通信・放送の法体系再編 審議会答申、相互参入促す狙い
通信と放送の法体系の抜本的な見直しを検討してきた情報通信審議会(総務相の諮問機関)の情報通信政策部会は19日、答申案をまとめた。テレビやラジオなど業態ごとの縦割りになっているのを、番組製作などの「コンテンツ」や情報を流通させる「伝送サービス」といった機能ごとに組み替えて、通信・放送の相互参入や効率化、新サービスの実現を促す。
インターネット経由の映像配信をはじめデジタル化やブロードバンド(高速大容量通信)の普及で、通信と放送の垣根は低くなっている。しかし、法体系は九つの法律に分かれたまま。通信・放送サービスの変化に対応しようと、総務省は06年から「情報通信法(仮称)」への一本化も視野に、見直しの検討を進めてきた。26日の審議会で正式決定される答申を受けて、同省は来年の通常国会に関連法案を提出する。
答申案によると、法体系を番組制作などに関する「コンテンツ」、視聴者や利用者に情報を届ける「伝送サービス」、通信や放送設備に関する「伝送設備」の3分野に再編成する。コンテンツは放送法、伝送サービスは電気通信事業法を核として集約、伝送設備は電波法の改正にとどめる見通しだ。
現在は放送用、通信用と利用が限定されている電波を別の用途に使うことを認めるよう提言。具体的には、テレビ局が放送を行わない深夜に特定の携帯端末向けに番組を配信したり、携帯事業会社が自社端末に動画を放送したりすることも可能になる。
放送設備と番組制作業務の免許は一括して地上波のテレビ局やラジオ局に与えられてきたが、これを分離して別々に認定することも提言した。関連企業の経営の選択肢を広げるのが目的。設備の共有や他社の設備を借りて番組を放送することも可能になり、デジタル化投資の負担増に苦しむ放送局には朗報だ。ただ、民放業界には「番組内容や編成への行政の直接関与が強まる」との懸念も広がっており、法案策定までの火種になりそうだ。
関連法の一本化もなお検討するが、総務省内には「法技術的に難しい」との見方が強い。来年にNTTの組織の見直し議論が予定されているため、NTT法は今回の組み替え対象には含めない。
議論のたたき台となった07年の同省の研究会報告では、政府が「社会的影響力」を根拠に放送・通信メディアを3分類。影響力が大きいほど規制を強くし、ネット上の情報にも新たに規制を導入する案が盛り込まれていた。しかし、審議会部会の議論の過程で「行政によるメディアの分類は公権力の介入」「ネット上の表現の自由を脅かす」など批判が強く、見送られた。
2. 『宝塚』と『ゲーム』大きい相乗効果 来月5日から『逆転裁判』続編 両方のファン取り込む
「宝塚」と「ゲーム」。一見異質のコラボレーションで今年2月に舞台化された「逆転裁判 蘇(よみがえ)る真実」が成功をおさめ、続編となる「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」が9月5日から東京・赤坂の「赤坂ACTシアター」で始まる。主人公の弁護士を演じるのは、初演と同じく、宙組の男役二番手の蘭寿とむ。それぞれの固定ファンを巻き込み、再び熱い法廷バトルが幕を開ける。 (宮崎美紀子)
異例尽くしだった。二~三月に宝塚市の「宝塚バウホール」と東京の日本青年館で上演された「逆転裁判」はゲームソフトが原作で、九十五年の宝塚歌劇団の歴史上初めて。二劇場ともチケットはすぐに完売し、東京公演の千秋楽で早くも続編の公演が決定した。宝塚では時を置いて別の組で再演されることはあるが、同じ組での続編は珍しい。しかも決定は舞台上でファンに直接発表された。
「サプライズ的にスクリーンで発表されたんですけど、お客さまのどよめきに私の方がびっくりしました」
主人公の熱血弁護士フェニックス・ライト(通称ニック)を演じた蘭寿とむは、こう振り返る。
真っすぐなニックは「どんどん入り込める好きな役」。「2」では、さらに内面、心情を深く掘り下げて演じたいという。
劇場にはゲームファンも多く、いつもと雰囲気が違っていた。
「キャラクターの性格をよくご存じだから、特徴的なコスチュームやセリフが出てくるだけで、すごく喜んでくださるのが新鮮でした。お客さまと一緒になってやっている感じがありました」
