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文学者の父

2010-02-03 22:03:19 | 日記
私の父は、郷土が生んだ文学者「加能作次郎の会」の役員をやっている。
また、毎年、小・中学生を対象にして行われる作文コンクールの入選作の
選考委員会の委員長をやっている。

私自身、小・中学校の時、作文コンクールに参加したこともあり、
賞をいただいたこともある。
(その時、まだ父は選考委員ではなかったので、一応、私の実力ということで…。)

数年前、撰集も講談社から出版され、また詩人の荒川洋治さんからも推薦文を
いただいたり、あるいは地元の雑誌に連載記事を書くなど結構「大した文学者」
であるということは、息子としても認めざるを得ない
(そういうセンスを受け継ぐことがなかった自分としては悔しい話ではあるが…)。

そうした折、町の役場に文学館を設立したという知らせをうけた。
その、時新聞社から、写真付きの取材をうけたらしく、誇らしげにその記事を
送ってきた。

私を含め、その記事を見た人達は一様に驚いていた。

ある人は、
「すごいね、あなたにそっくりじゃない!」と。

しかるに自分が驚いたことには別の理由があった。

なんと、「歯がない」のである。


もちろん、高齢者ではあるので入れ歯だということは知っていたが、
なんと、少なくとも日本中の人が見る新聞の取材において、
入れ歯を入れずに写真をとられているではないか!!

もちろん、気がついていたのは私1人ではある。

父は、入れ歯をわずらわしがり、そこら中に置きっぱなしにしておく
という変なクセがある。

以前などは、私の新居に遊びにきた時に、朝、畳の上に入れ歯が
置いてあるのを発見して、ギョッとした。

「そんなもん、ひとんちの畳に置くなよ!」

さすがに頭にきたので、せめて人前に出るときくらい、入れ歯をいれろや!

と頼み込んだことがある。

「わかった、わかった。」

と気軽な返事をするが、私のいうことなど「どこ吹く風である」。

もうろくしているわけでもなんでもなく、面倒くさいだけである。

今年の5月に横浜に遊びに来た折、やっぱり入れ歯をしていない。

「入れ歯はどうした?」

と聞くと、

「田舎においてきた」

という。

文学者は得てして、審美的な眼をもつものだが、時にそれが
あまりにも独自すぎて、私のような一般市民にはついていけない。
まったく偏屈極まりない。

私はそういった偏屈さは受け継いだが、残念ながら、文学的な
センスは全く受け継がなかった。その辺は母に似てしまった。

まあ、ラッキーだった、ということにしておこう。


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