ズームコンパクトカメラ時代までの隙間製品・2焦点カメラ
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-12
印刷コンサルタント 尾崎 章
小西六写真工業(現:コニカミノルタ)が1968年に発売した35mmフィルム使用のコンパクトカメラ:コニカC35は、優れたコストパフォーマンスに当時の国鉄旅行キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」による女性の旅行ブーム拡大と当時の人気グループサウンズ・ボーカル歌手・井上順さんの「じゃ~に~コニカ」のCM効果が加わり短期間に60万台を超える大ヒットとなった。

コニカC35EF「ピッカリ コニカ」
更に、コニカは1975年にストロボ内蔵のコニカC35EF「ピッカリ・コニカ」、1977年にはオートフォーカス対応のコニカC35AF「ジャスピン・コニカ」を連続ヒットさせ、一時期はレンズシャッターカメラの国内シェア40%を超えるカメラ史に残る大きな成果を挙げている。
このコニカC35シリーズはもとより当時の各社35mmコンパクトカメラは焦点距離38~40mmの準広角レンズを搭載しており、ユーザーからは広角・望遠のバリエーションに対する要望が増加していた。しかしながら、ズームレンズのコンパクトカメラ搭載はコストパフォーマンスを含めた問題が多く、1987年に旭光学工業(現:リコーイメージング)が発売したペンタックス ズーム70 DATE迄の時間を要する事になった。
この間の市場ニーズに答えた製品が、広角・望遠レンズを切り替えて使用する2焦点切換えコンパクトカメラで1980年にミノルタカメラ(現:コニカミノルタ)がミノルタAF-TELE QD(クオーツデート)を発売、カメラ各社が競ってこれに追随する展開に至った。

ミノルタAF-TELE QD
2焦点切換え機能搭載、ミノルタAF-TELE QDカメラ
ミノルタカメラが1980年に発売したミノルタAF-TELE QD(クオーツデート)は、38mm準広角レンズの光学系にコンバーターレンズを切換え機構によって挿入、焦点距離を60mmに拡大する単純機構であった。
画質面では多少の制約は有るものの手軽に焦点距離を切換えて撮影できるとして人気機能となり、各社がこれに追随した。

ミノルタAF-TELE QD焦点距離切換えレバー

38mmと60mmの画角変化(ミノルタAF-TELE 富士川橋梁)

コンバーターレンズ未挿入時

コンバーターレンズ挿入による焦点距離拡大
●1985年に小西六写真が発売したコニカ望遠王MR-70は、38mm準広角レンズの焦点距離を70mm迄拡大して他社製品との差別化を行っている。70mmの焦点距離に「望遠王」と名付けた「コニカの大胆さ」が話題になり、初心者向けデジタル一眼レフに付属するズームレンズが100~110mm程度迄対応している今日では想定できないエピソードである。
2光軸切換え機能搭載カメラ
前述のコンバーターレンズ挿入による焦点距離拡大に対して2種類のレンズをターレット式に回転させる2焦点カメラと電動ミラーによって2種類レンズの光軸を切り替えるコンパクトカメラが登場して注目を集めた時期が有る。
前者には、1985年に富士フィルムが発売したフジ・TWING TW-3があり、後者方式には1988年にオリンパス光学が発売したオリンパスAF-1 TWINが有る。

フジ・TWING TW-3

手動ターレットによるレンズ切換え(TWING TW-3)
●フジ・TWING TW-3は、ハーフサイズの画面サイズで23mmと69mmのレンズが回転式ターレットに装着されていた。この2種類のレンズは35mmフルサイズ換算で32mmの広角レンズと96mmの望遠レンズに匹敵していた。
38mmと70mm前後の焦点距離対応を行っていた標準的な2焦点方式と比較して広角側・望遠側のカバー領域が広く、更にポケットに入るコンパクト性も注目を集めた。
●オリンパスAF-1 TWINは、35mm広角レンズと70mmレンズをカメラボディに上下に装着、カメラ内部の電動ミラーによって光学系を切り替えて使用する光軸切換え方式であった。レンズ構成も5群5枚の望遠レンズを搭載した事よりコンバーターレンズを使用する前述2焦点カメラとは異なり高画質の画像を得る事が出来た。

