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パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 伊藤詩織監督を攻撃し続けるのは止めよ

2025年03月19日 | 人権

 ★ 違法な手法も英国や北欧では許される
   ~悔やまれる元PD河村光庸氏の逝去

「メディア改革」連載第170回 浅野健一(アカデミックジャーナリスト)

◎ 前回に続いて、伊藤詩織監督映画が国内で公開の見通しも立っていない問題を取り上げたい。
 伊藤氏の元訴訟代理人の西廣陽子弁護士や「左翼リベラル」系の表現者らが相変わらず、情報提供者を危険にさらしたなどと批判している。
 伊藤氏は2015年(当時28歳、ロイター通信でインターン中)、山口氏にレイプされたと警視庁に告訴。
 高輪署員が16年、山口氏を逮捕するはずだったが、中村格刑事部長の命令で取りやめとなった。
 なぜ、被害者が自身の体験を対象化して映画を制作したことを、激しく非難するのかと私は憤っている

◎ 伊藤氏が映画をなぜ作ったかを書いた「世界」(岩波書店)2025年3月号の「450時間の痛みを生き直す―なぜ『Black Box Diaries』を撮ったか」を読んでほしい。

 元弁護士たちが問題にしているのは以下の5つの映像使用についてだ。

1.民事裁判の証拠として提供されたホテルの防犯カメラ映像
2.伊藤、山口両氏を乗せた運転手タクシー運転手へのインタビュー映像
3.伊藤氏が西廣弁護士と電話で話す映像
4.警察の捜査官A氏との電話や会談などの映像・音声
5.伊藤氏を支援する集会での映像。

◎ 私を2022年1月に排除した「創」4月号はこの映画問題を特集した。
 同誌は絶対買わないので、友人に見せてもらった。
 記事の中で、「A」や「新聞記者」の森達也監督は「今回伊藤さんは間違えた」「監視カメラ映像の公開は無罪推定のルールから逸脱している」「裁判以外には使わないという誓約書にサインしているから弁護士としてはもちろん、絶対に看過できない」と主張している。

◎ 森氏は「ジャーナリズムや法の論理から言ったら、伊藤さんの編集は一方的でアンフェアだと西廣さんが感じることは当然だ」とも強調している。
 森氏はドキュメンタリーとジャーナリズムの基本ルールが異なると指摘し、自身が盗撮などの危ない行為をして作品を作ったとも述べている。

◎ 戦場ジャーナリストの綿井健陽氏も「今後に伊藤さんが何か取材・撮影行動を起こした時に、それに対しての信頼や約束や取材源の秘匿等に不信感をもたれてしまう」とコメントした。
 綿井氏は「捜査官Aさんの音声や言葉の扱い方が気になった。Aさんから映像で使用する許可は取れていない。内部告発や取材源秘匿の問題と合わせて、彼のシーンには危うさを感じた」「許諾が必要だ」と表明している。

 綿井氏は映画の製作会社「スターサンズ」がこの映画に関して何も言っていないことも批判している。
 実は、伊藤氏に映画づくりを強く勧めて支援したのはプロデューサーの河村光庸氏(前スターサンズ社長)だった。「新聞記者」「宮本から君へ」などの製作で有名な河村氏は22年6月、心不全で死去した。

◎ 伊藤氏は2月初め、河村氏の配偶者宅を訪れた。河村氏は私の大学の同級生で、彼が生きていれば今のようなトラブルは起きなかったと思っている。私の大学の同窓である河村氏が逝ったのは非常に残念だ。

★ 人民の権益に応えた表現は違法でも免責

◎ パリ在住の渡辺謙一氏(映画監督)は3月12日、フェイスブックに「本日封切りのBlack Box Diariesを観る」と題して投稿している。

映画を見ずに映画の手法や取材方法のモラルを語るのは不毛の議論に陥る。一例を挙げれば、問題の発端となったホテルの監視カメラの映像は、この作品を成立させる原点であり、この映像を使用せずに物語は始められないことがわかる>

<ホテルの監視映像には、日付と時間が秒単位で刻まれている。時時を刻むタイムコードの数字の動きのリアルがなければ伊藤詩織という人の存在証明ができなくなる。フランスでは作品は一人歩きを始め高評価を受けている。日本での公開を切に望む

◎ 日本以外の国の報道倫理綱領では、市民みんなにとって圧倒的に重要な権益(overwhelmingly important public interest)がある場合は名誉プライバシーを侵害したりしても許容されるという規定がある。
 英国の報道倫理綱領は、盗聴装置の利用、身分詐称、住居侵入、許可なしの撮影などの違法行為、倫理違反行為も、パブリック・インタレスト(人民の権益)がある場合は倫理綱領に違反しない」と繰り返し規定している。

◎ 2008年、英バッキンガム宮殿に偽召使いとして潜入したデイリー・ミラー記者の武勇伝とその特ダネが話題になった。英王室は報道苦情委員会(PCC)に申し立てをしたが、倫理違反には当たらないという裁定が出た

◎ 伊藤氏の映画の被害者が伊藤氏を批判するなら話はわかる。
 しかし、同業者や元代理人が、法令や倫理基準を持ち出して、伊藤氏に順法精神を説く姿は異様だ。
 ニューヨークタイムズマーティン・ファクラー東京支局長らは3月1日、映画の上映を拒んでいるのは、山口氏と、事件介入を隠蔽したい司法権力ではないかという記事を書いている。同感だ。


<たんぽぽ舎です。【TMM:No5164】2025年3月14日(金)>

 


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