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印刷図書館倶楽部ひろば

“印刷”に対する深い見識と愛着をお持ちの方々による広場です。語らいの輪に、ぜひご参加くださいませ。

[印刷]の今とこれからを考える 

2017-04-04 14:22:00 | 月例会


        「印刷図書館クラブ」月例会報告(平成29年3月度会合より)

●技術という手段に振り回されないようにしたい

今は「技術という手段」に振り回され、手段を利用すれば目的が叶うという「手段の目的化」があまりに多過ぎるように思われる。産業の情報化から情報の産業化に進んでいくと、その情報産業は、つぎつぎと“新しい手段”を提供することで事業を維持しようする。とくにデジタル化は、想像を絶するほどの有効な価値を内に秘めている半面、利用しているはずの情報量に翻弄され、資源の浪費につながりかねない。ハイテクなデジタル化の進展は、アナログの特徴であるハイタッチの領域(人と人との温もり)を狭め、思考と記憶と判断という脳機能をも衰弱させるマイナス面も抱えている。フェイス・トゥ・フェイスの認識とそれ以外の文章その他による情報の認識とでは、大きな違い(信用と疑心)があるが、この点をもっと熟考する必要がある。デジタル化はコミュニケーションの劣化も起こすと考えられので、ITをコミュニケーション手段として上手に使いこなし、その差を埋めてこそ、デジタル技術を利活用した知恵化が可能となる。


●自社を客観的に観て進むべき方向を見出そう

「受け身で成長できて、やって来られた、受け身の方がロスなく、クライアントにとっても都合がよかった」というのが、大方の印刷業に共通した来し方ではなかっただろうか。その来し方を顧みて初めて、〇〇プロバイダーのどこを狙うべきか? 自社にとって有利で妥当なのかが見えやすくなるのではないかと思われる。自社を教科書どおりに企業分析して、一番手っ取り早く、しかも堅実におこなえる個々の道を峻別して、そこに意識を集中するべきではないか。まずは基本に回帰して、自社を客観的に観る必要がある。そう心がけると、いろいろと見えるようになる。その結果、自らの進むべき方向もわかるようになる。じっくり検討することで“博打”にならない堅実な戦略・施策が定められるようになる。ただし、他人(激変する経営環境)の責任に転嫁しないようにしたい。さもなければ金太郎飴の印刷業者ばかりになって、厳しいレッドオーシャンの世界から抜け出ることはできない。


●“三方良し”のマーケティングを成り立たせたい

しかし、そこには大きな課題がある。「マーケティング」である。現在のメディア業界が進めているマーケティングは、拡販・販促、買わせる企て、売り込む施策に偏っている。共生や共創を提唱する現代のマーケティング論との間には、大きなキャズム(溝)があるように思われる。パブリックリレーション、セールスプロモーション、さらにはコーポレートコミュニケーションのいずれも、印刷会社から顧客企業への一方通行(支援と自称する伝達)の息を脱していない。顧客企業と消費者の間をつなぐ双方向のコミュニケーションを支援するという共創が、これからのマーケティングの基軸になるのではないか。印刷会社を交えた3方向のコミュニケーションは、マーケティングプロセスでも、またビジネスプロセスでも未発達な段階にある。その点、中小の印刷会社は顧客の現場と密着して、個客との個別対応を機敏に、かつ柔軟におこなえる強みを生かせるに違いない。


●「〇〇プロバイダー産業」への再定義は自ずと……

持続可能な印刷企業となる前提は、派手さやトンガリ化とは逆の、地道だが真摯な印刷業の神髄を追求することにある。マーケティングの最終目的は、広告や宣伝を不要にすることといわれている。そんなマーケティングの本質を再認識し、印刷業の位置づけと方向性について印刷産業人が意識共有できたら、これからの印刷を幾つかの「〇〇プロバイダー産業」へと再定義していけるのではないか。身近な例でいえば、街の商店は商品を販売して売上げを増やしたいという課題(ニーズ)をもっている。印刷会社は、地元の消費者に買いたいと思わせるチラシやパンフレットの製作を提案すればよい。それがマーケティング支援、ソリューション(解決策)提供の意味である。そこに投入する手段が販促に役立つ企画、品質に優れた印刷メディアであり、いま風にいえばITや電子メディアとなる。分化されたかのような印刷産業のあり様が今後より一層深耕されていくと、いずれは再び統合へ向かい、その過程で産業内部から創発が生まれ、印刷業の再定義が自然と打ち立てられるような気がする。それは、これまでとは違うマーケティングのかたちであり、ソリューションプロバイダーであり、コミュニケーション・プロバイダーの位置づけとなるのではないか。印刷業を取り巻くステークホルダー、とりわけ一般の消費者、生活者との共生、共創を可能とするコミュニケーション・サービスが実現できるのではないだろうか。