オリンパスAF-1 TWIN

オリンパスAF-1 TWINの撮影例(35mm,70mm 伊豆下田)
発売価格は43.800円、当時のマニアルフォーカス普及型1眼レフ並みの価格で有ったがマニアックな機能が支持・評価され人気カメラとして注目を集めた。
また、オリンパスAF-1 TWINはJIS4等級の生活防水機能を有しており、使い勝手の良さも評価を高める要因となった。
海外旅行用途をターゲットとした2焦点カメラ
1989年にズームコンパクトカメラが登場した以降、2焦点切換えカメラ及び2光軸切換えカメラ市場は一気に終息へと向かったが当時のズームコンパクトカメラが未対応の28mm広角レンズを搭載した2焦点カメラが海外旅行向けカメラとして新たな需要創生を試みている。
1990年にフジフィルムとキャノンが相次いで28mm広角レンズを搭載した2焦点切換えカメラを相次いで発売している。フジフィルム製品はフジ・カルディア・トラベルミニ、キャノン製品は、キャノン・オートボーイWT28(ワールドトラベラー)である。

キャノン オートボーイ WT28
フジフィルム及びキャノンは、製品名に「トラベル」を明記して旅行向けカメラである事をアピールしている。
両機種共に海外旅行で歴史建物を撮影する場合等で必要度の高い28mm広角レンズを搭載、28mm広角レンズをコンバーターレンズによって人物スナップ撮影に適した45mm標準レンズに焦点距離を拡大する機能を有していた。
特に、キャノン・オートボーイWT28は、世界24都市の日付け・時差・サマータイムに対応したデート写し込み機能を搭載、当該機能は2022年まで対応する為に現在でも便利に使用出来る「現役・旅行用フィルムコンパクトカメラ」である。

キャノン オートボーイ WORLD TIME機能
2焦点切換えカメラ及び2光軸切換えカメラは、フィルムカメラ工業史にも登場する事の少なく忘れられた存在の隙間領域カメラでは有るが、電動ミラーによって光軸を切換える機能等を始めとするユニーク機能を搭載した機種も多く、趣味性の高いフィルムカメラとして今日でも楽しむ事が出来る。
印刷図書館クラブ
印刷人のフィルム・フィルムカメラ史探訪 VOL-12
印刷コンサルタント 尾崎 章
小西六写真工業(現:コニカミノルタ)が1968年に発売した35mmフィルム使用のコンパクトカメラ:コニカC35は、優れたコストパフォーマンスに当時の国鉄旅行キャンペーン「ディスカバー・ジャパン」による女性の旅行ブーム拡大と当時の人気グループサウンズ・ボーカル歌手・井上順さんの「じゃ~に~コニカ」のCM効果が加わり短期間に60万台を超える大ヒットとなった。

コニカC35EF「ピッカリ コニカ」
更に、コニカは1975年にストロボ内蔵のコニカC35EF「ピッカリ・コニカ」、1977年にはオートフォーカス対応のコニカC35AF「ジャスピン・コニカ」を連続ヒットさせ、一時期はレンズシャッターカメラの国内シェア40%を超えるカメラ史に残る大きな成果を挙げている。
このコニカC35シリーズはもとより当時の各社35mmコンパクトカメラは焦点距離38~40mmの準広角レンズを搭載しており、ユーザーからは広角・望遠のバリエーションに対する要望が増加していた。しかしながら、ズームレンズのコンパクトカメラ搭載はコストパフォーマンスを含めた問題が多く、1987年に旭光学工業(現:リコーイメージング)が発売したペンタックス ズーム70 DATE迄の時間を要する事になった。
この間の市場ニーズに答えた製品が、広角・望遠レンズを切り替えて使用する2焦点切換えコンパクトカメラで1980年にミノルタカメラ(現:コニカミノルタ)がミノルタAF-TELE QD(クオーツデート)を発売、カメラ各社が競ってこれに追随する展開に至った。

ミノルタAF-TELE QD
2焦点切換え機能搭載、ミノルタAF-TELE QDカメラ
ミノルタカメラが1980年に発売したミノルタAF-TELE QD(クオーツデート)は、38mm準広角レンズの光学系にコンバーターレンズを切換え機構によって挿入、焦点距離を60mmに拡大する単純機構であった。
画質面では多少の制約は有るものの手軽に焦点距離を切換えて撮影できるとして人気機能となり、各社がこれに追随した。

