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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

東京・教育の自由裁判をすすめる会からの外務省要請書

2012年12月21日 | 人権
 外務大臣 玄葉光一郎 様
2012年12月19日
東京・教育の自由裁判をすすめる会
〒160-0008 東京都新宿区三栄町6小椋ビル401号

◎ 教育現場から自由権規約個人通報制度の即時批准を求める要請書

 東京都教育委員会は、全都立高の教職員に対して、卒・入学式の国歌斉唱時に起立・斉唱・伴奏せよとの「職務命令」を校長を通して発令させ(2003年「10・23通達」)、従わなかった教職員を命令違反で懲戒処分してきました。2003年以降、その数は441人に達し(2012年5月現在)、関連裁判は21件を数え、原告数は延べ750人を超えます。
 本年1月16日に最高裁は、「起立斉唱命令」は「敬意の要素を含む」から「間接的制約」にあたるものの「必要性・合理性」があるから「思想・良心の自由」(憲法19条)に違反しないとしつつも、減給以上の累積加重処分については裁量権の範囲の逸脱濫用であるという判決を示しました。
 しかし、これで全ての争点の審理が尽くされたとは言えません。

 最高裁は、わが国が批准している自由権規約18条(思想・良心・宗教の自由)第3項に触れていません。
 最新の『一般的意見34のパラグラフ38』(2011/7/21採択)には、規約19条(意見と表現の自由)3項に関して、公権力による人権制約が許されない具体例として「旗とシンボル」の文言が追加されました。まさしく本件事例に国際人権の基準が示されたと言うべきです。<添付資料C>
 また、自由権規約第6回日本政府審査に対する政府報告の中で、板橋高校卒業式事件の最高裁判例が「公共の福祉」名目で人権制約を正当化する事例として引用されていますが、これこそこれまで国連から繰り返し指摘されてきた「公共の福祉」誤用の典型例であって、国連からの勧告を真摯に受けとめるなら真っ先に改めなければならないことです。<添付資料A,B>
 「10・23通達」以降、学校では「日の丸・君が代」不可侵であるかの如く、上意下達の画一的一方的な命令体制が、卒業式だけではなく日常の教育活動のあらゆるところに貫徹し始め、それは必然的に子どもの世界にも、多様な価値観を認めず個性に応じた弾力的な教育を許さない画一的教育をもたらし、息苦しい雰囲気が広まりつつあります。この事態は、生徒一人一人の人格の完成を目指して行われるべき教育権の国際基準を定めた、世界人権宣言26条(教育への権利)、社会権規約13条(教育への権利)、子どもの権利条約12条(意見表明権)、同14条(思想・良心・宗教の自由)、同28条(教育への権利)、29条(教育の目的)、に反しています。
 わが国は、素晴らしい国際人権条約を批准しており、その国際水準の人権が学校でも保障されるよう、自由権規約第1選択議定書の即時批准の実現を、教育現場から強く訴えます。
要 請 内 容

 1,2008年国連自由権規約委員会第5回日本政府審査における勧告(とりわけパラグラフ10「公共の福祉」)を、正しく理解し、誠実に実行するよう要請します。
 2,わが国が批准している自由権規約は、自動執行的な条約であり、裁判規範として直ちに適用されるべきであることを、関係機関に徹底されるよう要請します。
 3,学校において憲法と国際条約の保障する人権が保障されるよう、「自由権規約個人通報制度」を即時批准すべくご尽力いただきますよう要請します。
 <添付資料>

 A, 第6回自由権規約審査 「日本政府報告書」から (2012年4月) 
 2.日本国憲法における「公共の福祉」の概念

 3.憲法における「公共の福祉」の概念は、これまでの報告のとおり、各権利毎に、その権利に内在する性質を根拠に判例等により具体化されており、憲法による人権保障及び制限の内容は、実質的には、本規約による人権保障及び制限の内容とほぼ同様のものとなっている。したがって、「公共の福祉」の概念の下、国家権力により恣意的に人権が制限されることはもちろん、同概念を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えることはあり得ない。
 4.このような基本的人権相互間の調整を図る内在的な制約である「公共の福祉」についての典型的な判例としては、これまでの報告のとおりであるが、最近のものとして、次の最高裁判所2011年7月7日小法廷判決(要旨)(引用者注:板橋高校卒業式事件)等でこの判断が踏襲されている。
 本件は、高等学校の卒業式において起立して国歌斉唱することに反対していた被告人(元教諭)が、卒業式の行われる体育館で大声で保護者に呼びかけを行い、制止した教頭らを怒号し、その場を喧騒状態に陥らせて卒業式の開会を遅らせた事案であるところ、最高裁判所は「表現の自由は、民主主義社会において特に重要な権利として尊重されなければならないが、憲法21条1項も、表現の自由を絶対無制限に保障したものではなく、公共の福祉のため必要かつ合理的な制限を是認するものであって、たとえ意見を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の権利を不当に害するようなものは許されない。被告人の本件行為は、その場の状況にそぐわない不相当な態様で行われ、静穏な雰囲気の中で執り行われるべき卒業式の円滑な遂行に看過し得ない支障を生じさせたものであって、こうした行為が社会通念上許されず、違法性を欠くものでないことは明らかである。」旨判示して被告人に威力業務妨害罪の成立を認めたものである。 〈外務省仮訳〉
 B, 第5回自由権規約審査 委員会の日本に対する「総括所見」から (2008年10月30日)
 10.委員会は、「公共の福祉」が、恣意的な人権制約を許容する根拠とはならないという締約国の説明に留意する一方、「公共の福祉」の概念は、曖昧で、制限がなく、規約の下で許容されている制約を超える制約を許容するかもしれないという懸念を再度表明する。(第2条)
  締約国は、「公共の福祉」の概念を定義し、かつ「公共の福祉」を理由に規約で保障された権利に課されるあらゆる制約が規約で許容される制約を超えられないと明記する立法措置をとるべきである。 〈外務省仮訳〉
 C, 自由権規約委員会一般的意見34(規約19条「意見と表現の自由」)から (2011年7月21日)
 38. 政治的言説の内容に関してパラグラフ13及び20において述べたように,委員会は,政治分野に属する公人及び公的機関に関する公開の議論という状況下では,制約のない表現に対して規約が特に高く評価しているという見解を示してきた(83)。したがって,公人も規約の規定により恩恵を受けることはあり得るけれど,表現形態が特定の公人に対する侮辱にあたるとみなされるという事実があるにすぎない場合は,処罰を科すことを正当とするのに十分ではない(84)。
  さらに,あらゆる公人は,国家元首及び政府の長など,最高の政治権力を行使する公人も含めて,批判や政治的反対を受けるのは合法とされる(85)。したがって,委員会は,大逆罪(86),冒涜(desacato)(87),権威に対する不敬(88),旗や象徴に対する不敬,国家元首の誹謗(89),ならびに公務員の名誉の保護(90)などの事項に関係する法律について懸念を表明し,法律は,誰が非難の対象となっているのかが特定できるということだけを根拠として厳しい処罰を最早、科してはならないと考える。
  締約国は,軍隊や行政など,機関に対する批判を禁止してはならない(91)。 〈日弁連訳〉
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