●景気後退の影響をひとまず免れた米国印刷産業

 米国印刷産業(プリンターとしての製造業)の2016年における経営動向はどうだったのだろうか?  景気後退が懸念されていたものの、大統領選挙などの要因もあって2016年の米国経済と印刷市場は比較的堅調を維持し、印刷業全体の売上利益率はそれほど落ち込まずに済んだ。2012年以降、5年間の推移は1.8%-2.7%-2.6%-3.0%-2.7%で来ている。しかし、トップ四分の一に属するプロフィットリーダーのそれは9.5%(前年10.3%)だったのに対し、それ以外の印刷企業の平均は0.4%(同0.6%)に過ぎなかった。両者の差は景気好況期に入った2011年以降、縮小の傾向にあるとはいえ、景気低迷期には両者の間隔がどんどん開いてきた過去があり、今後、差が縮まっていくという予測は立てにくい。


●生産性の違いで利益率にこれだけ大きな差が…

 なぜ、このような差が出るのか。企業規模の違いでみてみると、プロフィットリーダーの場合は、“規模の経済”を享受できる大企業が利益率が極端に高く、全印刷業対象でも規模が大きくなるほど利益率が高まる傾向にある。また、従業員一人当たり利益額でもプロフィットリーダーは、全印刷業平均の3.6倍もの水準となっている。プロフィットリーダーは、より少ない人数でより多くの生産量を上げていることがわかる。そこで生産指標をみてみると、従業員一人当たりの売上高/付加価値額、工場従業員一人当たりの売上高/付加価値額のいずれも、プロフィットリーダーの方が全印刷業平均より際立って高い数字を示している。両者の大きな差から、工場現場における生産効率(とくに設備生産性)をいかに高めているか、外注費や材料費、営業費や管理費の抑制をいかに実現しているかが読み取れる。将来の設備投資を念頭に減価償却枠もきちんと確保していくというキャッシュフロー指標においても、プロフィットリーダーの方がはるかに優れており、長期戦略の面でも余裕があることが伺われる。
 ※参考資料=FLASH REPORT, 2017.1 / Dr. Ronnie Davis (Senior Vice President); PIA


●印刷文化を大切する気持で経営の基盤づくりを

 印刷業界の出荷高はGDP弾性値1.3で推移してきた。日本経済の成長に伴って印刷業界も発展することができた。しかし最近は、その整合性が成り立たなくなった。将来を予測できる何らかの指標が欲しいところだが、分子となるべき印刷産業の枠組み自体が変わったために、GDP対比では読み切れない状況が続く。産業の土俵をたんなく印刷ではなく、情報とかメディアなどの切り口から設定し直す必要がある。印刷産業の再定義が叫ばれている所以だ。製造業としての業態を離れて「コンテンツ・ファーストで」といわれるが、そのコンテンツをどう磨き活用するか。鋭いマーケティング感覚で取り組んでいかなければならない。産業としての方向性が見出せないなかで、それでも、印刷各社はポートフォリオに基づいて自社の事業領域を選択する必要がある。得意技を磨き上げて強みとし、それを持続できる経営基盤と仕組みを確立しなければならない。何をもって企業のビジョンとするか。印刷文化を大切にする気概をもって熟考してほしい。

 ※長期にわたって連載してきました本稿も、今回をもって終了とさせていただきます。


月例会報告 平成29年2月度

2017-02-22 13:17:58 | 月例会
[印刷]の今とこれからを考える 

        「印刷図書館クラブ」月例会報告(平成29年2月度会合より)

●コミュニケーション・サービス・プロバイダーへの道

 印刷業がコミュニケーション・サービス・プロバイダーをめざすには、どのように対応しなければならないのだろうか。まずは、個々の印刷会社が進むべき事業領域をはっきりと自覚すべきである。誰しも包括的な総合サービス業をめざそうとするが、たんなる“何でも屋”に陥りやすいので要注意だ。そして、対象とする業界の事情や提供する商材の最終顧客(消費者)の特性を知り、その対象のどんな領域で事業展開していくつもりなのか、その領域でどのような価値を創造し提供していこうとしているのか、そこには、いかなる競合が存在し、どのような競争条件、差別化戦略、ポジショニングでやっていこうというのか。これらを明確に意識する必要がある。顧客に向けて独自の価値を提供できる自社の強みをしっかりと把握したうえで、競争のないブルーオーシャン市場で仕事をやっていけるようになれば、それに越したことはないのだ。


●コミュニケーションの基本方針を明確に決めよう

 次に、印刷業としてのコミュニケーションの基本方針を決めなければならない。コミュニケーションというと、ともすると直接の顧客企業との関係をスムーズにするために取り組むものと受け取られがちだが、そうではない。顧客と“顧客の顧客”である消費者とのつながりを密接にしてあげることを目的としたものでなければならない。顧客企業のマーケティング戦略を協創し支援するものである必要がある。重点とすべき基本方針として考えられるのは、①コミュニケーションを円滑にする市場情報の取得と分析、②コミュニケーションを促進するコンテンツ制作、③同じく印刷物はじめとする各種メディアの製作――などである。これらを上手に組み合わせて、マーケティング支援をベースとした価値あるサービスを提供していけばよい。その際には、販売促進に役立つマーケティング情報をしっかりと収集してほしい。そうでないと、たんなるデータ収集、たんなる印刷物製作に終わってしまう。


