=東京都立学校「日の丸・君が代」強制 第2次再雇用拒否訴訟=
◆ 第一審「勝訴!!」判決報告 (リベルテ)
はじめに
東京都立学校の卒業式・入学式の実施に関し、あの石原慎太郎都政下の2003年10月23目に一つの「通達」が東京都教育委員会から出され、以後、卒業式などにおいて、職務命令に反し、「君が代」斉唱時に「日の丸」に向かって起立しなかった教師の方々が、懲戒処分、あるいは定年退職後の「再雇用職員」等への採用の一律拒否、等の不利益を課されている現状にある。
この件に関しては、既に、最高裁まで行って訴訟活動としては終了してしまった事件もある(2011年5月30日最高裁判決、2012年1月26日最高裁判決、など)が、現在もなお強制に従えなかった方々の被害が出続けており、訴訟活動も継続的に行われているのである。
そんな中、本年5月25日、東京地裁は、「画期的」な判決を言い渡した。それが、タイトルにある、第2次再雇用拒否訴訟の第1審判決である。
1 事件の概要と判決の内容
同事件は、2007年3月、08年3月、09年3月にそれぞれ、定年退職を迎えた都立学校の教師であった方々22名が、都立学校の定年退職後の再就職制度である「再雇用職員」、「非常勤教員」への採用を希望したところ、過去に「君が代」斉唱時に職務命令違反の「不起立」があったこと「のみ」を理由に、それが重大な非違行為であるとされたので、その違憲・違法を主張し、損害賠償請求を行うものである。
提訴が、「2009年9月」であるので、「第1審」の判決言渡しまでに、5年8ヶ月の期間を費やしたのである(提訴時、小学1年生であった方が、もう中学に進学している時間の長さである…まあ、あまり意味のあるたとえではないが)。
さて、本題に戻ろう。判決の内容は、端的に言うと、被告・東京都による「不起立のみ」を理由とした本件採用拒否は、その裁量権を逸脱・濫用する違法なものであり、原告らに対し、一人当たり、再雇用職員に採用された場合に1年間分の給与に相当する金額の賠償を行うことを、東京都に命じた、というものである。
この判決が、「画期的」なのは、既に、この「日の丸・君が代不起立」を理由とした「定年退職後の再雇用職員などへの採用拒否」に関しては、複数の訴訟が先行的に起こされており(本件も「第2次」と銘打っている)、それらはいずれも、最高裁まで行った上で、全面敗訴判決が確定してしまっており(2011年5月30目の南葛採用拒否事件最高裁判決、同年6月6日の嘱託採用拒否事件最高裁判決、など)、本件でも都側はそのことを主張していたのである(そのことが、本件が長引いている理由の一つでもあるが〉。
そんな中、本件では、「勝訴」判決を勝ち取ったのである。
本件で弁護団は、公務員の定年退職後の採用制度に関する近時の法制度等のあり方(「原則採用」の流れ)、これに沿った新たな裁判例の存在、行政機関の裁量権行使の適法性判断に関する近時の最高裁判例の傾向(具体的で緻密な総合考慮)などを、早稲田大学の岡田正則教授(行政法学)作成の意見書及び証人尋問を通じて、示しつつ、本件の判決を、単なる先行訴訟の判決の「コピペ」にしないよう、弁護活動を行った。
また、都側の強制の実態が、「通達」、「職務命令」などの個別の要素だけに存在するのではなく、「通達」→「職務命令」→「懲戒処分」→「採用拒否」という「一連の仕組み」によって構成されているとの視点も示した。
2 本判決の注目点
(1) この判決で注目すべきは、前述のように、被告・東京都による「不起立のみ」を理由とした本件採用拒否は、その裁量権を逸脱・濫用する違法なものであるとした点である。
この点については、問題点を分析すると、
①被告・東京都の「再雇用職員」及び「非常勤教員」の採用選考に関する裁量権の広さ(一定の制限を受けるのか、採用される教師ら側の採用に関する期待権は認められるのか、など)、
