印刷図書館倶楽部ひろば

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初詣と“カミサマ”の因縁 

2013-01-17 15:21:02 | エッセー・コラム

『初詣と“カミサマ”の因縁』  2013年元旦 久保野和行



(初詣でにぎわう柴又帝釈天)


新年の事始は初詣で賑わう。明治神宮や成田山新勝寺が多くの人が参拝する。しかも日本人の寛容な心が表現されている。

明示神宮は神様を祭っているが、一方の成田山新勝寺は仏様を祭っている。日本語にも神社仏閣の熟語が存在する。日本古来の神様は八百万の神と言われ自然信仰の風習があった。
「日本書紀」によると仏教伝来が欽明天皇(552年)朝鮮半島の百済から伝わった。それから約60年程度で日本風土の融合し、聖徳太子の「十七条の憲法」(604年)に反映されている。


世界の歴史の見ればわかるが、血にぬられた宗教戦争の悲惨さが各地で起きており、安らぎを求めて平和のひとときを過ごしたい民衆に、自宗教の主張が、醜い争いごとにつながり究極の暴力支配を呈する。
地続きの国境では政治でも宗教を手段で使うし、それだけ犠牲も多かった。しかし日本は島国のガラバゴス現象で共存共栄の進化と遂げた。

一方で、我等の印刷業界での“カミサマ”いえば、自ずと知れず『紙さま』に尽きる。紙の歴史も、紀元前300年ごろエジプトでパピルス草という植物の茎を薄く切って絵や文字を記録した。




このパピルスは英語の“ペーパー”の語源になっている。中国の後漢時代に蔡倫が和帝へ紙を献上したと『後漢書巻106』に記載されている。歴史の長さからの知恵も多く知見が伺える。


私が最も興味があるのが、紙のサイズ設定である。紙にはAサイズ、とBサイズが存在する。それも究極の叡智でもある。例えば、A0(エイゼロ)サイズは、1メートル×1メートルの面積比であり、それが6:4の黄金比で割られていきA6サイズが世界共通のハガキサイズに収まっている。もう一方のB0(ビーゼロ)サイズは、1.5メートル×1.5メートルの面積比で構成され、同じく黄金比6:4で並んでいる。


日本の浮世絵はBタイプ主流のサイズで構成されている。ふっと不思議に思うことがある。太古の昔から使われた測定法が、フラン革命後の1790年3月国会議員であるタレーラン・ペリゴールの提案で、創設することが決議した。それを受けて1791年に、地球の北極点から赤道までの子牛線弧長の1000万分の1として定義される新たな長さの単位「メートル」が決定された。


その後、1867年のパリ万国博覧会で世界的に広がった。メートル法の設定のプロセスは良く分かるが、それと別の視点で見れば、太古で使用された測定法が、現代の論理的な根拠になっているが、そもそも、その昔の人々が北極点から赤道までの距離の1000万分の1が、イコール1メートルになるとは、これこそ神(紙)のみ知る神秘の世界といえる。


日ごろ印刷業界にいながら、こんな些細な現象に気づかないのが普通であるが、たまには“カミサマ”(紙さま)の霊験あらたかな教えにしだがうのも一興かもしれない。最近のニュースで王子製紙が10月1日をもって王子ホールデイングスになった。

実は今手元にある書籍は「紙の知識100」~知ればもっと楽しい~(編集:王子製紙 発行所:東京書籍)がある。




中味は平易に書かれているので発行当事者に聴いてみたら、対象が小中学生向けに編集したそうです。これは学校等で工場見学に来た生徒達が、多く興味を引いたことが中心になって書かれたそうです。分かりやすい説明文で十分に印刷人も参考になると思った。“紺屋の白袴”にならぬように。(終)