●マーケティング・サービス・プロバイダーへの道

 それでは、マーケティング・サービス・プロバイダーという視点で考えたらどうなるか? 最初にすべきは、もう一度、商売の本質を顧みてみることではないだろうか。自社の今月の売上げ、今期の利益、三カ年計画の達成などについ関心が行きがちだが、それよりも消費者や顧客がよく生きるための支援、さらには社会全体への貢献に目を向ける必要がある。いってみれば「どうやって買わせるか」より「どうしたら買っていただけるか」である。顧客視点といいながら、真の顧客起点にはなっていないのが現状なのだ。古来、日本には「顧客第一/社会貢献」という商道文化があり、功利と倫理をバランスよく昇華させてきた。価値創造を主眼とするマーケティング3.0の思想も、顧客にスタンスを置くべきことを指摘している。昨今、経営の世界で唱えられている①カスタマーエクスペリエンス(情と理に基づく顧客の購買経験や消費者の生活体験)②カスタマージャーニー(情報収集に始まり意思決定、購入、使用、廃棄に至る消費行動の満足・感動・感謝の道程)③エンゲージメント(顧客が抱いた商材に対する信頼感、共感・共鳴と次への期待)――マーケティングの着眼点はここにある。


●印刷会社はカスタマージャーニーを意識しよう

 その一つ、カスタマージャーニーの目的は、①顧客企業や消費者の購買・消費行動の各段階のなかに対話の機会を探ること、②顧客・消費者との対話から購買・消費活動を助けるマーケティング手段を見つけること、③顧客企業の商材開発・販売活動と消費者の購買・消費活動を結びつけること――にある。ここでいう対話こそが上記で考えたコミュニケーションそのもの。手段を通して顧客企業と消費者が双方ともお得と感じてもらうことになる。この対話からは、顧客を理解→必要とされる情報の提供→適切な案内→快い取引→満足な消費→信頼の獲得→関与・絆の強化→供給と需要の適正化→市場の創発→知識化→知恵化・文化の育成→企業と消費者に共生、といった望ましい流れが生まれてくる。この間には、多くの顧客接点が存在し、そのつど「4C」(顧客にとってのコスト、価値、利便性、対話)を最適化する情報活動が必要とされる。どんな手段でどの部分にサービスを提供するか。情報提供をお手伝いできる印刷会社がマーケティング・サービス・プロバイダーとなって、両者を取りもつことの意味は非常に大きいのである。 


●自社が得意とする身近なところからスタートしたい

 そうはいっても、最初から専門用語を並べて理想のかたちを論理的に組み立てたいと思っても、実際にはなかなか難しいものがある。全体を考えすぎると前には進めない。抽象的な理論倒れになりかねない。まずは、自分の足場を冷静にみる“虫の眼”を大切にし、そこから全体を見渡す“鳥の眼”で組み立てていくようにすると、ずっと取り組みやすくなる。自分の足場とは自社が得意とする事業領域であり、強みを発揮できる市場分野である。そこを出発点とすれば、めざしたい方向も明確になり、顧客への提案内容にも具体性が伴ってくるはずである。コンピュータシステムでマクロな市場情報を収集するといっても、中小企業には不可能に近い。それより、顧客を訪ねて直接、個別のニーズを聞き出しシステムに蓄えていくというやり方の方が手っ取り早い。日々のビジネスを展開していくうえで効果的でもある。印刷会社が得意とするところだ。身近なところに拠りどころがあることがよくわかる。


●自社の立ち位置をしっかり固めることが大切だ

マーケティング活動をおこなっていくとき、セグメンテーション(市場細分化)→ターゲティング(顧客の絞り込み)→ポジショニング(差別化した地位の確立)が教科書的な基本となっているが、ポジショニングの対象は自社の製品・サービスについてであることが多い。これを自社の事業領域・得意技と読み替え、セグメンテーションの前にもってくるべきだとする学説もある。特化した市場で事業をおこなう中小企業にとって、学ぶ価値のある考え方となっている。自社の立ち位置がしっかりしていないと、激変する経営環境の雪崩に根こそぎ流されてしまう。デジタル技術云々の前に、精神的な部分の強化が必要だろう。経営理念や長期的な経営方針が確立できていないと、環境変化に対応できない。危うい立地だと自覚したら、ポジショニング替えを急ぐ必要がある。経営ビジョンと経営戦略が明確であれば、経営資源やノウハウは自ずと強化される。市場のニーズをきっちり掴んでいる企業だけが素早く変身でき生き残れる。技術や品質のレベルを押し付けがましく“自己主張”する企業は、非常に脆いという事実を再認識したい。