ミノルタAF-TELE QD焦点距離切換えレバー

38mmと60mmの画角変化(ミノルタAF-TELE 富士川橋梁)

コンバーターレンズ未挿入時

コンバーターレンズ挿入による焦点距離拡大
●1985年に小西六写真が発売したコニカ望遠王MR-70は、38mm準広角レンズの焦点距離を70mm迄拡大して他社製品との差別化を行っている。70mmの焦点距離に「望遠王」と名付けた「コニカの大胆さ」が話題になり、初心者向けデジタル一眼レフに付属するズームレンズが100~110mm程度迄対応している今日では想定できないエピソードである。
2光軸切換え機能搭載カメラ
前述のコンバーターレンズ挿入による焦点距離拡大に対して2種類のレンズをターレット式に回転させる2焦点カメラと電動ミラーによって2種類レンズの光軸を切り替えるコンパクトカメラが登場して注目を集めた時期が有る。
前者には、1985年に富士フィルムが発売したフジ・TWING TW-3があり、後者方式には1988年にオリンパス光学が発売したオリンパスAF-1 TWINが有る。

フジ・TWING TW-3

手動ターレットによるレンズ切換え(TWING TW-3)
●フジ・TWING TW-3は、ハーフサイズの画面サイズで23mmと69mmのレンズが回転式ターレットに装着されていた。この2種類のレンズは35mmフルサイズ換算で32mmの広角レンズと96mmの望遠レンズに匹敵していた。
38mmと70mm前後の焦点距離対応を行っていた標準的な2焦点方式と比較して広角側・望遠側のカバー領域が広く、更にポケットに入るコンパクト性も注目を集めた。
●オリンパスAF-1 TWINは、35mm広角レンズと70mmレンズをカメラボディに上下に装着、カメラ内部の電動ミラーによって光学系を切り替えて使用する光軸切換え方式であった。レンズ構成も5群5枚の望遠レンズを搭載した事よりコンバーターレンズを使用する前述2焦点カメラとは異なり高画質の画像を得る事が出来た。

オリンパスAF-1 TWIN

オリンパスAF-1 TWINの撮影例(35mm,70mm 伊豆下田)
発売価格は43.800円、当時のマニアルフォーカス普及型1眼レフ並みの価格で有ったがマニアックな機能が支持・評価され人気カメラとして注目を集めた。
また、オリンパスAF-1 TWINはJIS4等級の生活防水機能を有しており、使い勝手の良さも評価を高める要因となった。
海外旅行用途をターゲットとした2焦点カメラ
1989年にズームコンパクトカメラが登場した以降、2焦点切換えカメラ及び2光軸切換えカメラ市場は一気に終息へと向かったが当時のズームコンパクトカメラが未対応の28mm広角レンズを搭載した2焦点カメラが海外旅行向けカメラとして新たな需要創生を試みている。
1990年にフジフィルムとキャノンが相次いで28mm広角レンズを搭載した2焦点切換えカメラを相次いで発売している。フジフィルム製品はフジ・カルディア・トラベルミニ、キャノン製品は、キャノン・オートボーイWT28(ワールドトラベラー)である。

キャノン オートボーイ WT28
フジフィルム及びキャノンは、製品名に「トラベル」を明記して旅行向けカメラである事をアピールしている。
両機種共に海外旅行で歴史建物を撮影する場合等で必要度の高い28mm広角レンズを搭載、28mm広角レンズをコンバーターレンズによって人物スナップ撮影に適した45mm標準レンズに焦点距離を拡大する機能を有していた。
特に、キャノン・オートボーイWT28は、世界24都市の日付け・時差・サマータイムに対応したデート写し込み機能を搭載、当該機能は2022年まで対応する為に現在でも便利に使用出来る「現役・旅行用フィルムコンパクトカメラ」である。

キャノン オートボーイ WORLD TIME機能
2焦点切換えカメラ及び2光軸切換えカメラは、フィルムカメラ工業史にも登場する事の少なく忘れられた存在の隙間領域カメラでは有るが、電動ミラーによって光軸を切換える機能等を始めとするユニーク機能を搭載した機種も多く、趣味性の高いフィルムカメラとして今日でも楽しむ事が出来る。