、適当に進む。