●自ら現状を把握し将来あるべき姿を見通して……

印刷業に携わる一人ひとりがよりよい仕事を続けるために、気重にならずに気楽に、上からでなく横からの目線で、さらに自分たちを外からみて、進みたい領域がはっきりするようなダイアローグ(発展的・問題解決型・創発型対話)が業界内で起きたらよいと思う。印刷業者と認識している個々の企業が、いま一度、自分たちを自分の目と意思で過去から現在(As is)、これからのあるべき姿(To be)をよく見つめ直し、できること、頑張ればできそうなこと(Can be)をまとめ、業界全体で共有し実行することではないか。個々の印刷会社は、外からの周りの風に追いまくられることなく、まずはじっくりと、自社の現状と将来像に思いを巡らし、経営ビジョンを明瞭にすることが先決ではないか。自社の部門や商材の実績集計については皆熱心でも、外から横から診ることが疎かではないか。コンサルタントなどによる“上から目線”の提唱や業界組織の発信だけに頼らず、方向性や力点、留意点は十分参考にしつつも、それは、個別企業の戦略や施策を策定してくれるものではないことを認識し、個々の印刷会社は自ら自社をよくみて、自らの戦略や施策、具体策を文字どおり自ら判断すべきなのである。

以上 


月例会報告 平成29年1月度

2017-01-25 09:28:14 | 月例会
[印刷]の今とこれからを考える 

      「印刷図書館クラブ」月例会報告(平成29年1月度会合より)

●価値志向のマーケティングが叫ばれている

 インターネットの浸透と活用によって売り手と買い手の距離=情報格差がどんどん縮まり、いわゆる顧客主導の時代となってきた。消費者は商品を売り込む対象(ターゲット)ではなく、共創・共生のパートナーへと変わってきている。この現象をマーケティングの理論で捉えるなら、製品志向のマーケティング1.0→顧客志向のマーケティング2.0→価値志向のマーケティング3.0へと変化しているのだ。消費者の心からの感動・共感を得られるような価値を提供していかなければ、ビジネスは成り立たない時代になった。マーケティングという用語のアタマには、①共感・共鳴を呼び起こす「協働」、②感激・満足を与える「文化」、③理念・信条・意志を高める「精神」――などの概念を冠する必要がある。創造性に満ちたビジネス、価値観を共有できるストーリー、発展や成熟を促すパワー。マーケティングの新機軸はここにある。


●消費者の願いが変わっていることに意識して

 消費概念はどのように変わってきたのだろうか? 消費者はモノとして商品を購入するだけでなく、商品の誕生から終わりまでの物語に添いたいと思っている。①商品のデザイン・品質だけでなく背後にあるストーリー、②技術的な機能や価格だけでなく利便性、感動、会話――を望んでいる。新しい時代の生活提案、環境保護などにも配慮した価値づくりを、顧客は企業に強く求めている。あくまで顧客起点のマーケティング支援、つまり顧客(の願い)とともに製品やサービスをつくり上げていくべき立場にあることを、企業は意識しなければならない。印刷産業こそ、そうした輪のなかに加わっていくべき立場にある。印刷産業が強みとする情報編集力、得意な“伝える力”が、こうした時代の要請を後押しできるのではないだろうか。


●よく生きるための生活提案・商品化に全力を

 マーケティングの目的といえば、これまでは人びとの便利で快適な暮らしのための製品企画・商品化にあった。これからは、よく生きるための生活提案・商品化が主目的となる。個々の顧客のニーズを把握して、それらに応えられるビジネスを築けるのか、的確な製品・サービスの提供で支援していけるのか、価値観に共感し共に満足を得ていくことができるのか。求められる課題は多いが、顧客と企業が一緒になって成熟度を高める必要がある。これこそ共創・共生マーケティングの真髄である。消費者も企業も一緒に“よく生きる”ことで、持続可能な社会に貢献していくことができる。印刷ビジネスのあり方、印刷メディアの役割、セールス・プロモーションの手法、その他すべてが転換期にある。個別対応型の受注産業としてやってきた印刷産業こそ、これからのコミュニケーションサービスの最先端に立ち、リーダーとなり得る資格をもっているといっても過言ではない。 


●印刷メディアと電子メディアを活かし切ろう

 印刷業とはどうあるべきかを再定義できたら、電子情報産業との違いを確認して、両者を複合し、あるいは相互に補完し合うことによって、新しい価値を創造していくことを検討した方がよさそうだ。印刷業者は、デジタル技術を駆使してコンテンツを加工・管理し、可変印刷だけでなく電子メディアをも制作できる立場を築いている。その逆に、電子メディアサービス業者は印刷サービスを手がけることができない。つまり印刷産業は、アナログとデジタルの特性をともに使いこなし、さらなる機能や効用をもったメディアに育てあげることのできる力をもっている。これこそ、印刷産業が率先して蓄積してきたノウハウ「見えない資産」なのだ。利用者や消費者が求める多様なメディアの編集と情報発信に、柔軟に対応することで印刷産業自らの発展をめざしていけるはずである。


