印刷図書館倶楽部ひろば

“印刷”に対する深い見識と愛着をお持ちの方々による広場です。語らいの輪に、ぜひご参加くださいませ。

新刊3点のご紹介

2013-02-12 16:46:29 | 蔵書より
本日は、最近の寄贈書の中から下記の新刊3点をご紹介いたします。


「次世代プリンテッドエレクトロニクスへ」
  ―印刷による付加型生産技術への転換―



編者  一般社団法人 日本印刷学会 技術委員会P&I研究会
発行  株式会社印刷学会出版部
体裁  A5判 162頁


≪内容≫
半導体その他のエレクトロニクス関連部材を作製するプロセスに、印刷技術が使われてきた理由は、印刷プロセスがもつ特質を基本的に活かせたからだが、生産の効率化、工程数や使用材料の削減、コストダウンにつなげることのできる印刷本来の優位性や有用性は、次の世代を迎えても決して揺るがないだろう。
本書は、そのような印刷技術を「プリンテッドエレクトロニクス」と呼んで、印刷技術を活かすことによる付加型生産技術への転換を提唱している。


 本書が迫る対象は実に多彩だ。その章建ては、1)印刷の種類と特徴、2)印刷がねらうエレクトロニクス分野、3)先行するスクリーン印刷技術、4)多様化するパターニング技術、5)今後の印刷技術――から成る。パターニング技術に触れた第4章では、インクジェット印刷、水なし平版印刷、グラビアオフセット微細印刷、フレキソ微細印刷、電子写真法、レーザー熱転写法に関しての記述があり、私たちが身近に感じている多様な切り口から、「プリンテッドエレクトロニクス」が文字どおりさまざまなエレクトロニクス分野に活かせるであろうことが理解できる。


 本書によれば、印刷を出発点とする各種のイメージング技術を、付加型パターニング技術として電子部品等のデバイス製造工程に使えるように、新規の材料開発やプロセス改革に努力することが、実用化をめざす「プリンテッドエレクトロニクス」のこれからの方向だとしている。


 エレクトロニクスが印刷技術に期待するものは、1)フォトリソグラフィー法からコストメリットのある印刷法への変換、2)印刷法でしかないできない領域への適用――の2点だという。各種印刷法や使用領域(用途)についての具体的な提言も欠いてはいない。





「印刷技術 基本ポイント プリプレス編」



編者  富士フイルム グローバルグラフィックシステムズ株式会社
発行  株式会社印刷学会出版部
体裁  B6判 77頁


≪内容≫
 印刷物製作の前工程(プリプレス)を担うシステムは、今やDTPが主流。誰もが基本的な印刷データをつくることができるようになったが、そのデータを使って読者や消費者の目に耐え得る高品質の印刷物に仕上げるには、どうしても印刷固有の知識と高度なノウハウが欠かせない。


 本書は、印刷の仕事に就いた新入社員に向けて、専門家になるために必要な基礎的な知識を、プロの視点で平易に解説することで、少しでも優れた印刷物を作成してもらうべくまとめたハンドブックである。書名副題のとおり、プリプレスに関する概要と作業工程に沿った流れをやさしく説いている。


 全体の構成は、プリプレス工程とはの紹介に始まり、①原稿入稿、②DTP作業、③色管理、④校正、⑤刷版作成――と作業手順を追って説明、最後に、データ出力先の一つであるデジタル印刷についても触れている。階調再現、網点形成、スクリーン線数と解像度、色分解、その他製版に関する必須知識はもちろん、デジタルワークフローの構築に欠かせない画像データの形式、カラーマネジメント、カラープロファイリング、RIP、PDF、CTPなど最新技術のことも織り込んである。


 本書は「印刷現場ですぐに役立つポケットサイズの入門書」をコンセプトに発行してきたシリーズ本の最新刊に当たっており、すでに①枚葉オフセット印刷編(日本印刷産業連合会編)、②オフセットインキ編(印刷学会出版部編)、③UVオフセット印刷編(同)といった姉妹書がある。いずれも、習得しておきたい各分野の基本的知識を解説するとともに、特徴や利点、問題の解決方法に関するまで、幅広い角度からコンパクトに凝縮してあるのが特徴だ。





「積算資料 印刷料金 201年版」



編者  一般財団法人 経済調査会
発行  同上
体裁  b5判 358頁


≪内容≫
 印刷物の発注者および印刷会社に、印刷・製本料金の積算と見積書の作成をおこなう際に役立ててもらうべく、客観性のあるデータを提供することを目的に定期的に刊行されている手引書。本書は、その2013年版である。
取引実態の調査によって実情に沿った積算体系を把握するとともに、体系を構成する工程・項目ごとに市場料金を詳細に調べており、受発注者間の“共通言語”として利用されることを期待する。集計した実勢料金の代表値(平均値や中央値)に、市場動向を勘案しながら検証を加え、最終決定した水準を掲載料金としているのが特徴だ。


 本書が対象としているのは、1)一般印刷、2)名刺・はがき・封筒印刷、3)フォーム印刷、4)複写・情報加工、5)地図調整――の5分野で、とくに一般印刷については、工程別の料金と算出法、地区別料金表、積算事例、印刷物事例別料金といった項目を設けて、多ページにわたって紹介している。もちろん、制作工程や受発注の流れ、契約時の注意点、仕様の決定、積算方法など、取引に必要な基礎知識も収録している。


 2013年版にはこのほか、1)原稿のデータ入稿における注意点、2)調査結果から
みるデジタル印刷における見積り方――について触れた特集ページがある。このうちデジタル印刷に関しては、今後、本書に掲載していく分野だとしたうえで、見積り体系をどう確立するかの検討課題に言及。
それには1)制作工程をベースにした料金、②印刷物の種類をベースにした料金――が考えられ、前者では「データのファイル形式や中味の作り方と料金の関係について、一定のルールを設定」、後者には「(想定の)各種条件から外れた場合、基本パターンは適用できず、別途項目を加算して料金を算出」といった必要性を提起している。