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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

★ 菅前首相が学術会議会員任命拒否した岡田正則教授、証人尋問

2024年07月29日 | 「日の丸・君が代」強制反対

対都教委・"君が代"不当処分取消し第5次訴訟の現・元教職員も参加し、被処分者の会が3月27日開催した卒業式総括集会(豊島区民センターで、撮影は永野厚男)

 ★ 都教委が職務命令出させて〝君が代〟起立強制、あってはならない (『マスコミ市民』)

永野厚男(教育ジャーナリスト)

 卒業式等の〝君が代〟不起立で東京都教育委員会から懲戒処分を受けた都立学校の現・元教職員15人の不当処分取消し第5次訴訟で、東京地裁(野口宣大(のぶひろ)裁判長)が7月4日、行政法が専門の岡田正則(まさのり)早稲田大学大学院教授(菅義偉首相当時、学術会議会員の任命を拒否された6人の学者の一人)に対する証人尋問を行った。

 岡田教授の証言を報じる前に、都教委の〝君が代〟起立・ピアノ伴奏強制がいかに政治塗(まみ)れで腹黒いかを詳述する。

 ★ 右翼の都議・教育委員と癒着、都教委官僚が〝君が代〟強制

 東京の公立学校のうち、都立高校や国 立(くにたち)市立の小中学校等は、教職員組合の高組織率もあり、長年同僚性を重視し、全教職員が一堂に会する職員会議で民主的に学校運営を決め、「卒業式等は児童生徒が主人公。君が代なし」だった。
 しかし都教委は1998年、市川正教育長(以下、肩書きは当時)が学校管理規則を改悪し、職員会議の位置付けを〝校長の補助機関〟にした。この校長権限強化のレールを敷いた上で、中島元彦教育長(青島幸男知事が任命)が99年10月に出した第1次通達(通達は〝命令・示 達(じたつ)〟の意)により、〝君が代〟を強制。但し不起立等教職員への懲戒処分までは言及しておらず(音楽教員にピアノ伴奏は求めず)、校長裁量の余地があり、校長や司会者の教員が開式前、生徒や保護者に、「憲法の保障する思想・良心・信教の自由に基づく、各自の判断による不起立・一時退席の自由」を説明する学校はかなりあった。
 だが古賀俊昭(としあき)(自民。20年3月72歳で死去)・土屋敬之(たかゆき)(民主党除名後、一人会派等を経て引退)の両右翼都議、国家主義発言の目立つ鳥海巌(とりうみいわお)・米長邦雄(よねながくにお)の両教育委員(いずれも石原慎太郎知事が任命)らの政治圧力(詳細は月刊『紙の爆弾』22年3月号拙稿参照)と癒着した、横山洋吉(ようきち)教育長(石原氏が任命。自民党の政治集会に数回登壇。23年2月80歳で死去)が03年10月、「教職員は式場の舞台壇上正面に掲揚した国旗に向かって起立し、国歌を斉唱する。国歌はピアノ伴奏」等を盛り込んだ、第2次に当たる〝10・23通達〟を発出した。

 都教委は、東京の全公立小中高校・特別支援学校等の校長に対し、所属校の教職員に〝10・23通達〟に基づく〝君が代〟起立・斉唱(音楽教員にはピアノ伴奏)を強制する、職務命令を発出させた。
 そして都教委は、教職員の不起立・不伴奏を〝上司の職務上の命令に従う義務〟を謳うたう地方公務員法第32条違反の〝服務事故〟だと決め付け、1回目は戒告、2・3回目減給、4回目以降は教員にとって命である授業をさせない停職(4回目1か月、5回目3か月、6回目以降は6か月)という、他の道府県にない重い懲戒処分を〝発令〟してきた(機械的累積加重処分システム。橋下徹氏が首長になって以降、大阪府・市教委はこれに追随。【注】参照)。
 この〝君が代〟不当処分に対する、現・元教職員らの取消し訴訟(第1次)で、最高裁第一小法廷(金築誠志(かねつきせいし)裁判長)が12年1月16日、「減給以上の処分は社会観念上著しく妥当を欠き、違法」と判じ、都教委に対し減給・停職処分の取消しを命じる判決を出し、累積加重処分システムは崩壊した。
 だがこれ以降も、都教委は「1回~3回目は戒告、4回目以降は減給」という勝手な線引きを設定。11年4月の入学式から連続10回、〝君が代〟不起立を貫いた田中聡史(さとし)・都立特別支援学校教諭に対し、4回目以降を減給処分にし続けた。
 田中さんを含む現・元教職員13人が処分取消し等を求めた〝君が代〟第4次訴訟で、最高裁が19年3月28日、「減給処分は違法」と判じ、都教委に対し「田中さんの13年3・4月の卒業・入学式での4・5回目の不起立への減給処分の取消し」を命じる判決を出した。ところが都教委の藤田裕司(ゆうじ)教育長(小池百合子知事が任命)は20年12月25日、8年近くも遡(さかのぼ)って(判決確定からも1年9か月後)、〝報復〟の戒告処分を2件出し直す再処分を発令した。
 これにより〝10・23通達〟後の被処分者数は延べ484人、再処分者(現職のみ)の数は延べ20件・19人となっている。しかし、教職員側がこれまで最高裁等で、減給・停職処分77件・66人の取消し判決を勝ち取っている事実は付記する。

 ★ 岡田教授「都教委が減給処分発令時と、同処分取消し判決後の再処分発令時で、同一理由を示したのは違法」と証言

 金井知明・今田史明両弁護士の質問への、岡田教授の証言の要旨は以下の通り。

1 地方自治の上で、公立学校の教員(教育公務員)は保護者から委託を受け、子どもに最善の教育を行うべき。都教委は子どものためではなく、組織を引き締めるために校長に職務命令を出させている。「命令だから従え」というのは、教育行政ではあってはならない。