●真のコミュニケーションサービスを提供しよう

 印刷業が取り組んでいるはずの情報コミュニケーションサービスは、実際には、顧客企業から消費者への一方通行の情報を提供しているにすぎない。これからは、企業(直接の顧客)と消費者(顧客の顧客)との双方向の情報のやり取りを支援する真のコミュニケーションサービスを提供していかなければならない。印刷産業の特質として古くからいわれている御用聞き、あるいは“お手伝い業”の本質はここにある。コミュニケーションの結果、その体験がその後の購買体験や販売促進につながるとするなら、印刷産業がマーケティングソリューションを提供する意義は大きいはずである。印刷産業は、歴史的な経緯からプリントサービス・プロバイダーをめざしがちだが、コミュニケーションサービス・プロバイダーとしてのビジネスモデルを模索した方が発展しやすい。この事業領域でのデジタル技術の活用、とくにITが提供してくれるシステム(仕組み)の導入という点では、まだまだ未成熟なのではないか。それだけに発展の余地は無限にあると思われる。


●紙の書籍市場は、どっこい生き残るかも……

 活字離れの現象と電子メディアの浸透とが相まって、印刷出版市場の縮小が続いている。アメリカでも同じような傾向にあり、5年前までは書籍の将来は明るくないとみられていたという。電子書籍の市場は拡大を続け、読者が何を“読書”とするかを探るのは非常に困難だとされてきた。しかし、アメリカ人の3分の2は未だに印刷された紙の書籍を読んでいるのが現状で、デジタル技術隆盛の現代にあっても「紙の書籍は活性化され得る」という見立てがなされている。電子書籍は印刷出版市場を駆逐することなく、その影響はきわめて限定的だとする。これまでは、紙の書籍が必然的に抱える難題(大量生産によるコスト高、返品問題など)から避けられないといわれてきたが、幸いに、デジタル印刷特有のプラットフォームが解決してくれる。現に、デジタル印刷された書籍のページ数は大きな成長が見込まれている。


●デジタル印刷システムが紙の書籍を救う……

 出版企画に始まって編集加工、高速インクジェット出力、在庫管理に至る新たなサプライチェーンの構築が、紙の書籍の救世主となってくれる。書籍を1冊単位でデジタル印刷できることの利点は、例えば校正紙の作成、返品リスクの回避、在庫解消など幾つも考えられる。もちろん、小ロット対応で製造コストは大幅に減少し、納期は短縮でき、市場へも迅速に提供可能となる。増刷や再販など意に介さない。下記の論文によると、伝統的な書籍に対する需要は明らかに安定していて、デジタル印刷システムが出版社や印刷会社に新しいビジネスチャンスをもたらしてくれると強調している。ワントゥワンマーケティングを柱としていかなければならない商業印刷分野についても、同じような見立てができるのかも知れない。


●通知書や請求書もやはり紙でなければ……

実は、同様の観測は、トランザクション・ドキュメント(バリアブル印刷した個人宛ての通知書、請求書、小切手など)にも当てはまるという。大半のアメリカ人は依然として、記録・保管・備忘に有効な紙の通知書を信頼していて、ペーパーレスで配信されてくるものを好まない傾向がある。企業が懸命にペーパーレス化をはかっている割に、浸透していないのが実情である。人びとには受信する心の準備さえできていない。だからといって、印刷会社は安心すべきではないというところに、論文の趣旨がある。電子メディアが紙メディアに取って変わろうとしているときこそ、カラー化による判りやすさの追求、パーソナライズ化した広告情報の掲載などで「個々の受取人を意識したコミュニケーションの改善をはかる必要がある」と力説する。販促情報を掲載したトランスプロモはむしろ増え続けると予測されているのだから……。
※上記3項目の参考資料=Barb Pellow ; Trend, What They Think? 2016.9

以上

月例会報告 2016年12月度

2016-12-20 17:34:19 | 月例会
[印刷]の今とこれからを考える 

        「印刷図書館クラブ」月例会報告(平成28年12月度会合より)


●産業の知識化、知識の産業化に寄与しよう

社会は工業社会→情報社会→知識社会→創造社会というメガトレンドに沿って変化している。情報についても歩調を合わせるかのように、記号(文字や画像、言葉など)の形式知が次第に練り上げられて知識化し、やがて知恵化されるという道筋を辿っている。人びとの知恵は多様な価値観となり、再び共有化されて未来社会の創造に役立っていく。そんな変化が各分野、各地域で波のように、しかもタイミングをずらして次々と起こっている。形式知は一段上の暗黙知になるという繰り返しでスパイラルに発展し、各段階ではつねに産業化が伴っている。そうしたなかで印刷メディアは例えば、理解しやすい→便利→知識となりやすい→有益→応用しやすいといった流れに乗っていく必要がある。
印刷業として担うべきは産業の知識化、知識の産業化に寄与すること、現在の暗黙知をさらに高度な形式知に仕上げるために、情報を的確に編集してメディアとして提供することにある。どう関わっていくのか? 情報編集力をどれだけもっているのか? が問われ続けるだろう。


