花組芝居「泉鏡花の夜叉ケ池」武蔵屋組観劇レポです。
今回の夜叉ケ池はW配役で、武蔵屋組と那河岸屋組の2つがあります。
私が行ったのは武蔵屋組。
もちろん晃役の水下きよしさん目当てです♪
前の晃役は水下さんで、それを見たのはもう13年前だって、そんなに経ったのかと驚きました。
あらすじ・・・
三国ヶ嶽の麓(ふもと)の里、
龍神が住むという夜叉ケ池。
日に三度鐘をつく掟を破れば、
村はたちまち全て水の底に沈むという。
諸国を旅する学者僧、山沢(やまざわ)学円(がくえん)。
彼がこの里で出会った鐘守りの男は、
行方不明の友人、萩原(はぎわら)晃(あきら)だった。
再会を喜び、共に夜叉ケ池へと出かけたその時
晃の妻百合(ゆり)は、かんばつに苦しむ村人に、
雨乞いのいけにえにと迫られる。
追いつめられて命を落とした百合を抱き、
晃は鐘の掟を破る。
村が水に飲み込まれるたまゆら、
一人残った学円は
池の主、白雪姫と妖怪変化の曲馬団、
その道行きを垣間見る。
明治以降の設定の話ですが、ここまでいかなくても因習的なものはどろどろと残っている地域も多かったのかもしれません。
魑魅魍魎の自然さなどとても生き生きしていると思いますし。
鏡花作品は一貫して自然の驚異とそれに比べてちっぽけな人間を描いています。
お金や自分の利益しか考えない人は大嫌いだった作者の性格を反映させていると思います。
青山円形劇場は円形の舞台を中央に、ぐるっと取り囲むように観客席があります。
収容人数は150から370人とコンパクトです。
どこからも舞台が見えるこの劇場は観客も緊張感がありますね。
座席はその芝居によって変わりますので、行ってみるまでよくわからなかったのですが、
なんとサイドですが一番前でした!
舞台まで10cm、舞台の高さも15cmくらいなので本当に目の前です。
こんなギリギリで水下・晃を見られるなんてーーー
武蔵屋組はベテラン勢中心ですので安心して見られ、力強い感じです。
歌舞伎の舞台にも夜叉ケ池が上ったことがありますが、夜叉ケ池は花組の方がいいなぁー。
深い水の色、濃い色のうろこと苔が想像できてしまうからです。
音楽のようにコロコロと言葉が転がるような原作を生かしているような気がします。
那河岸屋組は見ていないですが、若手を中心に白雪姫の加納さんで締めているのも納得。
白雪の衣装は新しく原作の表記に近いものになっているのは那河岸屋組でこれを着たかったからか?
あくまでも晃と百合の恋物語を引き立てるような演出になっている気がしますから、
白雪や家来の化け物達ははじけててもいいのでしょうね。
晃役の水下さんは49歳。
13年前は・・・35、180cmの身長での晃、そりゃぁかっこよかったですなー
今はちょっと細い感じがしますが、それでも迫力があります。
帯のうろこが白雪と同じなのが不思議な噂を物語っています。
堀越涼くんはまだまだなのですが、それでも可能性のある女形を演じていて期待が持てるところ。
百合役は難しいでしょうからね。
竜小太郎さんにもだいぶよくなったねといわれていました笑
白雪の山下さんはごつい迫力があります
今回の日替わりゲストさんは大衆演劇の竜小太郎さんだったのですが、あんな役までーと驚き!
日替わりと言っても加納さんの台本はセリフたっぷりで大変だったと愚痴っていらっしゃいました笑
伝吉はうって変わって、着流しの色気たっぷりな衣装で登場とそのギャップがすごーい。
水下さんのことを、カルピスを牛乳で割って飲む男だと暴露してましたよ 笑
それはいいのですが、彼目当てのマダム数人のはしゃぎっぷりの騒がしいこと。
彼が出ないところでも笑ったり、面白いねー、と私語が多い多い。
楽しければ笑ったり声援はいいと思いますが、不必要に大声で役者さんの声よりそちらの方がよく聞こえるくらい。
後ろ振り向こうと思ったくらいです
花組芝居という別の劇団の芝居だということがわかっていないのでしょう。
そのような観客にも手を振らなければいけない竜小太郎さんも大変だなと思いました。
さて夜叉ケ池の魑魅魍魎達と白雪姫ご一行。
これは13年前も同じなのですが、一緒にお客さんを舞台へ連れ出し、
軽く踊ったり、鐘を突き落とそうとするしぐさをやります。
最後にはご一行と一緒に記念撮影。
あとでその写真がもらえます。
役者さんが座席に降りてそれをやりたい人を探すのですが、東京は控えめなんでしょうか?
拒否する人がいて大変そうでした
私は今回も選ばれず・・・残念ー
その代わり、観客の4割くらい?に配られた舞台で歌う歌の歌詞カードはもらいましたよ。
一緒に歌ってきました♪
物語はクライマックスへ。
雨乞いは村一番の美女を裸にし牛の背に乗せ池まで走らせ、その牛を殺すという忌まわしい風習です。
池の主の白雪は昔同じようにさせられ、その辱めに牛の背にたいまつをかかげ、村一帯を走らせ焼き払い、自身は池に身を投げました。
追い詰められた百合は自身で命を落とします。
晃ももう鐘は突くまいと後を追います。
みるみるうちに村は水の底に沈んでしまいます。
恋のために命は捨てない、という白雪姫。
百合は来たいから一緒に来る、留まりたければ留まるんだ。
神にも仏にも恋は売らん、という晃。
村人の世俗的な様子とは間逆な純粋さが比較になっていますね。
池の化け物達と晃や百合は、舞台でも遠く、遠くだけを見ている感じがしました。
美しいもの、美しい心、それを見ている気がします。
豆腐の腐という字でさえ、書かなかった鏡花です。
目の前のことはちっぽけなことに過ぎないのですね。
自然に比べれば。
今はその美しいものを壊し、町並みも原色の看板やネオンがあふれる時代です。
そのようなものを見たら鏡花はどう思うでしょうね?
ただ一人残った学円は合掌し、その空にはただ月のみという静寂。
原作の最後の文はこのブログのタイトルにもなっています。
さて、次はいつやるのでしょう?
また10年以上先だったら・・・
水下の萩原晃はまた見られるのかなぁ?と思ったらもう1度行きたくなってきました。うーむ・・・