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印刷図書館倶楽部ひろば

“印刷”に対する深い見識と愛着をお持ちの方々による広場です。語らいの輪に、ぜひご参加くださいませ。

月例木曜会 2014年8月

2014-08-25 16:23:55 | 月例会

[印刷]の今とこれからを考える 

「印刷図書館クラブ」月例会報告(平成26年8月度会合より)


●電子出版市場が急速に拡大の様相……

 電子出版市場が急速に成長し、いよいよ本格的な拡大期に入ってきたようだ。電子書籍、電子雑誌を合わせた電子出版全体の市場はすでに1,000億円を突破、ここ1、2年の間に一気に普及するとみられる。2018年度には現在の3倍を超える3,340億円(電子書籍2,790億円+電子雑誌550億円)規模に達するとさえ予測されている。専用端末だけでなく、タブレット、スマートフォンといったモバイル端末が広く浸透して、誰もが簡単に電子書籍に触れる機会をもてるようになったことが背景にある。出版社や電子書籍ストアが積極的な広告宣伝活動を展開したこともあって、読者層が一気に拡がっている。今後ますます利便性が良くなり、認知度も高まるにつれ、利用率は一段と向上するだろう。付加価値の伴ったデジタルコンテンツの販売が進み、と同時に、紙の書籍との並行販売も増えていくと考えられる。「紙の本が落ち込んでいる現状を電子出版がカバーして、出版市場を再び活気づけるチャンスにできる」と、有力な出版各社からは、紙と電子の共生をめざすさまざまなサービスが提供され出した……。


●文字処理に「EPUB」をどう使いこなすか?

 この夏に開催された恒例の「東京国際ブックフェア」でも、電子出版を手掛けてネット社会との共存をはかりたいと意気込む出版界からの問題提起、ビジネス提案が目についた。そうしたなかで印刷関係者として関心を寄せるべきは、デジタル化が進む「書籍」の世界に「EPUB」が使われる趨勢になってきたことだろう。印刷業がこれを他人事だと見過ごすわけにはいかない。「EPUB」とは、アメリカの電子書籍団体「国際電子出版フォーラム」(IDPF)が公開している電子書籍仕様のファイルフォーマット規格で、オープン性、単純性という特長から電子書籍用の標準規格と目されている。実際、これに対応するハードやアプリケーションソフトも数多く出ている。「EPUB」ではほとんどの文字を使えるようになっているが、漢字―コード化―「EPUB」という関係をどのように捉え、実際の文字処理の仕事にいかに活かしていくか――この問題を、印刷関係者は真剣に考えなければならない。


●デジタル文字も標準化しコード化してほしい

 モノとサービスが合体した「モノビス」の時代に入り、情報の流通業が付加価値を高める役割を担うようになった。印刷物を扱ってきた従来のアナログ流通業者に加えて、デジタルコンテンツを駆使するデジタル流通業者、さらには印刷+電子配信を仕事とするクロスメディア流通業者が誕生してきた。情報伝達の約7割は文字が担っており、印刷会社がクロスメディア市場を支配して然るべきなのに、残念ながらその地位にはない。印刷会社が主役になれないなかで、デジタル文字の標準化とコード化という問題が浮上している。仮に同じ文字コードを使ったとしても、形成される書体(フォント)はバラバラで統一されていない。せっかくコード化しても、この状態ではクロスメディアが成り立たない。日本語処理をうまくやるには、デジタルでもすべてをカバーするのが理想だが、実態はそうはなっていない。コード化される範囲が定まっていなければ、それがボトルネックとなって経済活動も非効率になってしまう。


