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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

広島県廿日市市へ「自衛隊と中学生のコラボ中止要請書」提出

2020年02月21日 | 平和憲法
 2020年2月14日
 廿日市市長 松本 太郎 様
 廿日市市教育委員会 教育長 奥 典道 様
教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま
共同代表 石原 顕 内海 隆男 菊間 みどり 柴田 もゆる

◎ 廿日市市立中学校の吹奏楽部を
自衛隊音楽隊との「ふれあいコンサート」に参加させないことを求める要請

 2019年9月21日、さくらぴあホールで「自衛隊ふれあいコンサート」が行われた。このイベントは、「海上自衛隊呉音楽隊と廿日市市立N中学校吹奏楽部とのコラボ」を謳っており、その問い合わせ先は廿日市市教委の学校教育課であった。主催広島県自衛隊家族会、広島県防衛協会、広島県隊友会後援には廿日市市、廿日市市教育委員会などが名を連ねている。
 海上自衛隊呉音楽隊の紹介には、主な任務として「士気高揚のための演奏」、「儀式における演奏」、「広報のための演奏」と記されており、それと並べて中吹奏楽部部長名の紹介文も掲載されている。
 主催者の挨拶文には開催目的の一つとして「自衛隊活動が正しく理解されるように」との文言がある。
 コンサートは、真野前市長挨拶に続き「君が代」斉唱、中学生の演奏、音楽隊の演奏、コラボ演奏の順で進行、最後に「会場の皆さんに送るエール」だとしてプログラムには記載されていなかった「行進曲軍艦」(いわゆる軍艦マーチ)が演奏された。
 会場ロビーでは、海上自衛隊の宣伝パンフ、隊員募集のリーフレットなどが配布され、制服の試着コーナーも設けられ、自衛官が生徒たちに試着を呼びかけていた。要するに、中学校生徒をターゲットにして、文化行事を装った自衛隊の加入促進広報活動が、「白昼堂々」と行われたのである。
 2018年は海田陸上自衛隊と廿日市市内のH中学校と同様のことが行われていた。

 海上自衛隊には呉の他、東京(防衛大臣直轄)、横須賀、佐世保、舞鶴、大湊に音楽隊があり、陸上自衛隊、航空自衛隊にも別に複数の音楽隊が置かれている。これらのすべてが学校教育と接点をもつ活動を行っているので、ほぼ全国をカバーした活動になる。
 自衛隊の音楽隊は、戦前の大日本帝国陸海軍の軍楽隊を前身とし、その任務は、(1)隊員の士気高揚のための演奏(2)儀式や式典での演奏(3)広報活動としての演奏(4)必要に応じ指揮所の警備、の4つであり、戦前の「兵士」のための士気高揚と同様の演奏を任務の筆頭にしている部隊である。
 今回の企画は(3)の広報の一環としての活動と考えられるが、その活動の本質は、最終演目が「行進曲軍艦」であったことが明確に象徴しているように、「自衛隊員」の士気高揚をはかる武力行為=戦争を鼓舞する「軍楽隊」であることは、戦前と何ら目的が変わっていないといわざるを得ない。
 なお、「軍艦」という名称は戦前の日本帝国海軍の戦艦等を示すものであるから、たとえ自衛隊で正式行進曲と定めているとしても、「軍艦」の呼称のつく曲を市民に演奏することは、戦力を持たないと明記した憲法九条を踏まえれば、中学生、市民に聴かせる曲としては不適切である。
 現政権下で、憲法違反の「戦争法制」が成立し、自衛隊は専守防衛を旨とする憲法の規定を大きく逸脱して運用され、外征軍へと急速に変貌を遂げている。今回の中東派兵がその一例である。
 1月11日、海上自衛隊那覇基地からP3C哨戒機部隊が中東に派遣され、2月2日には海上自衛隊横須賀基地から護衛艦「たかなみ」が出港する。名目は防衛省設置法に基づく「調査・研究」とされているが、バーレーンの米海軍第5艦隊司令部に連絡要員が派遣され、そこで得られた情報は米国などと共有される。事実上の共同軍事作戦行動である。現地で日本関係の船舶が攻撃を受けた場合は、武力行使が可能となる海上警備行動に切り替わることになっている。
 廿日市市教委は、「自衛隊法に基づいて自衛隊は設置されている。学習指導要領、憲法に基づき、具体的には自衛隊による災害等の援助等について紹介をしながら、教科書等にも明記をしているように、学習指導要領に基づいて教えている。」などとのんきに述べている。しかし、自衛隊は一触即発の中東地域で軍事行動を実際に展開している実質「軍隊」である。
 会場ロビーで実施された「イベントアンケート」や自衛隊の制服試着コーナー等は、実質的な「軍隊」である自衛隊への入隊を勧誘する活動の一環である。
 世論には自衛隊のあり方に賛否両論があり、入隊勧誘を大きな目的とも同視できる「自衛隊ふれあいコンサート」に、政治的中立であるべき教育委員会が12歳~15歳の年齢層の中学生を参加させるべきではない
 「子どもの権利条約」第38条及び「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書」第3条でも未成年者の軍隊への徴募は禁止されているのであるから、巧妙に徴募に導く仕掛けのあるこのような企画に、適切な教育環境を保護すべき立場にある廿日市市及び廿日市市教育委員会は中学生を参画させるべきではない。
 以上の理由により、以下の要請をする。