●「情報加工・情報流通サービス産業」になろう

 印刷とは何かを再認識して狭すぎる概念を未来適応型に再定義し、印刷産業そのものを再構築できたらと思う。そのためにまずやるべきは、印刷の手段、印刷メディアの機能と目的について改めて見つめ直し、それを前提に将来あるべき印刷業の位置づけ(ポジショニング)を明確にする必要がありそうだ。その機能には、主機能として情報伝達・保存など、副次機能には販売促進、ロジスティックス、その他がある。
次に、印刷産業のあり方を深掘りするとしたら、どのような定義が適切なのか? 印刷物+付帯サービス=モノビスを事業領域とすべきだといわれているが、現行の付帯サービスでは顧客の真の不満を解決できないという課題が残る。そこで追求すべき業態は「情報加工・情報流通サービス産業」となる。「現在はこうだけれど、こうあったらもっと良いのに」という課題、顧客の不満、市場ニーズを徹底的に把握したうえで、メディアを核とした問題解決策(ソリューション)を提供することに尽きるだろう。それには、あくまで顧客起点(押し付けがちな顧客視点ではなく)で、しかも顧客の言いなりになることなく、協創・共生の考え方で価値を創造していくという姿勢が欠かせない。


●イノベーションによって新しい事業領域を築こう

これからの印刷イノベーションとは、必要な情報を求められるように編集(コンテンツ処理)し、求められるタイミングに求められるメディアに、さらに求められる品質・コスト・納品条件で提供することにある。決して、印刷技術の革新だけがイノベーションではない。情報の加工・流通サービスについても、情報自体の意味づけ付与と有効活用、創発型の“お役に立てる”管理をイノベーションの対象としなければならない。そのうえで、顧客産業や地域社会との協創、メディア産業やIT産業との協調により、印刷産業独自の価値を提供することである。直感的な顧客視点ではなく“顧客の顧客”視点で、また、単純な顧客視点ではなく顧客満足から顧客感動へという顧客基点の思想で取り組んでいきたい。
仕入れ先、発注顧客から利用者、消費者までをも含めたバリューチェーン(広義のサプライチェーン)のなかで、印刷業ならではの価値を提供できる役割を築かなければならない。印刷産業レベルとしてはもちろん、個々の印刷会社も自らの業態、事業領域、製品・サービスについて、強みを発揮できるようなポジションを固めていく必要がある。


●製造業プラスアルファの業態に改革していこう

 具体的なビジネスモデルではどうあるべきか? 幾つか考えられるが、例えば①製造業でサービス業なら「プリントサービス・プロバイダー」=生産指向、②製造業でコンサルティング業と考えるなら「インフォメーション・プロバイダー」=情報指向、③製造業でメディア業とするなら「ソリューション・プロバイダー」=マーケティング指向――などがある。①には印刷アウトソーシング、フルフィルメントサービス、プリントマネジメントサービスなどがあるだろうし、②にはコンテンツ・マネジメントほか、③には広報・パブリックリレーション、セールスプロモーション、ビジネス・コミュニケーションといった業態が挙げられるだろう。
それぞれの土台には、印刷物を含むメディアがあり、加えて何らかの関連サービスを提供(プロバイド)することに変わりはない。個々の印刷会社としてはいずれかに重きを置いて特化し、差別化した独自のビジネスモデルを構築する必要がある。


●収益性の悪化を招く主な要因はどこにあるか?

(参照・9月度例会報告) 「経営分析をしなければ有効な改善策を見出せない」という問題提起のもと、実際のアクションプランを提言したいとしていたアメリカの印刷産業団体PIAが、その前段階として、収益性の悪化を招く主な要因はどこにあるかを指摘するレポートを送ってきた。印刷会社(製造業としてのプリンター)が改善活動に取り組む際の点検項目にしてほしいとしているのだ。高収益型のプロフィットリーダーの水準と比べて、一般の印刷会社のそれが極端に低すぎる項目は、①印刷価格②工場の稼働率③付加価値④従業員1人当たり売上高⑤工場従業員1人当たり売上高――だという。逆に高すぎるのは①人件費②材料費③製造コスト④営業経費⑤一般管理費――だとしている。PIAがもっとも強調しているのは以下の観点である。