●異体字のどの範囲をコード化したらいいか

 電子書籍における文字処理には、そもそも異体字、異形字(地名や人名など)を含む外字に関する十分な対処策がない。UnicodeやJIS規格に馴染んできた印刷の専門家からみれば、甚だあやふやな状況にある。「EPUB」のほとんどのテキストデータは、Unicodeの符号化方式を採用していて、日本語の文字集合であるJIS X 0213にも対応している。第三・第四水準の漢字をカバーしているので、「EPUB」はこれまで外字とされてきた多くの文字を正常に表現できる。すべての文字をコード化し、デジタルでも同じように表現されていれば問題ないのだが、Unicodeに収録されていない文字、収録されている文字でも特定の字形を表現することを求められるケースが少なくない。そんなときは、コンテンツ制作者の意図したとおりに“見た目”で表示しなければならず、大変な作業になる。問題は、どの範囲までコード化するかにある。漢字に深入りし過ぎると、それこそ古文書に出てくる、めったに使われないような文字も考えなければならない。文化・芸術といった価値創造の要素を考えると、ある程度の異フォントは認めざるを得ないが、やはり経済的に大きな損失であり、トータルのパフォーマンスを極端に落とすことになる。


●印刷業界が主導して収束のルールをつくれ

印刷、出版、新聞、放送各業界に、デジタルコンテンツ配信会社、DTP制作会社、デバイス制作会社、それにハードおよびソフト関連のメーカーを交えた同じ土俵で、共通の文字処理をおこなえる環境を構築する必要があるだろう。これまで漢字(フォント)をもっとも扱ってきた印刷業界こそ、その強みを発揮してリーダー役を果たすべきだと思う。一番、リードしやすい立場にいるのではないだろうか? 印刷業界がもっている文字を集めれば、実態を比較的容易に掴むことができ、イニシアティブをとりやすいだろう。ともすると印刷業界の動きは鈍いが、紙の本をつくってきた経験が、今こそ生きるはずだ。漢字にはそれ自体に“造字力”があって、字数は増える傾向にある。漢字には一つひとつ意味合いが備わっていて、文章にすると感性が創造される。このことを念頭に、コンピュータでは制御できない母集団のどの水準でコード化すべきなのか、収束のための一定のルールをつくるべきである。稀にしか使わない異体字は、範囲外の“Z軸”におくことも考える必要があるかも知れない。


●新しい印刷のビジネスモデルが見えてきた

 アメリカの印刷業界団体PIAは、最新レポートのなかで「印刷市場空間の拡張は、印刷会社に機会と挑戦の両方をもたらし、“新しい印刷”のビジネスモデルを創出した」と提言している。そのビジネスモデルとは、①情報伝達サービス提供業(コミュニケーション・サービス・プロバイダー、および②統合メディア業(インテグレーテッド・メディア)への移行である。印刷品目別に最近の動向をみると、従来型の情報伝達用印刷物がデジタルメディアからの激しい攻撃を受けて低迷しているのに対し、デジタル印刷物と印刷付帯サービスは、これらの伝統的な印刷物の伸びを上回る勢いで成長するとしている。また、販促用印刷物とロジスティックス用印刷物は、全印刷市場の総出荷高を持ち上げるかたちで好調に推移するだろうとする。前者は全般的に微増ないし現状維持で推移し、後者は印刷産業全体の売上げ増の主要な“貢献者”になるはずだという。このレポートからも、マーケティング的要素、物流的要素など何らかの付加価値を載せた印刷の提案をすることの重要性が読み取れるだろう。


●戦略的にビジネスチャンスを探し出そう

 レポートはさらに、不確実な市場環境を乗り切るためには、対立しがちな数々の“戦略”と“戦術”を上手に組み合わせながら、的確に対応すべきだと提唱している。それによると、設備投資、新事業への進出、実証されないベンチャー企業へのM&Aなどに関する意思決定は、極めて用心深くおこなう必要があるとしている。しかし対照的に、新しいニッチビジネス、商圏、サービス、製品、そして新規顧客を探す機会は、積極的に探すべきだと力説する。印刷業のようなゼロサム産業においては、売上げが伸びている販売促進あるいはロジスティックスの分野で付加価値サービスを提供して、市場占有率を高めることが重要だ。コスト削減に努めるのはもちろん、それと並行して印刷価格(料金)を引き上げる努力をしてほしい。そのためには、製品とサービスの差別化に基づく価格設定力の向上が欠かせないのだという。
(上記2項目の参考資料;FLASH REPORT Vol.4, June 2014, PIA)




