丸森町の稲の葉と茎と穂を測った稲体の調査です
以前発表された土壌調査と照らし合わせると粘土質と砂質などの土壌の状態により稲の吸収率が大きく違います
校庭の除染をする時東北大の石井教授は表面5ミリ位の表土の粘土に90%のセシウムが吸着されていると言ってましたが
ヒマワリなどで除染をしている方の話では一度吸着されたセシウムがまた溶け出すには3年で5%ぐらいだそうですから毎年作付してもそれほどの除染効果は無いそうです
今日の日本農業新聞に宇根豊さんがこんなことを書いています。
「目の前に放射能に汚染された田んぼがある。かろうじて人間はそこで仕事ができるが、収穫しても米の汚染は基準を超えそうだ。
こういう場合には、国民は作付け禁止を支持するだろう。しかし、そこで暮らす百姓は作付けしたいと思う。それはなぜだろうか」
宇根さんはこう問いを投げかけた後に、こんな南相馬市の農家のことを語り始めます。
市内全域で稲作ができなくなってしまった農家は、ある時ツバメが例年のように飛来したのを見ます。
ああ、今年も来たのか・・・と彼は思ったのでしょうね。そして続けて、今年は来ない方が良かったのに・・・とも思ったのかもしれません。
だって、来ても去年のような田んぼの土はないぞ、と。
ツバメは田んぼがないと巣が作れません。田んぼの床土は適度な水分を含んでいて柔らかいので、それをツバメはセッセと巣作りに使うのです。
ツバメに言葉をしゃべれるならばこう言ったのかもしれません。「ねぇお百姓さん、今年は田んぼを作らないの?どうしちゃたの?」、と。
田を耕しながら、ツバメがさらうように低空で飛び、土や時に虫などをさらって飛び去っていく風景を見ると、私たち農家はなんともいえない友情のようなものを感じます。
そうか、今年も来たか。お前もいい巣を作って、いい子を育てていきな、みたいな。
ついでに車庫の天井は車にボタボタ泥が落ちるから、納屋のほうにしてくれと頼む百姓もいるかもしれません。
さて、この南相馬の農家は、今年も飛来したツバメを見て、あ、そうかオレが田んぼを耕さなかったらこいつら困るだろうなと思ったそうです。
で、彼は今年は使うことがないだろうと思っていた稲作道具を手入れして、田んぼを一枚だけ耕したそうです。ツバメのためにだけ。
耕していい粘土の床土がいつもどおり練れて、水を張りました。すると、真っ先にカエルが喜びいさんで飛び込みます。
カエルはうれしそうに虫を食べて、ニョロニョロとした卵を田んぼの隅に生みました。それを目当てにサギも飛んで来ました。
上空にはトンビが旋回し、すきあらば田んぼに水を飲みに来たり虫を食べに来る小動物をひっ捕まえようと待っています。
耕作禁止の村の数少ない「田んぼ」というオアシスを求めて、村中の大きな生き物、小さな生き物、地上を這うように飛び鳥、高く飛ぶ鳥たちが集まってきたのでした。
田んぼという土と水のコスモスは、決して人だけのためにあるのではないのです。
ツバメが農家に田んぼを作ってくれと頼み、農家もそれに応えて田んぼを作ります。ツバメは害虫を食べて恩返しをしてくれます。
カエルもまた害虫を食べながら、油断をするとサギが来ます。サギもまたカエルが増えすぎて田んぼがカエル天国とならないようにパクッとやります。
こうした穏やかな均衡は、私たち人間が適度の手助けをすることで生まれています。
放射能があろうとあるまいと、米が売れようと売れまいと、私たち農業者は自然の一部だし、そうありたいと願っています。
それが今年も飛んで来てくれたツバメへの約束です。