②①の議論を前提として、本件の「日の丸・君が代不起立」を理由とした採用拒否は、裁量権の逸脱・濫用になるのか否か、が大きな争点になる。
(2) この点、①の裁量権の範囲について、判決は、都立学校における教師の定年退職後の再雇用職員制度などは、教師らの定年退職後の収入の確保などの趣旨がありこれに対する教師らの期待は法律上保護されるものであり、東京都の採用選考に関する裁量権も一定程度制限を受けること、を認めた。
この点は、前述した、我々弁護団が、先行事件に関する敗訴判決を意識した上で行った主張が、全面的に認められたものである。
先行事件の敗訴判決では、この点について、再雇用職員への選考が、一旦定年退職によって法的な関係が消滅した後の「新たな任用」であるとし、東京都側に大幅な裁量権を認めてしまい、教師側の採用に対する期待も、「事実上」のものに過ぎず、法的保護を受けない旨判断されてしまっていた。
しかし、今回の判決は、その判断を、まさしく180度転換させたのである。
しかも、本判決自身、先行事件の敗訴判決における法理を意識しつつ(都側も主張していたし…)、これを乗り越えるような法理を用いて、前述の判決を言い渡したのである。
(3) また、②の点について、判決は、
(i)教師らに「君が代」斉唱時の起立を命じる職務命令の根拠として都側が主張している学習指導要領のいわゆる「国旗国歌指導条項」については、学習指導要領の全体的な概要を見た上で、同要領中の同条項の位置付けについて、「他の特別行事の実施や配慮すべき事項の内容と対比して特段区別した位置付けが与えられているとまでは認められない」とし、このことをのみを採用拒否の理由とはできないこと、
(◆法丙嚢盧枷酬茲魄蚪しつつ)教師らに「掘Α・」斉唱察λ機Α・命じるのは、その教師らの世界観、人生観などに関わるものであり
◆ 第一審「勝訴!!」判決報告 (リベルテ)
弁護団 柿沼真利
はじめに
東京都立学校の卒業式・入学式の実施に関し、あの石原慎太郎都政下の2003年10月23目に一つの「通達」が東京都教育委員会から出され、以後、卒業式などにおいて、職務命令に反し、「君が代」斉唱時に「日の丸」に向かって起立しなかった教師の方々が、懲戒処分、あるいは定年退職後の「再雇用職員」等への採用の一律拒否、等の不利益を課されている現状にある。
この件に関しては、既に、最高裁まで行って訴訟活動としては終了してしまった事件もある(2011年5月30日最高裁判決、2012年1月26日最高裁判決、など)が、現在もなお強制に従えなかった方々の被害が出続けており、訴訟活動も継続的に行われているのである。
そんな中、本年5月25日、東京地裁は、「画期的」な判決を言い渡した。それが、タイトルにある、第2次再雇用拒否訴訟の第1審判決である。
1 事件の概要と判決の内容
同事件は、2007年3月、08年3月、09年3月にそれぞれ、定年退職を迎えた都立学校の教師であった方々22名が、都立学校の定年退職後の再就職制度である「再雇用職員」、「非常勤教員」への採用を希望したところ、過去に「君が代」斉唱時に職務命令違反の「不起立」があったこと「のみ」を理由に、それが重大な非違行為であるとされたので、その違憲・違法を主張し、損害賠償請求を行うものである。
提訴が、「2009年9月」であるので、「第1審」の判決言渡しまでに、5年8ヶ月の期間を費やしたのである(提訴時、小学1年生であった方が、もう中学に進学している時間の長さである…まあ、あまり意味のあるたとえではないが)。
さて、本題に戻ろう。判決の内容は、端的に言うと、被告・東京都による「不起立のみ」を理由とした本件採用拒否は、その裁量権を逸脱・濫用する違法なものであり、原告らに対し、一人当たり、再雇用職員に採用された場合に1年間分の給与に相当する金額の賠償を行うことを、東京都に命じた、というものである。