知られざる「8月19日・世界写真の日」

2014-08-08 17:18:53 | 印刷人のフイルム・フイルムカメラ史探訪
知られざる「8月19日・世界写真の日」
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-2

印刷コンサルタント 尾崎 章


8月19日は「世界写真の日」、2009年にフランス政府が制定した記念日で「World
Photographic Day」と名付けられている。
銀塩写真の発明者・ダゲール(ルイ・ジャンク・マンデ・ダケール)はフランス・パリで
舞台背景画家としての活動を行いながら同僚のニセフォール・ニエプスと共に写真術の研究に積極的に取り組んでいた。
1826年にニエプスがアスファルト写真法をダゲールよりも一足先に考案、ニエプスのアスファルト写真法は6~8時間の長時間露光を必要とした非現実的な手法であったが世界最古の写真と共にニエプスの名前は写真発達史に燦然と輝いている。
ダゲールはニエプスに遅れること13年、ヨウ素と硝酸銀から合成したヨウ化銀の感光材を水銀蒸気で現像する現在の銀塩写真の基礎となる手法の開発に成功している。
初期の露光時間は10~20分、その後1~2分に感度が高められダゲールが発明した銀塩写真法は「ダゲレオタイプ」として短期間に世界普及する事となった。
8月19日の「世界写真日」はフランス政府がダゲールから「ダゲレオタイプ」の特許を買い上げて自由に私有できる政府通達を発令した日にちなみ制定された記念日である。


ルイ・ジャンク・マンデ・ダゲール


パリのダゲール通り

当時のダゲールは、パリ14区・モンパルナス墓地東側のダンフェール・ロシュロー広場近くに住んでおり、彼の住んでいたアパルトマンの通りはダゲールの偉業を称えて「RUE
DAGUERRE」(ダゲール通)と名付けられている。
このダゲール通は古き良きモンパルナス地区の趣を残しており、庶民的な商店街としても大変魅力的である。
また、ダゲール通の入り口には1910年に開業した「カフェ・ダゲール」が朝7時から深夜2時まで営業しており、現在もこの地区に住む芸術家達の人気スポットとして賑わっている。筆者もダゲール通りを夜景撮影で訪れた際に「カフェ・ダゲール」で芸術家と思しき人達とカメラ談義を行った楽しい思い出がある。
「カフェ・ダゲール」でパリの中古カメラ店で買い求めたクラッシックなフィルムカメラを片手に「フィルムカメラ談義」が出来れば写真、印刷業界人として最高である。


ダケール通りの案内標識



カフェ・ダゲール



パリの中古カメラ店

パリのバスティーユ広場から北に延びるボーマルシェ通りにあるメトロ8号線:シュマン・ベール駅周辺に多数の中古カメラ店が軒を並べておりフィルムカメラウォッチングが楽しめる。ライカ中心の店、プロ向け大判・中判カメラの店から新宿西口の中古カメラ店風の「何でも有り」の店迄、様々なタイプの店が駅を中心に展開していて「銀塩写真発祥地・パリ」にふさわしい様相を呈している。
筆者はパリ訪問時には「パリ中古カメラ店巡り」を行う事を常としており、日本メーカーが海外需要に応じて商品化した輸出専用機等を探し出して買い求めている。
AFオートフォーカス一眼レフからオートフォーカス機能だけを省略した製品や電子シャッター時代に後進国向けに製品化した機械式シャッターの一眼レフ等々、フィルムカメラの「操作する楽しみ」に溢れた往年の製品を入手することが出来、買い求めたカメラに早速フィルムを装填して前述ダゲール通り出掛けた経験も何度か有る。



シュマン・ベール駅前のライカ専門店



プロ向け大型中古カメラ専門店



銀座の中古カメラ店風に綺麗な品が多いオデオン



掘り出し物が多いユーロフォト