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東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

<浅野健一連続講座>「イラン系日本人」として生きてきたナディさんの講演会

2020年02月21日 | 平和憲法
  「メディア改革」連載第25回 たんぽぽ舎です。【TMM:No3860】
 ◆ イラン系日本人、ナディさんの日本改革提言
   自分たちで新しい社会を考え行動しよう

浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)

 「出稼ぎ」の父親、母親、弟2人との5人で1991年に来日し、いつ強制送還されてもおかしくない状況を乗り越え、高校1年生の時に在留特別許可を得て、「イラン系日本人」として生きてきたナディさんの講演会が1月25日、「スペースたんぽぽ」で開かれた。
 講演会は<浅野健一連続講座>として開催され、20人が参加した。遅くなったが、講演の概要を紹介したい。
 ナディさんが昨年6月に出版した『ふるさとって呼んでもいいですか-6歳で「移民」になった私の物語』(大月書店)は4刷りになっている。
 ナディさんは1984年イラン生まれで、日本の大学を卒業、大手メーカーに就職、結婚し、2児の母になっている。
 ナディさんの夫が同志社大学浅野ゼミOBという縁もあり、講演が実現した。
 ナディさんは「両親が3カ月の観光ビザで来日、オーバーステイ(不法滞在)していたため、隠れるようにして暮らした」日々のことを語った。
 イランで小学校1年生だったナディさんが日本の小学校に入れたのは、来日から3年後だった。父親が警察に2回一時拘束されたことがあった。警察官に学校の通知表やランドセルを見せ、「ほんとうに勉強しているんです。捕まえないでください」と頼み込み、摘発を免れた。
 滞在ビザがないので、医療保険に入れない。ドッジボールをしていて転び、脚を捻挫して病院で4000円とられた。その後、2回捻挫したが、医者に行かずにいると腫れてしまい、病院で診てもらうと右下のじん帯を切っていた。
 ナディさんは2019年3月に出版された望月優大著『ふたつの日本「移民国家」の建前と現実』(講談社現代新書)を読んで、考え方が変わった。
 「両親が観光ビザで来て不法滞在したことを悪いと思っていたが、この本を読んでみると、どうやら、日本政府は在留資格のないイラン人、パキスタン人、バングラデシュ人、日系ブラジル人と、今の技能特定、実習生はすべて『労働力』という言葉で繋がるのだということに気付いた。
 法務省は1989年から移民は受け入れず、単純労働も認めないと言ってきたが、日本人が嫌がる仕事をイラン人が来たのでやらせた
 「リーマンショックが起き、派遣切れに遭った日系ブラジル人らは日本政府からに一人30万円のお金をもらって帰国を推奨された。彼らの多くは帰国した。そこでできたのが、特定技能、実習生だった。5年の期限付きにし、ベトナム人、ネパール人とかが来た」
 「両親たちがビザなしで働いていたことは、日本政府の人たちも知っていて、暗黙の了解だったのだと知った。自分たちだけが悪いことをしていたわけではなかったと分かって、肩の荷が下りた
 「社会保障は国がやらなければならないのに、日本政府はすべてを自己責任の方向にもっていって、責任を放棄してしまった。世界は豊かになっているのに、その中でも、こんなに自分たちの生活を狭めてしまう、生活しにくくしてしまっていることに、早く気付き、変えて行かないともっと難しい生活が続く社会になる。自分たちで考えて、自分たちが暮らしやすい社会をつくりたい」
 「昨年4月の統計では、日本には274万人の外国籍の住民がいる。日本の文化に全然染まっていない外国人が来た時に、彼らの意見を聞いてみるべきだ。日本人で、仕事で外国にいる人もいっぱいいる。彼らは新しい価値観を持って、何がいいかを考えるきっかけにしてもいいのではないか」
 ナディさんは「問題は差別があることとか、そういうことを言ってはいけないというよりは、全体的に貧しくなっている現実を考えるべきだ。30年経って税率がこれだけ上がっているのにまだお金が足りないというのはあり得ない。みんなもっと疑問を持つべきではないか」と強調した。
 この後、『ふるさとって呼んでもいいですか-6歳で「移民」になった私の物語』を編集した大月書店の岩下結(ゆう)さんが、出版の経緯を次のように話した。
 「出版社の編集者になったばかりの16年前、FTCJの活動をしていたナディさんと知り合った。15年かかって、2番目のお子さんが生まれる直前に、いい原稿が完成し、出版できた。最後の章が入ったことがよかったと思う。社会に対して自分の気持ちを言っていいと考え書き上げてくれた。私個人はこの章が一番好きだ」
 講演会を主催した「たんぽぽ舎」の共同代表、柳田真さんが「たんぽぽ舎は原発のことをやっている団体で、今日は珍しい講演会だ。日本が今後どうすべきかを考える時、ナディさんのような経験を聞くことが大事だと思う」と挨拶してくれた。
 ナディさんは質疑応答で、在日朝鮮人の人権問題の解決を強調した。受付を担当してくれた渡辺マリさんがたんぽぽ舎の日朝関係の講座の予定に触れ、高校・幼稚園保育園の無償化からの排除の不当性を訴えた。
 ナディさんはイランの現状を話した。

 <イランは、堅物のイスラム教の国で、女性は人権ゼロという印象だが違う。化粧品店に行って、アイライナーがほしいと言うと、店の男の人が私にお化粧してくれる。毎日パーティがあるのかと思うような派手な洋服を家の中で着ている。経済制裁があるのに、生活は豊かだ。彼らが自分たちの力で発展させている。私たちの生活は私たちがつくるというのはこういうことなのだと体験できた>
 <米国はサウジアラビアなどを利用して、イランの八方を塞ごうとしているが、それは嫌だと思っている。1月3日のカセム・ソレイマニ総司令官の殺害で、米国は本当に汚い国だと思った。法律も何もない国だ。烏合の衆の塊になるとああいうふうになるのだと思った。俺たちは危ない可能性があったからやったんだという。それに対して、そういうやり方は法律違反でダメだと言った国がほとんどない。みんなシーンとして何も言わない>
 <経済制裁で国民は大変な部分はあるが、米国にはっきり「ノー」と言える国は格好いいと思うが、現地で暮らす人たちは大変なこともあると思う。
 日本の報道はすべて米国のものしか入ってこないので、断片的にしか伝わらないが、イランには学べることがたくさんあって、そのことを隠すのは、自分たちに何か不利益になることがあるからだと思う>
 私はこうコメントした。
 [米国の軍隊がなぜアラブにいるのか、全く理解できない。ロシアや中国の軍隊がカリブ海あたりにいたら、米国人はどう思うか。逮捕状も請求せず、司令官の乗った車両を白昼堂々、無人機で空爆し殺害する。山口組もここまではやらない。]
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