音楽療法のライブ日記

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新書『ストレス脳』のご紹介

2023-02-03 18:59:22 | 研究関連
脳の世界は複雑で未だ解明されていないことも多く、人間の宇宙と言われています。
人間は常に何がしかのストレスと付き合いながら生活をしていることになりますが、
紹介する「ストレス脳」の著者であるアンデシュ・ハンセンさんはスウェーデンの
若い精神科医であり、脳と心の関係性とストレスと付き合う方法などを書いています
『ストレス脳』アンデシュ・ハンセン著.新潮社.2022.

ストレスが心だけではなく、身体にも影響があることはよく知られている所です。
興味深いことは沢山ありますが、特に狩猟集団社会にはストレスが少ないと言われ、
その原因を探っています。現代社会の様々な複雑性が脳にも心にもストレスを溜め、
うつを始め様々な病気の要因になっているのでしょうか?
読んでいくと多角的な視点から納得できる内容として丁寧に書かれています。

日本音楽療法学会主催の講演及び学会誌において「脳と音楽の関係性」などを学び、
大学院時の大脳生理学研究の講義では実際に脳を見て強く印象に残っています。
さらに、衝撃的だった学びはハーバード大学の脳科学者だったジル・ボルト・テイラーさんが
脳卒中で倒れ、左脳の機能が崩壊し、手術や8年間に及ぶリハビリで回復されたことです。
その経過を書かれた『奇跡の脳』(新潮社.2009)は今でも度々読み直しています。
因みに有名な「TED」のYouTubeでは記録的な再生回数になっています。

脳の世界では常に新しい知見が出ることから、情報の確保は必須になります。
以下、アンデシュ・ハンセンの『ストレス脳』の一部を紹介します。

 私たちの脳は非常に柔軟で、常に変わっていくことが出来る。
 およそ860億個の神経細胞から成り、脳細胞同士のつながり(シナプス)が少なくとも
 100兆ある。それらが複雑なネットワークを形成して身体の各器官を制御し、知覚から
 入ってくる果てしない量の情報を処理し、解釈し、優先順位をつけている。・・・
 あなたの記憶にはそれだけの容量があるのだ。

 かつてないほど健康に長生きできるようになった。少しでも退屈したら、1クリックで
 地球上のあらゆる娯楽と知識が手に入る時代でもある。今までになく快適に暮らして
 いるはずなのに、多くの人が心を病んでいるのが現状だ。・・・

 人類が他の動物とは一千を画す特徴を一つだけ選ぶなら、「物語を語る」能力を
 挙げたいと思う。脳は自分が体験している出来事に常に説明を探し、辻褄の合う
 「物語」を創り出している。・・・

訳者(久山葉子さん)のあとがきです。
 私自身もスウェーデンに暮らすようになって精神的な問題を抱えている人の多さに
 驚いた。基本的に残業はなく男女ともに夕方5時には仕事を終え、夏休みは5週間、
 受験もないので子供たちものびやかに育っているように見えるのに、なぜだろうか。
 確かに、抵抗なく精神科を受診したり、堂々と精神の不調について周囲にもオープンに
 したりできる土壌はある。・・・

運動、孤独、幸福感、うつ等々について世界の最新研究とともに、丁寧に分かり易く
書かれています。‘万能薬などは存在しない’、とも・・・心が軽くなります
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