●特化と差別化で印刷価格を引き上げるのが有効

 印刷価格を少しでも上げることができれば付加価値が引っ張り上げられ、その構成要素である利益額は、価格の引き上げ率より高い割合で大幅に利益を増やすことができる。顧客に値上げを認めてもらうには、高い付加価値を生み出してくれる特化と差別化をはからなければならない。プロフィットリーダーは、高価格と並んで低コストによっても高い利益を生み出しているが、あまりにも多くの印刷会社がコスト削減に焦点を当て過ぎている。外部購入価値である材料費や外注費、あるいは付加価値の構成要素となる人件費、販売費、管理費などの削減に努める以上に、何とか価格を引き上げる努力をした方がはるかに効果的なのである。工場の稼働率が低いと生産性が一気に低下してしまうが、肝心の稼働率を高めるためには、特化と差別化に応えてくれる優良顧客向けの高い価格と、そうでない価格に敏感な顧客向けの低い価格とのバランスを上手にとる必要がある。価格に対する感度により顧客を階層化して、ビジネスチャンスを失わないようにしなければならない。
 ※参考資料=PIA Report「Top Ten Reasons for Low Profits」; Dr. R.H.Davis & T.McNaughton


●抱え込むオールマイティ―発想は通用しない

 印刷ビジネスで今後成功を収めていくには、専門領域の視点でソリューション・プロバイダー機能を発揮する必要がある。「何でも引き受けます」のオールマーティーでは独自の事業基盤は築けないだろう。コンテンツ処理のためのデバイスはすでに多様に出揃っており、それらを効率よく使いこなしたとしても戦略的な差別化ははかれない。IT隆盛の時代にあってこそ、人びとが必要とするもの(ニーズ)を“哲学的”に判断して総合的に産業化、つまり自社ならではのビジネスとすることが重要なのだ。そのために不可欠なのはやはり、連携できる企業とのネットワーク、顧客とのフェイス・トゥ・フェイスの手段であるコミュニケーションを確立することである。連携企業あるいは顧客とのWin-Win関係を築き、各自の得意技を持ち寄りながら製品をつくる時代になっている。そのなかで付加価値をどう有利に獲得するか。自社の強みを徹底的に主張しなければならない。一社で抱え込むオールマイティ―発想ではもはや通用しない。

以上

月例会報告 2016年11月度

2016-11-17 10:28:53 | 月例会
[印刷]の今とこれからを考える 

        「印刷図書館クラブ」月例会報告(平成28年11月度会合より)

●メディア・リテラシーで出版産業を後押ししよう

 出版業界の現状をみると、厳しい経営環境にありながら、革新的な発想で自ら打開しようという意思があまりみられないような気がする。時代の流行を追った販売部数第一の姿勢が目につく。販売部数を重視してはいるもののベストセラーを達成できる本はごく限られ、返品率は相変わらず高い。手を携えているはずの印刷業界も、積極的に連携(コラボレーション)して企画面からサポートしようという姿勢が弱いようだ。両業界とも、市場や産業のかたちを変えてしまった情報のデジタル化についていけず、ビジネスの恩恵に預かれていない。コンテンツ・ファーストが重要であることに、もう一度、気づくべきではないか。コンテンツの内容がよければ、読者が欲している個々のニーズに的確に応えることもできる。印刷業界はコンテンツを加工、運用、管理して、メディアのかたちにして読者に伝えることに手慣れているはず。メディアとは、コンテンツの処理プロセスを表現したもの、読者とのつながりを可能にするものである。印刷業界特有のメディア・リテラシー機能を発揮して、出版業界の活性化を支援していってほしい。


●果たして顧客と消費者の間をとりもっているだろうか

 印刷会社にとってのマーケティング、コミュニケーションというと、ともすると直接の顧客との良好な関係を維持するものと考えられがちである。しかし本当の意味は、その顧客とその向こう側にいるエンドユーザー、消費者との相互関係を望ましい状態にするための支援を、後方からあるいは協働しておこなうところにある。日本では、かなり前から顧客のビジネスに役立つ“お手伝い業”に徹するようにと提唱されているが、そうした考え方は今や、取り扱っている製品・サービスが生産財か消費財かの如何を問わず、どの産業でも共通した認識となっている。印刷産業においてももう一度、原点に立ち返って、この言葉を見つめ直す必要がある。


●「カスタマー・コミュニケーション・パートナー」になれ

そんな折、消費者の購買行動を追跡しながら、クロスチャネルの機会を的確に捉えたマーケティング戦略を顧客に提案すべきだとの見解が、アメリカの有識者から示された。印刷会社は従来のビジネスモデルを自ら変革して「カスタマー・コミュニケーション・パートナー」になれ、というのだ。企業はこれまで、ターゲットとする消費者が何を購入するかを調査することで市場動向を探っていけば十分だったが、パーソナリゼーションの進んだ今、個々の消費者がどんな機会に触発されて買ったか(消費財)、取引先企業がどのようなプロセスを経て成約したか(生産財)を把握することが重要になっている――アメリカからの提言はこう前置きする。モバイルデバイスやソーシャルネットワークシステムが浸透した社会では、消費者も企業も豊富な情報入手手段をもち、念入りな調査の末に購入を決断している。こうした新しい時代における消費者/企業の購買行動を、深く理解することがマーケティング関係者に求められているとしている。


