音楽療法のライブ日記

音楽療法士がお届けする、日々の活動記録と情報発信のブログです。

『音楽と生命』の「楽譜と遺伝子の共通点」

2024-06-12 14:50:06 | 研究関連
前回紹介した『音楽と生命』の中の「円環する音楽、循環する生命」の章の
一部として書かれている「楽譜と遺伝子の共通点」をご紹介します
*『音楽と生命』坂本龍一.福岡伸一 2023年3月.集英社

福岡
楽譜と遺伝子には何らかの対応関係があると思うんです。
つまり、楽譜は、音そのものではないし、どこまでいっても音楽ではないんですよね。

坂本
そうなんです。誰かに演奏されて音にならないと、音楽とは言えないですからね。・・・

福岡
楽譜も遺伝子も、単に記述されたものであるにすぎないということですね。・・・
でも、私たちは楽譜が音楽だと思い、遺伝子を生命そのもののように捉えてしまって、
記述されたものは実際とは別ものであということを忘れがちです。・・・

坂本
ただ、作曲家は自分が一種の神の視点を持っているかのように誤解しやすくて、
その小宇宙を作ることが最終目的のように錯覚することがありますね。・・・

福岡
けれども、まったく同じ「楽譜」を持っている一卵性双生児も、まるで違う人格に
なるわけですし、・・・生命現象は「楽譜」と「演奏者」と「聴き手」が合わさって
成り立っているんですよね。・・・

坂本
前にも話したように、音楽というものも一回限りのものです。
一方、楽譜は一回性を否定するものなんですよね。・・・
楽譜というシステムはそうだとしても、そこに書かれているものが演奏されて
音楽になった場合には一回限りの演奏で、空気の振動になって消えてしまいます。
生命現象も、この一回限りの今起こっているということで、音楽と同じなわけですね。

福岡
はい、まさしくその通りだと思います。

坂本
・・・「聴く人がいなければ、音楽は本当に成立しないのではないか」ということに
気づいたんです。・・・「聴く」ということが音楽の重要な要素なんだと、強く意識する
ようになったからなんですよね。・・・
楽譜がない音楽というものの存在を強く感じるようになったからなんですね。
地球という惑星には空気の振動、つまり音という減少が常に起こっているわけですが、
誰かが聴いてその振動を共有する空間や時間があることを音楽と言っているのだと
思います。だから、たとえば川のせせらぎが人間がいるかどうかに関係なく常に
流れているように、誰かが演奏しなくても、そこで起こっている空気の振動を聴けば、
それは音楽なんですよね。・・・空気の振動を聴くという音楽の実態においては、楽譜が
なくても音楽が成立するということになるわけですから。

福岡
まさに、楽譜というロゴスから出て、音楽のピュシスに気づかれたわけですね。・・・

・・・ ・・・ ・・・
「美しき天然」という曲が思い浮かびました
空にさえずる鳥の声、峯より落つる滝のおと、・・・
自然の音(音楽)に癒される’ひと時‘も大切にしたいものです