要 請
1 廿日市市立中学校の吹奏楽部を自衛隊音楽隊との「ふれあいコンサート」に参加させないこと。
1 廿日市市教委は当該「ふれあいコンサート」の後援をしないこと。


※「子どもの権利条約」(1994年批准、国際教育法研究会 訳)
 第38条(武力闘争における子どもの保護)
 1.締約国は、武力闘争において自国に適用可能な国際人道法の規則で子どもに関連するものを尊重し、かつその尊重を確保することを約束する。
 2.締約国は、15歳に満たない者が敵対行為に直接参加しないことを確保するためにあらゆる可能な措置をとる。
 3.締約国は、15歳に満たないいかなる者も軍隊に徴募することを差控える。締約国は、15歳に達しているが18歳に満たない者の中から徴募を行うにあたっては、最長年の者を優先するよう努める。
 4.締約国は、武力紛争下における文民の保護のための国際人道法に基づく義務に従い、武力紛争の影響を受ける子どもの保護およびケアを確保するためにあらゆる可能な措置をとる。
http://www.ncrc.jp/archives/1989/11/reference891120.html
 ※ 「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利に関する条約の選択議定書」
   (2004年国会承認、国際教育法研究会 訳)
 第3条(自発的入隊に関する最低年齢の引上げおよび保障)
 1.締約国は、当該条文に掲げられた原則を考慮しながら、自国の軍隊への自発的入隊に関する最低年齢を子どもの権利に関する条約第38条3項に定められた年齢よりも引き上げる。その際、当該条項に掲げられた原則を考慮し、かつ、条約に基づき18歳未満の者は特別な保護を受ける権利があることを認めるものとする。
 2.各締約国は、この議定書の批准またはこの議定書への加入の際に、自国の軍隊への自発的入隊を認める最低年齢、および当該入隊が強制または威迫により行なわれないことを確保するためにとった保護措置の記述を記載した、拘束力のある宣言を寄託する。
 3.自国の軍隊への18歳未満の者の自発的入隊を認める締約国は、最低限次のことを確保するための保護措置を維持する。
 (a) 当該入隊が真に自発的なものであること。
 (b) 当該入隊が、その者の親または法定保護者の、充分な情報を得たうえでの同意に基づいて行なわれること。
 (c) 当該の者が、当該軍務にともなう義務について全面的に情報を提供されること。
 (d) 当該の者が、国の軍務への受入れに先立ち、年齢に関して信頼できる証明を行なうこと。
 4.各締約国は、国際連合事務総長にあてた通告により、いつでもその宣言を強化することができるものとし、同事務総長は、その強化をすべての締約国に通知する。当該通告は、同事務総長により受領された日に効力を生ずる。
 5.この条の1に掲げられた、年齢を引き上げる義務は、子どもの権利に関する条約第28条および第29条にしたがって締約国の軍隊が運営または管理する学校には適用されない。
http://www.ncrc.jp/archives/2000/05/reference000525_02.html
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