2 国連のILO(国際労働機関)とUNESCO(国際教育科学文化機関)の合同委員会(CEART(セアート))は、19年3月と22年6月の2度、日本政府に「愛国的な式典(〝君が代〟起立強制の都教委流卒業式等)に関する〝規則〟に関し、教員団体と対話する機会を設ける。式典に関する教員の〝義務〟は、国歌斉唱に参加したくない人にも対応できるものに」等の是正勧告を行った。また、国連自由権規約委員会は22年11月4日、「都教委による教職員や児童生徒等への〝君が代〟起立・斉唱強制に、懸念(serious concern)を表明」する第7回日本審査総括所見を公表した。
 これら一連の国連の勧告等は、日本政府も都教委も尊重し対応しなければならない。

3 〝君が代〟不起立等教員に懲戒処分〝発令〟後、都教委が強制する服務事故再発防止研修(懲罰いじめ研修)は、懲戒処分の延長であり、思想・良心の自由を抑え付け、不当な職務命令に従わせようとするものであり、通常の(学力向上・教育相談等の)研修とは明らかに異なる。「2」の国連の人権機関の勧告にも違反している。

4 都教委が〝君が代〟不起立等教員に懲戒処分〝発令〟時、手渡す〝処分理由書〟に、減給処分時と、同処分取消し判決後に出し直した戒告再処分時の〝処分理由〟が、全く同文だ。これはあり得ないことで、違法だ。(仮に再処分する側に立つとしても)「減給処分取消し判決を踏まえ、こう修正しました」と説明しなければならない。

5 日本が国際社会において民主主義国家だと言うなら、都教委が思想・良心の自由に触れる〝君が代〟問題で、不当処分発出事件を起こし続けていること自体、恥ずかしい。


 ★ 不当処分取消し判決確定後すら謝罪しない都教委

 岡田教授の証言後、3人の現・元教諭が証言した。
 1人目の都立高・英語科元女性教諭は、「懲戒処分をチラつかせて君が代を強制してくる都教委のやり方に、『民主国家でこんなこと許されない。今おかしいと言わないと後で恐ろしいことが起こるのでは』という思いで不起立した。学校は多様性を尊重する場でないといけない」と発言。
 〝君が代〟不起立に対し都教委や校長が仕掛けてきた不利益については、「通常は持ち上がる2年から3年での担任外し。主任教諭の選考で不合格」等を証言した。
 2人目の都立高・地理科男性教諭は、①式の君が代時に着席していると、副校長が3回も「先生、立って下さい」と言いに来た。副校長はこうして監視した内容を記録し、都教委指導部に出したのだろう、②第1次通達時は式開始前、生徒に「君が代起立・不起立は各自の判断で」等の説明が可能だったが、〝10・23通達〟発出後は、こういう説明を朝のHRで行うことすら(懲戒処分一歩手前の、都教委に呼び出しての)厳重注意になってしまう、③君が代時「立たない」と「立てない」は違う。外国にルーツを持つとか宗教上の理由等で、「立てない」生徒はいる――等証言した。
 3人目の前出・田中さんは、〝君が代〟不起立の理由を、「児童が将来、何が正しいか判断する力を育てたい。自分を偽ってまで君が代に敬意を表する、偽りの自分の姿を見せるべきでない。大多数の教職員が起立する中、私のような教員がいると、多様性を児童が感じることは重要。式の参列者全員が一糸乱れず起立・斉唱する姿は、民主主義の社会になじまない」と発言。
 この後、①戒告は勤勉手当削減、昇給延伸の不利益があり、減給は本給削減も加わる、②中学部や小学部高学年の担任もやりたいが、校長は何年もの間、(卒業式等で式場に入らない)小学部2年生の担任に据え置いている、③前記・〝君が代〟不当処分取消し判決確定後、都教委は不利益分の金銭の支払いをしただけで、一切謝罪しない(都教委は氏名は載せないものの、所属校名等を「都の教職員全員に貸与のPCで公表」に加え、プレス発表もするのに、不当処分取消しの事実は公表しないので、名誉回復がなされない)、④都教委による前記・再発防止研修(懲罰いじめ研修)は、13年度は計18回(内訳は都教職員研修センターが3回、当時の所属校が15回)に上り、その多くが授業等のある時間帯で、本来の仕事に支障を来きたすのに、都教委は一切謝罪しない――等証言した。

【注】都教委は03年の職層化(主幹教諭)導入決定後、学校を「校長→副校長(教頭から名称変更)→主幹教諭(08年度、この下に主任教諭も新設)→教諭」という上意下達の5段階〝ピラミッド型〟組織にし、職務命令を浸透させる体制を作り上げてしまった。
 教職員が不起立・不伴奏を実行する理由は様々だが、〝天皇の治世の永続を願う歌〟の時、児童・生徒に〝範〟を示すように起立・斉唱する行為は、天皇への敬意表明の証あかし=国家主義思想のindoctrination(教化)になってしまうことへの、良心からの抵抗感があるから、という人は少なくない。
 しかし、横山氏の後任の中村正彦教育長(78歳)は06年3月13日、生徒にまで〝君が代〟時に起立・斉唱させる〝指導〟を教職員に強制する、〝3・13通達〟第3次通達に当たる)まで発出した。これに対しては、大学教授らが反対アピールを出し、54校もの都立高保護者・卒業生有志が、「憲法第19~21条が禁じている、個々人の思想・良心・信教・表現の自由への侵害だ」と抗議し、撤回を求める申入れを都教委に出している。不起立・不伴奏教職員を支持し、都教委に反発する保護者や学識経験者はかなり多い。

『マスコミ市民』(2024年8月)

 


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