一目でゲームファンとわかる人が最後には笑顔で楽しんでくれて、「やった」という充実感もあったという。
「宝塚は初めてという人にも、お芝居の面白さ、フィナーレの華やかさ、男役のかっこよさを知ってもらいたいという気持ちは、もちろんあります」
新鮮さと楽しさに満ちた舞台ではあるが、セリフの応酬で事実を暴く法廷シーンは緊張感が要求される。リアルな芝居と、宝塚ならではのラブロマンス。「その二つがぴったり合わさっているのが、この作品の魅力です」
初演では、ゲームに出てくる片手を突き出した「異議あり!」のポーズを客席と一緒にやって盛り上がった。
「またやりたいですね。千秋楽に、みなさん次回まで鏡の前で練習してきてください、と言っちゃったので」
◇
舞台の原作「逆転裁判」は任天堂の携帯型ゲーム機向けのカプコンのゲームソフト。プレーヤーは主人公の「成歩堂(なるほどう)龍一」になりきって、裁判で相手の証言の矛盾を突いたり、タイミングよく証拠品を突きつけたりして、依頼人の無罪を勝ち取る。宝塚版の主人公「フェニックス・ライト」は、「成歩堂」の海外版ソフトでの名前だ。
同ゲームは女性に人気が高く、シリーズ四作と関連の「逆転検事」合わせて三百七十万本を売り上げている。
同社の広報・IR室によると、三年前、ゲーム開発に限らず新しいことをやろうというプロジェクトが発足し、大の宝塚ファンの女性スタッフが「宝塚でカプコンのゲームをやってもらえないか」と提案したという。
公演が成功し、「『逆転裁判』というゲーム、ひいてはカプコンという名前も知ってもらえた」(同社)。今回のチケットの一部は同社のサイト「イーカプコン」でも販売され、五分で完売したという。
一方で、宝塚はもともと、コミック、映画、オペラに韓国ドラマと、あらゆるものを取り込んできたが、ゲームとの初めてのコラボはファン層の拡大につながった。客席には、普段は見かけない若い男性のグループや一人の客が目につき、一方で、休憩時間に「ニンテンドーDS」に興じる宝塚ファンらしき女性客もいた。
宝塚とゲーム。一見水と油だが、ともに思い入れが強いファンを持っているだけに相乗効果は大きい。「逆転裁判2」は九月十五日まで上演予定。
通信と放送の法体系の抜本的な見直しを検討してきた情報通信審議会(総務相の諮問機関)の情報通信政策部会は19日、答申案をまとめた。テレビやラジオなど業態ごとの縦割りになっているのを、番組製作などの「コンテンツ」や情報を流通させる「伝送サービス」といった機能ごとに組み替えて、通信・放送の相互参入や効率化、新サービスの実現を促す。
インターネット経由の映像配信をはじめデジタル化やブロードバンド(高速大容量通信)の普及で、通信と放送の垣根は低くなっている。しかし、法体系は九つの法律に分かれたまま。通信・放送サービスの変化に対応しようと、総務省は06年から「情報通信法(仮称)」への一本化も視野に、見直しの検討を進めてきた。26日の審議会で正式決定される答申を受けて、同省は来年の通常国会に関連法案を提出する。
答申案によると、法体系を番組制作などに関する「コンテンツ」、視聴者や利用者に情報を届ける「伝送サービス」、通信や放送設備に関する「伝送設備」の3分野に再編成する。コンテンツは放送法、伝送サービスは電気通信事業法を核として集約、伝送設備は電波法の改正にとどめる見通しだ。
現在は放送用、通信用と利用が限定されている電波を別の用途に使うことを認めるよう提言。具体的には、テレビ局が放送を行わない深夜に特定の携帯端末向けに番組を配信したり、携帯事業会社が自社端末に動画を放送したりすることも可能になる。
放送設備と番組制作業務の免許は一括して地上波のテレビ局やラジオ局に与えられてきたが、これを分離して別々に認定することも提言した。関連企業の経営の選択肢を広げるのが目的。設備の共有や他社の設備を借りて番組を放送することも可能になり、デジタル化投資の負担増に苦しむ放送局には朗報だ。ただ、民放業界には「番組内容や編成への行政の直接関与が強まる」との懸念も広がっており、法案策定までの火種になりそうだ。
関連法の一本化もなお検討するが、総務省内には「法技術的に難しい」との見方が強い。来年にNTTの組織の見直し議論が予定されているため、NTT法は今回の組み替え対象には含めない。