この判決が、「画期的」なのは、既に、この「日の丸・君が代不起立」を理由とした「定年退職後の再雇用職員などへの採用拒否」に関しては、複数の訴訟が先行的に起こされており(本件も「第2次」と銘打っている)、それらはいずれも、最高裁まで行った上で、全面敗訴判決が確定してしまっており(2011年5月30目の南葛採用拒否事件最高裁判決、同年6月6日の嘱託採用拒否事件最高裁判決、など)、本件でも都側はそのことを主張していたのである(そのことが、本件が長引いている理由の一つでもあるが〉。
そんな中、本件では、「勝訴」判決を勝ち取ったのである。
本件で弁護団は、公務員の定年退職後の採用制度に関する近時の法制度等のあり方(「原則採用」の流れ)、これに沿った新たな裁判例の存在、行政機関の裁量権行使の適法性判断に関する近時の最高裁判例の傾向(具体的で緻密な総合考慮)などを、早稲田大学の岡田正則教授(行政法学)作成の意見書及び証人尋問を通じて、示しつつ、本件の判決を、単なる先行訴訟の判決の「コピペ」にしないよう、弁護活動を行った。
また、都側の強制の実態が、「通達」、「職務命令」などの個別の要素だけに存在するのではなく、「通達」→「職務命令」→「懲戒処分」→「採用拒否」という「一連の仕組み」によって構成されているとの視点も示した。
2 本判決の注目点
(1) この判決で注目すべきは、前述のように、被告・東京都による「不起立のみ」を理由とした本件採用拒否は、その裁量権を逸脱・濫用する違法なものであるとした点である。
この点については、問題点を分析すると、
①被告・東京都の「再雇用職員」及び「非常勤教員」の採用選考に関する裁量権の広さ(一定の制限を受けるのか、採用される教師ら側の採用に関する期待権は認められるのか、など)、
②①の議論を前提として、本件の「日の丸・君が代不起立」を理由とした採用拒否は、裁量権の逸脱・濫用になるのか否か、が大きな争点になる。
(2) この点、①の裁量権の範囲について、判決は、都立学校における教師の定年退職後の再雇用職員制度などは、教師らの定年退職後の収入の確保などの趣旨がありこれに対する教師らの期待は法律上保護されるものであり、東京都の採用選考に関する裁量権も一定程度制限を受けること、を認めた。
この点は、前述した、我々弁護団が、先行事件に関する敗訴判決を意識した上で行った主張が、全面的に認められたものである。
先行事件の敗訴判決では、この点について、再雇用職員への選考が、一旦定年退職によって法的な関係が消滅した後の「新たな任用」であるとし、東京都側に大幅な裁量権を認めてしまい、教師側の採用に対する期待も、「事実上」のものに過ぎず、法的保護を受けない旨判断されてしまっていた。
しかし、今回の判決は、その判断を、まさしく180度転換させたのである。
しかも、本判決自身、先行事件の敗訴判決における法理を意識しつつ(都側も主張していたし…)、これを乗り越えるような法理を用いて、前述の判決を言い渡したのである。
(3) また、②の点について、判決は、
(i)教師らに「君が代」斉唱時の起立を命じる職務命令の根拠として都側が主張している学習指導要領のいわゆる「国旗国歌指導条項」については、学習指導要領の全体的な概要を見た上で、同要領中の同条項の位置付けについて、「他の特別行事の実施や配慮すべき事項の内容と対比して特段区別した位置付けが与えられているとまでは認められない」とし、このことをのみを採用拒否の理由とはできないこと、
(◆法丙嚢盧枷酬茲魄蚪しつつ)教師らに「掘Α・」斉唱察λ機Α・命じるのは、その教師らの世界観、人生観などに関わるものであり
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