●購買行動の機会、段階ごとの購買体験のデータを

有名なAIDMAの法則では、購入者が注目-興味-欲求-記憶-行動という、購買決定に至る反応プロセスのどの段階にあるかを想定して、それに見合った有効なマーケティング活動を展開することの重要性を説いている。この提言ではさらに加えて、マルチメディアによる広告を含めた口コミから店頭での接客までの多様なチャネルでおこなわれる購買体験を、全て把握すべしだと強調する。そうすることによって、どこに購買決定の動機、ビジネス上の付加価値があるかがわかってくるという。購買行動を段階ごとに把握し予測するためにはどうしたらよいのか? 提言では、消費者や取引企業とのあらゆる顧客接点での、いつ・どこで・何を・なぜといった顧客体験をデータとして収集し、顧客を次の段階へ導くために活用する必要があるとしている。その際、生きてくるのがパーソナリゼーションの推進者ともいえるモバイルデバイス、SNSツール、Webサイト、DM類などである。良質なデータを集めて分析すれば、ターゲットとする個(・)個(・)客の購買行動を予測できる明確な基準が得られる。購買の経緯が掴めれば、的確なマーケティング用のコンテンツを作成でき、マーケティング戦略の策定が可能になる。


●マルチチャネルを通してどのように支援していくか

 印刷会社はこれまでとは異なったビジネスモデルを探っている真っ最中だが、実は顧客企業も同じように新しいビジネスモデルを模索している。個々の消費者や取引先に有効な製品情報・サービス情報を伝え、好ましい関係を築くことに追われている。だからこそ印刷会社は、顧客企業のさらに先にいる“顧客の顧客”を見通さなければならない。「直接の顧客に販売促進のための情報・メディアを提供するだけでなく、顧客と“顧客の顧客”の間で交わされるコミュニケーションをいかに円滑にするのか、その負担を軽くするためにマルチチャネルを通してどんな支援をしていくかに力を注ぐ必要がある」と提言は主張するのだ。データにより購買行動の推移が把握できれば、それぞれの顧客接点に適したコンテンツを作成していくことが可能になる。これこそ、印刷会社が提案すべき「クロスチャネルキャンペーン」ということになる。


●クロスメディアでマーケティング戦略を提案しよう

 企業は、消費者や取引先に連続した購買体験の機会を与えることがきわめて重要になっている。顧客企業は今こそ、カスタマー・コミュニケーションを後押ししてくれる戦略的なパートナーを求めている。データ分析に基づいて作成したクロスメディアを武器に、購買行動の段階ごとのカスタマー・コミュニケーションを支援できる印刷会社の出番がやってきた。データ管理やコンテンツ加工などを加味した高付加価値型サービスで顧客支援する――そんなビジネスチャンスが到来しているのである。アメリカ発の今回の提言はしつこいくらいに、「印刷会社が差別化によって競争を勝ち抜こうと望むからには、顧客企業が展開しようとしているマーケティング戦略を“お手伝い”できるよう、自らの印刷製品/サービスのあり方(ポートフォリオ)を変えなければならない」と繰り返し力説している。
※参考資料=What They Think? 2016.8/9; Barb Pellow、Group Director, InfoTrends


●顧客視点、顧客基点に問題はないのだろうか?

 社会の仕組みや市場構造が変わったことを理解するのは重要だが、変化のなかで多様化し流動化してしまった個々の顧客ニーズに対応しようとするなら、自社が変身するところからスタートすべきである。自ら変わらずして、市場の要望に応えることはできない。世の中の動きを“ハッと”気づく必要があるのだ。「印刷会社はいわれたことしかしない。頼みたいことをやってくれない」という恨み節?が、一般の人たちから聞こえる。どこの印刷会社も“本当の”顧客目線で仕事をやってこなかったのではないか? 「印刷会社は顧客と真剣に向き合っているのか」という指摘もあるが、深く考えれば、顧客視点、顧客基点が問題になっている間は、印刷会社が望まれている真の仕事は達成できないのではないか。顧客の先にある消費者が一番欲しいと思っていることをいかに見つけ出し、顧客のビジネスをどう支援するか――手がかりはそこにある。


●印刷文化の育成を今も担っているだろうか?

 印刷文化の重要性については、これまでもあらゆる機会に叫ばれてきた。しかし、当の印刷産業が日々、これを意識して仕事をしているかというと甚だ疑問である。文化といっても歴史回顧型のものだけとは限らない。現在とり扱っているコンテンツは何の目的があり誰に伝えたいのか、何に役立ってどのようなかたちで保存されたいのか――こんな意識をもって印刷メディアを作成しているだろうか。感動と期待をもってもらえる製品をつくることが、豊かな社会や産業、生活、教育に貢献して、将来の文化として蓄積されていくことを再認識したいものである。


以上