議論のたたき台となった07年の同省の研究会報告では、政府が「社会的影響力」を根拠に放送・通信メディアを3分類。影響力が大きいほど規制を強くし、ネット上の情報にも新たに規制を導入する案が盛り込まれていた。しかし、審議会部会の議論の過程で「行政によるメディアの分類は公権力の介入」「ネット上の表現の自由を脅かす」など批判が強く、見送られた。
2. 『宝塚』と『ゲーム』大きい相乗効果 来月5日から『逆転裁判』続編 両方のファン取り込む
「宝塚」と「ゲーム」。一見異質のコラボレーションで今年2月に舞台化された「逆転裁判 蘇(よみがえ)る真実」が成功をおさめ、続編となる「逆転裁判2 蘇る真実、再び…」が9月5日から東京・赤坂の「赤坂ACTシアター」で始まる。主人公の弁護士を演じるのは、初演と同じく、宙組の男役二番手の蘭寿とむ。それぞれの固定ファンを巻き込み、再び熱い法廷バトルが幕を開ける。 (宮崎美紀子)
異例尽くしだった。二~三月に宝塚市の「宝塚バウホール」と東京の日本青年館で上演された「逆転裁判」はゲームソフトが原作で、九十五年の宝塚歌劇団の歴史上初めて。二劇場ともチケットはすぐに完売し、東京公演の千秋楽で早くも続編の公演が決定した。宝塚では時を置いて別の組で再演されることはあるが、同じ組での続編は珍しい。しかも決定は舞台上でファンに直接発表された。
「サプライズ的にスクリーンで発表されたんですけど、お客さまのどよめきに私の方がびっくりしました」
主人公の熱血弁護士フェニックス・ライト(通称ニック)を演じた蘭寿とむは、こう振り返る。
真っすぐなニックは「どんどん入り込める好きな役」。「2」では、さらに内面、心情を深く掘り下げて演じたいという。
劇場にはゲームファンも多く、いつもと雰囲気が違っていた。
「キャラクターの性格をよくご存じだから、特徴的なコスチュームやセリフが出てくるだけで、すごく喜んでくださるのが新鮮でした。お客さまと一緒になってやっている感じがありました」
一目でゲームファンとわかる人が最後には笑顔で楽しんでくれて、「やった」という充実感もあったという。
「宝塚は初めてという人にも、お芝居の面白さ、フィナーレの華やかさ、男役のかっこよさを知ってもらいたいという気持ちは、もちろんあります」
新鮮さと楽しさに満ちた舞台ではあるが、セリフの応酬で事実を暴く法廷シーンは緊張感が要求される。リアルな芝居と、宝塚ならではのラブロマンス。「その二つがぴったり合わさっているのが、この作品の魅力です」
初演では、ゲームに出てくる片手を突き出した「異議あり!」のポーズを客席と一緒にやって盛り上がった。
「またやりたいですね。千秋楽に、みなさん次回まで鏡の前で練習してきてください、と言っちゃったので」
◇
舞台の原作「逆転裁判」は任天堂の携帯型ゲーム機向けのカプコンのゲームソフト。プレーヤーは主人公の「成歩堂(なるほどう)龍一」になりきって、裁判で相手の証言の矛盾を突いたり、タイミングよく証拠品を突きつけたりして、依頼人の無罪を勝ち取る。宝塚版の主人公「フェニックス・ライト」は、「成歩堂」の海外版ソフトでの名前だ。
同ゲームは女性に人気が高く、シリーズ四作と関連の「逆転検事」合わせて三百七十万本を売り上げている。
同社の広報・IR室によると、三年前、ゲーム開発に限らず新しいことをやろうというプロジェクトが発足し、大の宝塚ファンの女性スタッフが「宝塚でカプコンのゲームをやってもらえないか」と提案したという。
公演が成功し、「『逆転裁判』というゲーム、ひいてはカプコンという名前も知ってもらえた」(同社)。今回のチケットの一部は同社のサイト「イーカプコン」でも販売され、五分で完売したという。
一方で、宝塚はもともと、コミック、映画、オペラに韓国ドラマと、あらゆるものを取り込んできたが、ゲームとの初めてのコラボはファン層の拡大につながった。客席には、普段は見かけない若い男性のグループや一人の客が目につき、一方で、休憩時間に「ニンテンドーDS」に興じる宝塚ファンらしき女性客もいた。
宝塚とゲーム。一見水と油だが、ともに思い入れが強いファンを持っているだけに相乗効果は大きい。「逆転裁判2」は九月十五日まで上演予定。