印刷図書館倶楽部ひろば

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エッセイ 『ピンクルームの魔力』 久保野和行

2014-02-10 11:25:45 | エッセー・コラム
『ピンクルームの魔力』 2014年2月8日 久保野和行



チャーミングな笑顔の女性が登場した。1月28日の記者会見で小保方晴子さんの論文が『Nature』誌に掲載され、その内容がSTAP細胞であった。もともと彼女はハーバード大学留学中の2009年8月にSTAP細胞の原型となる論文を完成したが、当時は「動物が刺激だけで多様性を獲得することはあり得ない」というのが常識であったため論文は採用されなかった。それが苦難苦闘を乗り越え実証データを積み上げ、理化学研究所で開花させた。


産経新聞のコラムに、今から100年前の1913年(大正2年)東北大学で化学科、黒田チカ、丹下ウメ、数学科、牧田らくの3人が入学した。その当時の文部省は書簡を持って「頗(すこぶ)ル重大ナル事件」と女性の入学に抗議した。チカ・ウメは卒業後に海外留学をして、理化学研究所で研究を勤しんだそうで、小保方晴子さんの大先輩が種を蒔いていたのかもしれない。それが今日こんな形で花開くとは両先輩も微苦笑しているでしょう。


小保方晴子さんは研究室のユニフォームである白衣を、祖母から頂いた割ぽう着姿でピンクルームに登場した。アニメのムーミンキャラクターなどが周りと囲でいました。
ピンクは心理的に、興奮状態を落ち着かせ、緊張をほぐし、リラックスさせる色と知られている。ピンクの定義としては1918年版の「レディーズ・ホーム・ジャーナル」に一般的な見方として、ピンクは「よりはっきりした力強い」と書かれている。


私も、今思い出してみると20年以上前に出会ったピンクルームがある。
それは当時、小堀グラッフィクスの故小堀社長さんでした。最新の製版設備を構築した。
その現場で出会ったのがピンクルールでした。それと同時に、そこに働く人々も女性中心の職場でした。故小堀社長さん曰く「印刷物の色彩感覚は、もっとも女性向の職業」と認識していた。将来は、力仕事はロボット化した場合は、印刷現場でも女性労働者のオペレーターが繊細で、優雅な製品を作り出していく時代が来ると述べられました。
現実に、技能五輪で女性オペレーターがメダルを獲得している。
しかし、今の日本の労働市場での女性の役割は、あまりにも軽く、曖昧な非正規労働に従事しているのが現状です。


NHKのクローズアック現代の放映画面で事実を知って驚いた。細かい数字は忘れたが、20歳から24歳までの女性労働者数約540万人が従事している。そのうち何と半分以上になる580万人が、年収で114万円と報じられた。毎月の収入が10万円にも満たない。


この内容を見て、ふと考えたのですが、印刷業界は、もともと男性中心の労働構成が主流になっていた。これをもっともフレッシュな労働市場から大量確保することで、印刷業界のイノベーションが起きないかと勝手に想像を膨らませてしまった。


考えてみれば、二極化の傾向にある、今の印刷界、大量生産でコスト低減の目指す印刷会社があれば、一方では地産地消型の印刷市場(デジタル印刷も含む)に強みを生かすマーケティング手法も存在する。
女性を中心にした職場環境は、全く違った世界が開ける可能性を秘めているのではないかと考えた。まさしくピンクルームの魔力を発揮する女子力の登場でもある。


小保方晴子さは「リケジョ(理系女子)の花形」と持て囃されている。憧れのトレンディーでもある。まさにこの旬な、20歳~24歳までの乙女を印刷業かに導こうという運動を、真剣に考えてみるのも一考かもしれません。