アマゾンわんわん日記 2018

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今日の絵本「彼の手は語り継ぐ」

2016年01月18日 | 読書
アメリカ南北戦争の頃のお話です。



パトリシア・ポラッコ 作
千葉茂樹       訳

おじいちゃんが孫に語り、それがまたその子に語り、そうして語り継がれてきた実話だそうです。

アメリカ 南北戦争のさなか、二人の少年たちが戦争に行きました。

文字の読めない白人の少年 シェルダン。
文字の読める黒人の少年  ピンクス。

シェルダンは部隊から逃げ出す途中、味方に撃たれて負傷し、草原に倒れています。
そこに通りかかった、原隊からはぐれたピンクス。

ピンクスはシェルダンを助け、自分の母親の家まで連れていきます。



シェルダンはピンクスと母親モー・モー・ベイの看病で健康を取り戻していきます。



シェルダンはリンカーンと握手をしたことがあると、誇らしげにピンクスに語りました。
ピンクスとモー・モー・ベイはシェルダンの手を取り、にっこり笑って「リンカーンの手を握っていることぐらい、すごいことだね」と言いました。

そんな中、敵がやってきて、二人を地下室に隠したモー・モー・ベイは撃たれて死んでしまいます。



二人は家を出て、原隊に戻ろうと歩いているところを敵に捕らえられてしまいます。

引き離される直前、ピンクスは「シェルダン、リンカーンと握手をしたその手で、もう一度だけおれの手を握ってくれ!」と叫びます。



二人は引き離され、シェルダンは収容所に収容され、そのまま戦争の終結を迎え、解放されます。
しかし、ピンクスは二人が引き離されて間もなく、縛り首になって死んでしまいました。

シェルダンはやがて故郷に帰り、結婚し、子供が生まれます。
その子にピンクスの話をし、そして子供の手を取り「この手はねエイブラハム・リンカーンと握手したことのある手なんだよ。」と言いました。
彼の子供はまたその子供に。

そうして語り継いできた話を作者は一冊の絵本にまとめたのでした。

本の最後はこう締めくくられています。

「この本はピンクス・エイリーの記憶をとどめるために書かれました。(中略)
 本を閉じる前に、どうか「ピンクス・エイリー」と声に出して言ってみてください。そして、この名前を決して忘れないと誓ってほしいのです。」



    *     *     *     *     *

この本を読んで思い出したのが阿刀田高さんの「サンジェルマン伯爵考」。
不老不死と言われるサンジェルマン伯爵に会う話。

物語の中で、サンジェルマン伯爵という男性は「人は生まれて死んで、肉体は次々に新たなものになるが、その精神は子から孫へと受け継がれる。精神を受け継ぐものがある限り、人は「不老不死」である」と。

本を探したのですが、見つからなかった。
細かい部分は違っているかもしれないけど、大筋はこんな話。

    *     *     *     *     *

パトリシア・ポラッコさんが絵本にしたことでピンクス・エイリーは永遠に生きることになった。
シェルダンとピンクスの友情は永遠のものになった。

南北戦争終了時に解放された黒人奴隷。
人種差別が永遠になくなるのは?
戦争やテロに代表される暴力がなくなるのは?

人は精神が受け継がれて、永遠に生きることができるけど、その人が作り出す社会の仕組みが永遠の平和という言葉でつながれるのは難しいです。
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