大人の話によると、大人達が子供の頃には駅員の人がいちいち改札を通る人の切符を全て確認して、パチパチ切符にパンチをいれていたらしい。
自動改札を通る度にその話を思い出して、いつもすごいなぁと思う。
その頃の駅員さんはみんな、今の人にはもうきっと真似も出来ないような、すごいテクの持ち主だったに違いない。世の中が機械化される事により『匠の技』はどんどん消滅していってしまうんだなぁと思う。
思いながらも、死神がくれた切符を自動改札に差し込むと、シュルンと飲み込まれてピュンてなかんじで向こう側に出てくる。
面白い。
自動改札は好きだ。『スイカ』はアクションがなくてつまらない。
「自動改札は好き」
「変なもんが好きなんだな」
死神が答える。
それと同時に駅舎内にある踏切がいきなりカンカンと音をたてて閉まりかけた。死神はあせって走り出しかけたが、私は死神のシャツの裾を引っぱって言う。
「大丈夫。踏切が開いてからでも余裕で乗れるから」
「さすが地元。西武線のプロだな」
「えへへ」
なんとなく誉められて嬉しくなる。
電車に乗り込むとクーラーがきいていて涼しい。ホッとひと心地つく。この時間の西武線はガラガラで、2人とも適当に座ったら、2人の間にだいたい1人分のスペースがあった。
死神が言う。
「まぁ。アイドルは良いよ。テレビに出れば必ずアイドルになる」
「そ、そうかなぁ?」
「テレビも新聞も雑誌も、けして放っておけなくなる!」
「いやぁー、うそぉ。ソコまで言ぅかぁ!」
「その為には、ちゃんとやる事をやらないとな!」
そうだった。
私達はこれから『お笑い』に挑戦するのだ。
ピンポイントに確実なツボをつき、視聴者の印象に残るようなギャグを披露しない事には、私のアイドル人生は訪れない。可愛いだけで生き残れるほど芸能界は甘くないのだ!
死神は言う。
「テレビの生放送中に『子供達の復讐』を実行する。
収録を観にきた観客をそのマシンガンで惨殺するのだ。
そして、あんたは『復讐』の象徴としてカリスマ的アイドルとなるだろう。
明日の新聞の1面記事は、全てあんたの記事で埋め尽くされる!」
「え?」
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