待ってました!
コクーン歌舞伎に行ってまいりました。
今回は<南番>と<北番>の2バージョンです。
南番は12年前に初演されたバージョンに手を加えたもので、
北番はあまり上演されない三角屋敷の場面があります。
歌舞伎は全編通しで上演される場合よりも、よい場面だけを演じることが多く、
その前後のストーリーはご承知、ということが多いです。
見る前にあらすじなどを読んでおけば大丈夫。
歌舞伎は他のお芝居に比べてずっとシンプルでわかりやすいですよ。
コクーンは初演から全部行ってますがとても面白いです。
約700席と大きくないスペースで、花道以外でもお客さんをかきわけて役者さんが通ったりします。
で、今回は去年に引き続き最前列!
しかも去年は友人と6番7番だったのですが、今年は5番6番とほとんど同じ!
(友人は同じ6番席)
抽選制でチケットを購入していますが、びっくりですね。
1階の前半分は平場席と言って座布団に直接座ります。
江戸時代の芝居小屋っぽくてよいです。
南番の場合、後半は本水(本当の水)を使うので、前の方はすごく濡れてしまいます。
靴は脱いでビニール袋に入れ、ポンチョを渡され着なくてはいけません。
更に水よけにながーいビニールを渡され、
同じ列の人と一緒に水がはねたらそれを持ち上げてよけなくてはいけません。
まぁ多少なら濡れても、それも楽しみなんですが。
以前はかばんは手元に置いておけばよかったのですが、
係員の方に無料ロッカーに入れておくように言われました。
<南番の配役>
お岩・小仏小平・佐藤与茂七:中村勘三郎
民谷伊右衛門 :中村橋之助
お袖 :中村扇雀
直助権兵衛 :坂東弥十郎
お梅 :中村七之助
按摩宅悦 :片岡亀蔵
伊藤喜兵衛・お熊・舞台番 :笹野高史
四谷左門 :中村源左衛門
内容は皆さんご存知かと思いますが・・・
民谷伊右衛門(たみやいえもん・橋之助)は赤穂の浪人で、
お家没落の際に御用金を盗み取った心のよくない男。
それを知ったお岩(勘三郎)の父、四谷左門はお岩を実家に連れて帰る。
お岩の妹、お袖の夫・佐藤与茂七(勘三郎)は仇討ち同士に加わって行方知れず。
そのため生活に困ったお袖(扇雀)は娼婦となることを決める。
お袖に言い寄っていた直助は喜んで買いに出かけるが、
同じように来ていた与茂七(勘三郎)に追い払われてしまう。
偶然出会った2人は喜びあうが、与茂七は再び忠義のために働かなくてはならない。
同志の庄三郎と身なりを交換し、回文状を預かると与茂七は去っていった。
与茂七を恨みに思う直助は暗闇で間違って庄三郎を殺してしまう。
疑いがかからぬよう、顔面をはがす直助。
そこへ左門を恨みに思う、伊右衛門が同じく切り殺す。
駆けつけたお岩とお袖に直助は仮の夫婦になれば敵討ちの手助けをすると約束。
伊右衛門はお岩との復縁を承諾させ、同じく敵を探す約束をする。
お岩は男の子を出産したが、産後の経過が悪くふせっている。
伊右衛門は傘張りの内職くらいの仕事しかなく、
役たたずのごくつぶしとお岩を毎日ののしる日々。
そこへ隣家の伊藤家よりさまざまな贈り物が届けられる。
子供への着物、お岩の体がよくなる薬など・・・
伊右衛門にはひとめぼれした伊藤家の娘お梅との婚礼を伊藤家から持ちかけられる。
それを承諾した伊右衛門。
身の回りの世話をする宅悦に、お岩と不義を働くよう脅す。
しかし、お岩に小刀で切りつけ抵抗され、仕方なく白状してしまう。
人相の変わっているお岩は身なりを整えて伊藤家に乗り込もうとするが
それをとめようとする宅悦ともみ合ううち、小刀が刺さり絶命してしまい・・・
まず最前列ではお岩が怖い!^^;
1mくらい先に役者さんがいるわけです。
怖いけど見たい、見たいけど怖いというわけで・・・
勘三郎さんは3役と大奮闘で、この舞台のために7kgくらい減量されたそうです。
与茂七もすっきりとしたいい男になっています。
橋之助さんもいい男で錦絵のようです。
伊右衛門のような役は色悪(いろあく)と言って、白塗りのニヒルで惨忍な悪人という分類になります。
一般的には普通の白塗り=善人役なのですが、色悪の場合は別です。
美形悪役というところでしょうか。
悪い人なんだけどかっこいい!と見てしまいます(笑)
宅悦の亀蔵さんは情に訴える演技で、いつものように渋いいい声です。
さて、四谷怪談ですが、初演と比べて少し軽いような・・・
しかし、間近で見たせいか発見もいろいろあり。
まず髪梳きの部分ですが、薬のせいで発熱し、梳くと抜けるそうですが
お岩の恨みで力でひっぱり抜いたという感情もあるのではないか?と思いました。
近くで見たからでしょうが、髪の毛がくっついていた皮膚(?)も見えてしまったからかもしれません。
抜けた髪のかたまりがこちらに転がってきたときは怖かったですよ~。
あと疑問に思ったのは、お岩が薬を飲むところなど。
包み紙に残る粉まで湯飲みにふせて落として最後まで飲んでいました。
そのとき客席から笑いがおこったのです。
動きだけ見ればせこくて面白いのかもしれませんが、
それで顔面が崩れることになるのは観客の誰もがわかっているはず。
必死で体を治そうと思うお岩さまの気持ちを考えると笑うというのはおかしいのでは?
これはコクーン歌舞伎だけでなく、歌舞伎座など時々笑いがおきるんですよね。
質に入れるからと伊右衛門が子供がもらった着物や蚊帳まではいでいくところがあります。
(江戸時代に着物や薬は貴重品でした)
蚊帳がなくなると子供が蚊に追われてむずがるからと
、お岩が必死で蚊帳にしがみつき、引きずられていくのですが、そこでも笑う人がいます。
役の心情は見てないんでしょうか?
とても疑問に思いました。
まぁそれを除けば大変面白いお芝居で・・
最後はお堀(?)で大立ち回りなので、水しぶきがバンバンきます。
初演よりは大人しい気がしましたが。
それでもわざと観客めがけて水をかけたりして、一応ポンチョ着てますけど濡れます。
前面の水よけのビニールも水色で(初演は透明だった)、
後方から見ると客も水面を表しているんでしょうね。
不透明なので、よけると舞台が見えない、見ると濡れるというジレンマがおきます(笑)
与茂七役の勘三郎さんの白装束はかっこよかったのに~。
(着物がビニール製だったような気がしましたが?違うかな?)
あれも討ち入りのイメージがあるんでしょうね。
表舞台では忠義だのとほめそやされたであろう忠臣蔵ですが、
それに加わらない大多数の浪士とその家族はつらい思いをしたのでしょう。
お岩の恐ろしさが有名な作品ですが、本当に怖いのは伊右衛門など人間なのだなと感じました。
伊右衛門も伊藤家に事実を打ち明けられるまでは体裁を保っていますが、
一番怖いのは伊右衛門に隠して、薬を先に渡してしまう伊藤家一家ではないでしょうか。
しかし荷物をロッカーにいれておくというのは正解で、
友人のところは水たまりができて、置いていたパンはしっかり水びたしでした^^;